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■連載コラムNo.53 ■2019年4月3日 水曜日 11時34分23秒

 2月末から3月にかけて、世界最大規模の展示会の一つである香港ジュエリーショーが開催されました。私も現地で複数ミーティングがあったので数日間訪れました。ラボグロウンダイヤモンドのエリアが以前のように天然ダイヤモンドのコーナーと接しておらず、離れた場所に設けられていましたが、これはビジターが混合することを避けるための措置のようです。ラボグロウンダイヤモンドのエリアはさらに以前より規模を拡大しており、出展者は回を増すごとに増加、既存出展企業のブースは段々と豪華になっているなど、世界的に勢いを増しているようです。
天然ダイヤモンドのエリアと離れて設置されたことに関して出展者に感想を聞いてみましたが、「無駄な対応をしなくて良いから嬉しい」とのこと、つまり以前は天然ダイヤモンドを見る流れで来たビジターが間違えて迷い込んでしまい、天然ダイヤモンドと間違えている人の対応をするケースがあったようです。また、買う気もないのに情報収集のためだけに訪れる人の対応も時間の浪費になるとのコメントもありましたが、それくらいラボグロウンダイヤモンドのブースはどこも対応に追われ非常に賑わっていたのが印象的でした。ただ、品質や対応に関しては玉石混合という感じで、ラボグロウンダイヤモンドの企業も優劣がハッキリとしてきたという印象もありました。

 一方で、実は今回私が注目し、最も変化を感じたのは天然ダイヤモンドのエリアでした。皆様ご存知の通り、天然ダイヤモンドは3EX、H&Cが当たり前になっており、品質的には差別化が非常に難しくなってきています。多くの天然ダイヤモンドの業者は品揃え(在庫数)や価格で競争せざるを得ない状況で、どこのブースに行っても売り文句はあまり変わらないのが当たり前でした。品質と在庫と価格だけを武器に商売を行うのはダイヤモンド産業が長年続けてきた古典的な商売方法ですが、実は先進的な一部の天然ダイヤモンド企業はそのループから既に脱出しつつあります。
今回訪れた多くの企業で、スマホアプリ対応するオンラインストックシステムなどを活用しており、デジタル鑑定書の導入、また生産過程を細かく追跡確認できるブロックチェーンテクノロジーを利用した保証制度などもいくつかの企業では既に開始しています。
また、特別なアタッチメントによってスマホでスキャンできるガードルのQRコードによって、ダイヤモンドからダイレクトにデジタルデータにアクセスできるシステムを構築している企業もあります。イスラエルのSarine社では、最先端の原石プランニングシステムを利用し、原石からのカット工程を3Dデータでデジタルレポートに組み込む技術を開発しました。また3Dプリンタで個々の原石を再現したディスプレイなどもデモンストレーションしており、天然ダイヤモンドにとってデジタルツールとトレーサビリティの融合は今後大きなトレンドになると感じました。

 今までのコラムで、ラボグロウンダイヤモンドの出現によって天然ダイヤモンドは新たな価値を見出すステージに突入すると何度か書きましたが、将来のことではなく海外の現場では既にそれが起こっているのです。ラボグロウンダイヤモンドの出現は確かに天然ダイヤモンドのビジネスに影響を与えますが、それは驚異かどうかという問題ではなく、いかに次の高みに自身のビジネスの価値を引き上げられるのかというビジネスの本質の問題です。ラボグロウンダイヤモンドはハイテクの産物ですが、ハイテクはラボグロウンダイヤモンドの為だけにあるわけではありません。ハイテクの恩恵は天然ダイヤモンドにも同様にもたらされているのです。

