ヤクート内にある5つの採掘・選鉱コンビナートでダイヤモンド採掘を行っている「(株)アルロサ」が、全ロシアのダイヤモンド採掘量に占める割合は99%。
また「アルロサ」社は、発行株式の90%以上を所有する「(株)アルロサ・ニュルバ」および発行株式の70%以上を所有する「(株)セヴェルアルマズ」をグループ内において、ロシア連邦大統領令に基づき、1993年1月1日に設立された政府系のダイヤモンド生産者である。
アルロサの株式は、ロシア連邦政府が37%、サハ共和国(ヤクート)政府が八つの地区行政府と共同で40%、ダイヤモンド・コンプレックスを構成する企業およぴ組織の従業員が23%を所有している。
「アルロサ」の均衡のとれた戦略指導にあたる最高機関は、総数15名からなる監査役会で構成されており、メンバーは主に政府高官、ロシア連邦およぴサハ共和国(ヤクート)の公的機関の専門家達だ。このような監査役会の構成によって経営は効果的に行われ、連邦と共和国の利害を考慮しながら、調和のとれた監査を行っており、どのような事業を行うにしても連邦および地域行政機関の支援を得ている。


連邦政府37%、ヤクート40%の政府持ち株会社

アルロサは、極北の遠隔地でダイヤモンド採掘を行っているため、より好適な地理的・気候的条件で操業している他のダイヤモンド生産者と比べ、その生産コストは高くなっている。
しかし、同社のエンジニア集団の高い技術力と経験に支えられ、世界市場における競争力と輸出シェアを維持するだけでなく、自社の財務的な安定性を高めるため、これまで積極的に一連の国際投資プロジェクトを実施してきた。
2003年には、16億5千万ドル相当のダイヤモンド原石を採掘、1億2千340万ドル相当のダイヤモンド研磨石を生産、18億2千万ドル相当のダイヤモンド製品を販売してきた。
2004年には、21億8千400万ドルのダイヤモンド製品を生産販売することになっている。ダイヤモンドの採掘販売と並行し、アルロサ社は地質探査、科学研究および企画設計なども行い、金融市場にも精通し、積極的に独自の宝飾品事業を展開している。

30以上の事業で多角化を目指す

アルロサは、本業とする事業の枠内でも、また生産を多角化するためにも、一連の子会社を設立すると同時に既存の事業会社の株式を取得している。現在アルロサ社は、30以上の事業会社に参加しており、従属する子会社のコングロマリットを「アルロサグループ」と呼んでいる。
現在、アルロサを多国籍.各部門企業に変えるプロジェクトが実現されつつあり、この中で「アルロサ」は、サハ共和国(ヤクート)の域外、すなわちクラスノヤルスク地方、アルハンゲリスク、イルクーツク、ボロネジの各州、カレリア共和国、アフリカ大陸などのダイヤモンド探鉱業務に乗り出している。
アンゴラでは、採鉱会社「カトカ」が同名のキンバーライト管状鉱脈を開発していて、これは世界でも最大の鉱柱の一つであり、1997年、この地で「アルロサ」の技術者たちによって、選鉱工場が建設され操業を開始した。
このプロジェクトに対するアルロサ社の投資は、5千5百万ドルであり、これは「カトカ」社の株式の32・8%に相当する。
毎月この採鉱会社は、事前の予想をはるかに上回る1千万ドルのダイヤモンドを産出している。
2002年には、この採鉱会社「カトカ」は、1億7千980万ドル相当のダイヤモンドを販売しており、これはアンゴラにおけるダイヤモンド総産出量の70%、販売額の45%に相当する。
第2工場が操業を開始すれば、「カトカ」のダイヤモンドの売上高は年間3億5千万ドルに達するという。「カトカ」プロジェクトの実行と並行してアンゴラでは、2002年に有限会社「採鉱会社ルオ<カマチヤ・カマジク>」が設立され、この会社は管状鉱脈「カトカ」に匹敵する埋蔵量をもち、二つのキンバーライト管状鉱脈「カマチヤ」およぴ「カマジク」の開発を使命としている。



