BASEL SIHH  WATCH  JEWELRY  LINK
ごあいさつ | ご購読のご案内 | contact us | HOME

 

国が違えば生活習慣が違う。文化が違う。特に女性にとっては人生の一大イベントである結婚式の形も、国や民族によって千差万別。だが、その形も最近では当事者である若者たちの自由な発想のもとに現代風となり、それぞれの特有の古き良き伝統が時の彼方へ消えつつあるようだ。愛さえ確かなものであれば、別に形式にこだわることはない、という意見にも賛成はするが、伝統のもつ美しさも大切にしたいものだ。

高野耕一

 

誘拐された花嫁をとりもどせ。
教会で式を終え、ホテルやレストランの披露宴会場で豪華な食事。さて、午後になると、花嫁の姿が消える。友人や知人が誘拐するのだが、これは花婿に気づかれないようにというのだから、打ち合わせをして例えばトイレに行くふりをしたりして消えるのだ。で、どこへ行ったかというと他のレストランだったりする。そこで花婿が発見してくれるのを待つのだ。

酒好きですでに酔眼朦朧の花婿は、ええい面倒とばかりに探しには行かない。それは駄目。とにかく花嫁を発見して、身代金がわりに誘拐犯の面々に酒を奢らなければならないのだ。

 

花嫁が、あらま、アクビしてる。
パーティ会場はお城のガーデンあたりがいかにもフランスらしい。教会での厳粛な式を終えるとガーデンヘ。さあ、それからが大変。いつ終わるかわからないカクテルパーティ。延々と続く。夜になってからやっとディナーとなる。映画を観てわかるように、フランスの男も女も老若男女を問わず鬼のように食べる。よく食べ、よく飲み、よく喋る。それも延々と続く。踊りも加わって朝まで続く。翌日は朝からバーベキューパーティ。これも延々。とにかく花嫁は体力勝負である。

 

胃薬飲みのみ嫁にいく。
インドの披露宴は、食べ放題踊り放題。誰が参加してもかまわない。近所の人でも、通りすがりの人でも、みなさんどうぞ、である。ご馳走もふんだんに用意されている。それも豪華な食事である。インド人は酒を飲まないから酒代はかからないけれど、これだけたくさんの食事を用意する花婿は、そりゃたまったもんじゃない。次々とくる祝い客に花嫁もお付き合いが大変である。
花嫁は暖房機器じゃないんだ。
いまはそうではないが、農村では冬以外は農繁期で忙しいため、結婚は禁止。農閑期に結婚する。寒い時期を楽しく過ごすためには、一石二鳥であるが、披露宴が一週間も続く。飲めや歌えの竜宮城のような日が続くのである。この長い長い披露宴でみんなくたくたになってしまう。それは大袈裟としても、冬が結婚ラッシュになることは事実。そこで冬以外にも結婚してもよろしい、となったらしい。

 

ほらほら、花嫁、火をつけろ。
神前結婚ならぬ人前結婚式。数百人は入ろうかという大宴会場。中国人はよく食べ、よく喋る。誰も聞いていない。全員が喋っている。そんな印象。ウエディングドレスからチャイナドレスに着替えた花嫁がテーブルを回って、お客さまのタバコに火をつけて歩く。新郎は酒を注ぐ。客たちは好きな時間に勝手に帰って行く。こちらもフランスに負けず延々と続く。

 

 

 

イラスト:佐川能智

 

     

| HOME |