路傍のカナリア

2014/08/12
@ 「無い」ことの魅力
銀座の空気にはレシピがある

銀座を歩くのは好きである。新橋でJRを降りてそこから東京駅まで銀座の街を歩く。目当ては文具の伊東屋であるが、いまは改装中のため仮店舗営業なので、「鳩居堂」で季節の小物を手に入れている。銀座の大通りには、敷居の高そうな超有名なブランド屋さんが「どうだ」という顔をして並んでいるけれど、それが銀座の魅力かといわれればちょっと違う感じがする。あれらはたいがいの世界主要都市に展開しているわけで、銀座を銀座たらしめているエキスとは異質なものにちがいない。イメージ戦略とはずいぶんと大がかりで金のかかるものだねえなんてつい斜に構えてしまいますが。
では「和光」や「ミキモト」の老舗のいぶし銀に惹き付けられるかといえばそれも違う。もちろんそれらの「顔」が銀座の「華」であることは承知しているが店内に入らなくてもだいたいのことがわかってしまう店である。ま、格式とは驚きのない継続なのだろう。
そういう個々の店舗へのこだわりはなくて、言ってみれば銀座の「ちょっと上品できれいな空気」が好きなのである。それは商売人の銀座で店を張っているプライドと気負いから由来するものかもしれないけれど、銀座特有のあり方も深くかかわっていると思える。
大通りを北にそれても、南にそれても、名の通った画廊や、フォトギャラリー、アパレル、宝石店、和食店、スイーツ店、などなどが脇道からひょいと出てくる奥行の深さは銀座が日本で一番ではないかなと思う。ごく当たり前の生活雑貨の店や立ち食い蕎麦屋もあるけれども「おやこんなところにこんな店が」ぶらぶら歩きでそういう小さな発見が銀座の界隈全体に詰まっている。ガイドにも載らない「通」だけが知る一級品の店もすくなからずあるのだろう。メイン通りの有名店だけが一流の店ではないのだ。それゆえにか銀座の空気はあの四丁目の中心も七丁目の隅っこもほとんど変わらない。
モノの一流と食や美の文化の一流が集まっている街は世界中いくらでもあるだろうけれど、人の世の常としてその裏側には「猥雑なもの」を売り物にしている一角があるものだが、東京銀座にはそれが「無い」。その「無い」ことが銀座の街の空気を隅々まで上品にしてきれいにしている。あれもあります、これもあります、「ある」「ある」をどんなに足して行っても魅力な街にはならない。意識して「無い」ことをつくってはじめていい街が生まれる。
訪日観光客が1000万人を超えこれから東京オリンピック開催までに2000万人にしようと政府は意気込んでいる。街並みも商売の在り様も変わっていくだろうけれども、この銀座らしい空気だけは今まで通りであってほしいと願っている。

(貧骨)
Cosmoloop.22k@nifty.com
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