佐藤英昭の「特許の哲学」

2020/08/03
『特許の哲学』 其の50

改正著作権法で、 違法ダウンロード拡大

 インターネット上の「海賊版サイト」 の対策を強化するための著作権法の 改正案が成立した。2021年1月1日 に施行される。  改正著作権法では、違法なダウン ロードの対象範囲を音楽や映像だけで なく、漫画や書籍、論文など、全ての著作 物に拡大した。著作権者に許可なく違法 に公開されたものと知りながら漫画や写 真、論文などの著作物をダウンロードす ると、私的な目的であっても違法となる。  一方、利用者の萎縮を避けるため、 規制対象の除外を設けている。例え ば、スマートフォンのスクリーンショット やライブ配信などの映像などに映り込 んだ著作物は対象外としたほか、二次 創作物やパロディー作品も対象から除 外した。  また、文化庁は「軽微な場合」も規制 対象から除外するとして、具体的な線 引きを指針でまとめている。それによる と、論文や記事は半分程度を引用した 場合に違法とし、漫画では数十ページ の1コマは軽微と判断されるが、1話 の半分程度や4コマ漫画の1コマのダ ウンロードは規制対象としている。  
(特許業務法人共生国際特許事務所所長)
2020/06/30
特許の哲学 其の49

関連意匠制度の拡充

近年、世界中の企業が技術だけでなくデザインによる競争力の強化を図る中、自社製品に共通の一貫したデザインコンセプトを用いることで独自の世界観を築き上げ、製品の付加価値を高める動きが加速している。
こうしたデザイン戦略は、一貫したデザインコンセプトに基づき市場動向等を踏まえて製品等のデザインを長期的に進化させていく手法であるが、従来の関連意匠制度では、これに対応できない。
 具体的には、@関連意匠の出願可能期間が本意匠の意匠公報発行前まで(本意匠出願から8か月程度(平成 30年時点))に限定されていることから、長期的な市場動向等に応じて関連意匠を保護することはできず、A類似する意匠を連鎖的に保護することができないことから、進化していく意匠を保護することができない。
 そこで、令和2年4月1日に意匠法が改正され、本意匠の意匠登録出願の日から10年を経過する日前に出願されれば、意匠登録を受けることができるものとした。また、関連意匠に類似する意匠を連鎖的に保護できるものとした。
( 特許業務法人共生国際特許事務所所長)

2020/06/02
特許の哲学 其の48

国際特許出願件数、中国が米国抜き世界1位

 WIPO(世界知的所有権機関)は、特許協力条約(PCT)に基づく2019年の国際特許出願件数を発表した。
 それによると、中国が5万8,990件となり、米国(5万7,840件)を抜き、初めて世界1位となった。国際特許出願件数で中国が米国を逆転したことで、知財分野における米中の覇権争いは一段と激しくなりそうだ。
 世界全体の出願件数は、前年比5%増の26万5,800件と過去最多を更新した。中国の出願は11%増の5万8,990件。1999年には276件しかなかったが、この20年間で200倍以上も増加。米国は特許協力条約の運用が始まった1978年以来40年間首位を維持してきたが、今回は5万7,840件と2位に転落した。
2020/06/02
特許の哲学 其の47

令和2年4月1日施行の改正意匠法について

 本年4月1日に改正意匠法が施行され,意匠登録制度が大きく変わりました。
 今回の改正は,保護対象の拡充(画像・建築物・内装),関連意匠制度の拡充,意匠権の存続期間の延長(登録日から20年→出願日から25年)等多数ありますが,本コラムでは,「保護対象の拡充(画像・建築物・内装)」をご紹介します。
 従来日本では,意匠法の「意匠」とは「物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合…」と定義され(意匠法第2条第1項),物品でない建築物等の不動産の形状や,ウェブサイトに表示される画像などは保護対象外でした。しかし,今回の法改正により,これら建築物等の不動産の外観・内装,ウェブサイト上の画像(その物品に記録されない画像)も意匠法の保護対象となり,特に建築物は外観のみならず椅子・壁・柱等から構成される内装デザインも「内装全体として統一的な美感を起こさせるとき」には保護対象となるのです。
 意匠制度の活用の幅が広がる一方,内装やウェブサイトの変更時は, 他者の意匠権を侵害しないよう,十分お気を付けください。
2020/04/02
特許の哲学 其の46

音楽教室での著作権使用料徴収権限を認める

 ピアノ教室等のレッスンで使われる楽曲の著作権をめぐり、音楽教室を運営する約250の事業者等がJASRAC(日本音楽著作権協会)を相手取り、音楽教室で演奏される曲の著作権
使用料を徴収する権利がないことの確認を求めた訴訟で、東京地方裁判所は、JASRACに徴収権限があるという判断を示し、教室側の請求を棄却した。
音楽教室での著作権使用料をめぐり、初めて司法判断が示された。
 裁判では、音楽教室での楽曲の使用が公衆に聞かせる目的かどうかが争点となり、音楽教室側が「レッスンは生徒と先生しかおらず、公衆に聞かせる演奏ではない」と主張したのに対し、JASRAC側は「生徒は不特定多数の人にあたり公の演奏だ」と主張していた。
 判決では「楽曲利用者は生徒や教師ではなく事業者である音楽教室だ。生徒は申し込んで規約を結べば、誰でもレッスンを受けられるので不特定多数の公衆に当たる」として、JASRACは音楽教室に使用料を請求できるという判断を示し、教室側の訴えを退けた。
(特許業務法人:共生国際特許事務所長)
2020/04/02
特許の哲学 其の45