 少し話は逸れますが、先日知人が面白い事を言っていました。グラスフェッドミルクやグラスフェッドビーフという言葉を聞いたことがあるでしょうか。最近注目されている、牧草で肥育された牛そのものや、その牛から取れる牛乳のことを指します。栄養的にメリットがあるらしく、通常のものより高価ですが、非常に人気で一部の商品は品薄な状態が続いているようです。グラスフェッドに対して一般的に穀物で肥育されている牛はグレインフェッドと言うらしいですが、その知人が言うには「もともと牛は自然に草を食んで育つものなのに、飼育が楽だとか、肉にサシが入ると言う理由で人間が人工的な環境で育てたのがグレインフェッド。これが普通になったら、逆に元の自然の環境で育った牛の方が貴重だとか価値があるとか言われている。」と。ちなみに霜降りと言われているものは必要以上の脂肪をつけさせて筋肉繊維の中に人為的に脂質を入れ込んだ牛のことを言うそうですが、最近では健康的なグラスフェッドの赤身の人気が上がっているとのこと。グレインフェッドがあるおかげで、グラスフェッドの価値が際立っているということです。ただどちらも価値があり、シーンや調理法によって棲み分けがされていくわけです。ダイヤモ
ンドも同様、ラボグロウンによって天然ダイヤモンドの価値が際立つと言うことが実際に起こっているのではないでしょうか。

 今、長いダイヤモンド産業の歴史の中で、技術によって二つの大きな破壊的イノベーションが起こっています。ひとつは、ラボグロウンダイヤモンドという新しい素材の登場、そして二つめは、高度なデジタルソリューションの波です。
既にダイヤモンドビジネスの競争原理は価格と品質ではなくなっています。世界のダイヤモンド産業を観察すれば1年や半年単位でも大きな変革が起こっていることがわかります。既存のビジネス手法を変えずに固執することはリスクになるという時代に来ているのです。それでもし、何かを変えてみたいと思われたその際は、ぜひお手伝いできれば幸いです。
■連載コラム No52

RAPAPORTは守りに固執するのは、やめるべきと指摘

クリーンミートをご存知でしょうか。培養肉とも言われ、文字通り研究室で動物細胞から培養される肉のことで、畜産業の抱える多くの問題の解決策になると期待されています。増え続ける世界の食肉需要の増加と、それに伴う畜産業による環境破壊を解決するものとして、動物飼育を伴わない動物性食品の切り替えは今や世界的な関心事になっています。

動物細胞から培養された肉は本物の肉と遜色のない見た目、食感、味、栄養になるようです。培養された肉の味がどうであれ、研究室で成長した肉を食べるのは抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、見方を変えれば農場で抗生物質やワクチンを投与され、陽の当たらない不衛生な飼育小屋で飼育された食肉よりも、生産過程が明確で安全なクリーンミートを選択する人が増える可能性は十分にあります。

このトピックは世界的なダイヤモンドメディアRAPAPORTの2月号にも掲載されました。何故食肉産業のニュースを取り上げたかというと、ラボグロウンダイヤモンドのケースと類似する点があるからです。クリーンミートは今後その品質と供給安定性が上がるに従い、流通量の増加が予想されますし、通常の肉との区別が難しくなります。近い将来、レストランでステーキを注文する際に、焼き加減よりも、消費者はその肉が何なのか(天然かラボグロウンか)を知ることの方が重要になるかもしれません。そのためにレストランはメニューの内容を完全に把握し、そして開示することが必要になります。

アメリカの食肉業界では既に、そのクリーンミートの名称をどうすべきかの議論が生じています。クリーンミート、ラボグロウンミートなどの候補が上がっていますが、既得権益団体は「肉」という名称を用いないよう主張し、それを肉以外の何かであると認知させることによって畜産業界が毀損されないよう努めています。