ロシア・ダイヤモンド・コンプレックスの中核

ロシア・ダイヤモンド・コンプレックスの中核であり、ロシア連邦および各行政府、事業会社の利害調整を図りながら、この分野全体の発展をゆるぎないものにしている。
各部門およぴ各子会社を合わせて5万人以上を雇用しており、現在、サハ共和国予算の70%が「アルロサ」グループ各企業からの徴収金(租税および賃貸料)でまかなわれているというように、同社の安定的発展がロシア経済の発展に大きく寄与していることも事実だ。

ロシアでも流通革新が

ロシアのダイモンドの実体は、生産工程を進むに従い急激に製品価格が高くなり、最終的な製品価格は採掘時価格の7〜8倍になる。
ただし最も利益率が高いのは、工程の最初と終わりで、即ち天然ダイヤモンドの採掘およぴ宝飾品の小売の部分に集約されている。
これを考慮して、ここ5年から10年の間、大手のダイヤモンド企業は、天然ダイヤ加工のすべての技術段階にわたって、経済的リスクをできるだけ均等に分散させることを目的とし、ダイヤモンド・コンプレックスのあらゆる部門を自社の手に収めようとしている。
このためダイヤモンド加工業者と宝石販売業者は、ダイヤの原石採掘部門へ進出しようと積極的に活動している。一方、ダイヤの原石採掘会社は、研磨企業、宝飾品メーカー、商社との連携を目指しており、流通革新の真っ只中である。
アルロサも、その方向に向けて第一歩を踏み出しており、1999年に独自のダイヤカット加工施設、「アルロサ・ダイヤモンド研磨石」を設立、子会社の「(株)PIKオリョール・アルマズ」や「(株)オリョール・アルロサ」も好成績をあげながら発展を続けているという。
また、アルロサは、ダイヤモンド宝飾製品を製造する二つの大手企業、サンクトペテルブルグの「アルロサ・ネバー」およびハントィ・マンシイスク「アルロサ・ユグラ」の設立にも参加している。
アルロサ独自の販売網を創る為に同社子会社の販売部門と複数の宝石店の開設が大きく左右していた。もちろんアルロサ社は、世界のダイヤ生産者連盟や加工連盟などにも加盟しており、これからは、東南アジア市場への進出を考えている。


流通の基盤と日本への進出
アルロサ社ユーリ・ドーデンコフ副社長 Yury A.DUDENKOV

昨年5月、日本のロシア大使館でサハ共和国こおけるダイヤモンド生産・採掘についてのプレゼンテーションが行われ、アルロサ社も参加して、「日本とロシアの相互協力の強化が活発化される」として期待され、話題となった。
アルロサ社副社長ユーリ・ドーデンコフ氏は、「日本でプレゼンテーションを行い、日本側が我々に興味を持っていただいたことに大変嬉しく思う」と感想を述べている。
日本市場進出について日本の印象を聞いてみると、「日本でのダイヤモンドは、デザインも優れ、たいへん売れていると聞きます。しかしシーズンが悪いのかデパートなどでは客が少ないのに驚きました」と日本の状況を述べていた。また、「経済は低迷と聞いていますが、02年以降は上昇しつつあり、今後の日本には大いに期待している」とも述べている。
ロシア市場では、ジュエリー製品の販売も行っているが、まだ調査段階となっており、日本進出についても「ロシア国内にしっかりとした流通の基盤などを作ってからだ」と慎重な構えをみせている。
ロシアでの採掘状況は、シベリア中心となっている。現在も新しい鉱山が3つ発見されており、10年〜15年の採掘が可能と予想される。
それと同時に「ダイヤモンドがあるかどうかは分からないが、他に800のパイプもある」、また「工場付近の小さな鉱山でも、コスト削減につながる」との考えで、確実な運営をしているようだ。
今後、採掘から製品販売までの一本化の実現は分析中とのことだが、「自由市場への進出には製品の品質の向上は欠かせない」とし、「あくまでも採掘会社として今後の展開を図りたい」としている。
今年の1月には、日本でのIJTにも参加することが決まっており、カットダイヤから大きなダイヤ、また現在製作している商品などを展示する予定となっている。