米中が知的財産権の保護強化で合意

 米中両政府は、貿易協議をめぐる「第一段階」の合意文書に署名した。
第一段階の合意には、知的財産権の保護や技術移転の強要禁止などの項目が盛り込まれた。
 具体的には、模造品や偽造品の取り締まりを強化する。オンライン環境での侵害に対して、効果的で迅速な行動を義務付ける。
 電子商取引プラットフォームへの効果的な行動、偽造医薬品や関連製品への効果的な執行措置、国内や輸出される海賊品や偽造品への執行措置を強化する。
 米国のブランド品の保護を図るため、悪意ある商標登録を無効にしたり、却下したりするような対策を求める。
 技術移転に関しては、中国が市場アクセスや行政承認または利益の受け取りを条件に、外国企業に技術移転の圧力をかけることを禁じている。
 ただ、米国が問題視していたハイテク産業や国有企業を支援する補助金の見直しなど、中国の構造改革をめぐる問題は先送りされた。
 だが、米国が市場国重視の考え方を推し進めれば、それが世界標準になり、日本企業のグローバルな税務・理財戦略にも影響を与える可能性がある。
(特許業務法人:共生国際特許事務所長)
2020/01/31
特許の哲学 其の44

アマゾンジャパン「プロジェクトゼロ」〜偽造品対策を強化〜
 
 アマゾンジャパンは偽造品の撲滅を目指す「プロジェクトゼロ」を開始したと発表した。
 協力ブランドと製品やロゴなどの情報を共有し,AIの画像認識などで偽造品の疑いがある商品を除外する精度を高める。ブランド各社がサイト上で偽ブランド品を発見した場合,直接削除できる機能も提供する。
 2020年前半には商品1つずつにアマゾンやブランドが独自のシリアルコードを発行し,疑わしい商品の発送前の段階などで真偽をチェックできる仕組みも導入する。
 プロジェクトへの登録は現在招待制となっており,米国と欧州では約6,000以上のブランドが参加しているという。日本国内では,パナソニックやアイリスオーヤマ,任天堂,ソニー・インタラクティブエンタテインメント,アイロボット,川崎重工,タカラトミー,ダダリオなどの企業が試験運用を開始している。
2019/12/27
特許の哲学 其の43

改正意匠法等,2020年4月1日施行

〜デザインの保護対象の拡充等〜
 
 特許法,意匠法等の一部改正に関する法律が閣議決定され,2020年(令和2年)4月1日より施行されることとなった。今回の改正では,特に意匠法が大幅な改正となり,より広い範囲の意匠権の取得が可能となる。
 主な改正内容は次の通り。
@保護対象の拡充(画像,建築物の内・外装のデザインも保護)
A関連意匠制度の拡充(・関連意匠の出願可能期間を本意匠の登録の公表日迄(8か月程度)から本意匠の出願日から10年以内迄に延長・関連意匠にのみ類似する意匠の登録を認める)
B意匠権の存続期間の変更(登録日から20年を出願日から25年に変更)
これまで意匠登録できなかったクラウド上の画像の意匠や住宅・建築物の内外装デザインが保護可能となり,2020年(令和2年)4月1日以降に意匠出願できるようになる。
この他,特許法の損害賠償額算定方法の見直し(実用新案・意匠・商標も準用)も2020年(令和2年)4月1日より施行される。

2019/12/18
特許の哲学 其の42

店舗の外観・内装 立体商標で保護へ
 
 特許庁は,企業のブランディング活動を支援する必要性を踏まえ,商品・役務の出所を表示するものとして識別力を有する店舗の外観・内装については,商標として保護する方向で検討を進めている。
 店舗の外観・内装は,特に大規模チェーン店等では統一したデザインで使用され,企業や店舗のブランディングのための保護ニーズが高まっている。実際に店舗の外観・内装を模倣する事例も多く,商品等の出所を示す外観は,例えば米国では,いわゆる「トレードドレス」(米国商標法上の定義はなく,商品形状,包装容器の形状の他,飲食店等の外観や内装も含まれる)として保護されることがある。国によって保護対象や法制度も異なっている。
特許庁では,現行の商標制度の見直しにあたり,店舗の外観・内装以外の立体的形状についても併せて検討することが望ましいとして,立体商標制度の見直しと立体商標等に関する審査運用の見直しについて検討を進める方針。
2019/11/15
特許の哲学 其の41

知財侵害物品の差止状況
輸入差止申立制度の活用
 
 財務省は,令和元年上半期の全国の税関における偽ブランド品等の知的財産侵害物品の差止状況を発表した。輸入差止件数は12,844件(前年同期比:7.3%減),輸入差止点数は577,534点(前年同期比:14.7%減)。
 仕出国(地域)別の輸入差止件数では,中国が全体の83.7%(10,752件)を占めた。品目別では,医薬品(377件,前年同期比:66.0%増),煙草及び喫煙用具,美容品等,健康や安全を脅かす危険性のある知的財産侵害物品の輸入差止が増加。侵害された権利は,商標権が最多(輸入差止件数:96.8%,輸入差止点数:88.6%)。
 輸入差止申立制度とは,特許権,実用新案権,意匠権,商標権,著作権等を侵害する貨物が輸入されようとする場合,権利者が税関長に対し,自己の権利を侵害する貨物の輸入を差止めるよう申し立てる制度。裁判に比べてコストがかからず,結果が出るのが早いのもメリットといえる。
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