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遠藤周作先生が著された「古今百馬鹿」に登場するのは、奇人であったり変人であったりするのだが、けして馬鹿ではない。世の中、馬鹿とアホの絡み合いと言いますが、馬鹿にも、「いい馬鹿と悪い馬鹿」がある。ヘミングウェイは、パリ時代に著したいくつもの小説で、あきらかにモデルと想定できる友人を登場させ、彼らの反感を買いパリに居られなくなってキーウエストに移住したとも言われている。僕も東京に居られなくなるのを覚悟すれば、友人の中に多くの奇人変人を見い出し、紹介をはばからない。まあ、馬鹿は書きません。悪い馬鹿は、ね。歓迎すべき「いい馬鹿」は登場します。悪い馬鹿は、自分が馬鹿だという意識がないから人間がつまらない。いい馬鹿は、鋭く世の中を皮肉くるユーモアがあり僕らを愉快にさせる。だから、いい馬鹿は、実は馬鹿じゃない。例えば、こんなのがいる。友人に空手の有段者がいる。Tと言う名だ。Tは試合前になってもいっこうに練習をする様子もない。心配した後輩が「先輩、練習しなくていいんですか?」と尋ねると「馬鹿、熊が練習するか!!」と怒鳴る。なるほど、後輩は首をかしげながら納得。試合当日、Tは一回戦でボロ負けを喫し、かの後輩に言った。「あっちの熊は練習しやがったな!!」。テニス仲間に調子のいいのがいる。痛快な男だ。名をFと言う。ある時、試合に行くために仲間4人とタクシーに乗る。目的地に到着。「料金はいくら?」Fが言い「みんな割りかんね。 高野 耕一 |