ところで先日、非常に興味深い事件が起きました。ある一般消費者が私に電話をかけてきて、ネットショップで売られている合成ダイヤモンドが本当に合成ダイヤモンドか教えて欲しいと言うのです。どうにも奇妙な質問ですが、聞けばそのネットショップでは1ct以上の大きさの「合成ダイヤモンド」を2万円前後で販売しているとのこと。もしそれが「本物の合成ダイヤモンド」であれば是非購入したいと考えているようです。調べてみると大手ネットショッピングモールで多数の商品を販売しているようで、サイズ的には2ct-3ctに相当するものがシルバーのジュエリーにセットされて2万円前後で販売されています。商品スペック欄にも「合成ダイヤモンド」と明記されていますし、「イミテーションではなく硬度や屈折率が天然ダイヤモンドに極めて近いもの」との説明書きもあります。これだけ見れば一般消費者がラボグロウンダイヤモンドと同一の商品と思い込むのも無理ないことだと思いますが、これはキュービックジルコニア(CZ)のジュエリーである可能性が極めて高いと思います。実際にCZを合成ダイヤモンドという名称で販売している例はこれに限ったことではありません。大手ショッピングサイトで「合成ダイヤモンド」と検索すると何が表示されるのか、試してみるとよくわかると思います。またこのようなことから、消費者も合成ダイヤモンドのことをCZ(ダイヤモンドではない、似た何か)と認識している人が多いのではないでしょうか。事実、誤認する可能性があるのではないかという消費者からの指摘はTwitterなどで散見されます。

消費者から見たときに、名称の問題は非常に重要です。消費者は自身が食べる肉が何か、自分が購入しようとしている宝石が何かを明確に理解する権利があります。そしてそれは名称の問題に直結します。名称は消費者保護の観点から、誤認の可能性が低いものではなくてはなりません。売り手にとってではなく、消費者にとって明確な名称を選択する必要があります。それが結果的にはダイヤモンド業界の信頼性を向上させ、業界全体の活性化につながるのではないでしょうか。RAPAPORTは「天然ダイヤモンド業界はラボグロウンダイヤモンドの議論の中で、守りに固執することをやめるべきだ」と指摘しました。現代の消費者は、自分が買おうとしているものが何か、それが天然でもそうでなくても、透明性があるのか、エシカルかどうかを気にしています。ラボグロウンダイヤモンドに対して防衛意識を働かせるより、天然ダイヤモンドとして消費者にどれだけ価値と信頼を提供できるかの方が、今後の天然ダイヤモンドビジネスには意味のある議論ではないでしょうか。ラボグロウンダイヤモンドが天然ダイヤモンドにとって脅威であるかという問題はそこには関係ないはずです。

アパレルブランドのグッチは昨年、動物の毛皮を使用しないファーフリーを宣言しましたし、シャネルもエキゾチックレザーの使用を廃止すると発表しました。フェアトレードなどエシカルや社会的責任に対する関心が世界的に益々高まっていく中で、肉にせよダイヤモンドにせよ、また他のカテゴリーにしても「ラボグロウン」は新たな魅力を提供し新たな市場を築くでしょう。しかし一方で、天然ダイヤモンドも消費者に対して新たな価値を提供することにより共存することが可能です。天然VSラボグロウンという対立構造を超えて、新たなダイヤモンド市場の拡大に貢献できますと幸いです。
■連載コラム No51

天然ダイヤモンドの価値を、より際立たせる

 先月、東京ビッグサイトで国際宝飾展が開催されました。今回は合成ダイヤモンド関連の企業が数社出展していたこともあり、『合成ダイヤモンド元年』として多くの人々の注目を集めていました。私もラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)専門企業として出展させていただき、新聞、テレビを合わせ11のメディアから取材を受けさせて頂きました。また、IJTセミナーとしては合成ダイヤモンド関連のセミナーがいくつも開催され、それぞれ会場から溢れるほどの受講者がいたと聞いております。合成ダイヤモンドが今回の国際宝飾展で最も大きな話題をさらったことは誰もが認めるところだと思います。

 テレビ東京系列「ワールドビジネスサテライト」も取材に来ておりましたが、同番組は昨年の11月にも合成ダイヤモンドを取り上げた10分ほどのコーナーを放送しています。今回の取材の際に聞いたのですが、去年のその10分のコーナーは、2018年の年間の同番組の最高視聴率だったとのことで、いかに合成ダイヤモンドに対する一般消費者の関心が高いかを物語っています。また、各テレビ局からはスタジオ収録後に連絡をいただきましたが、収録現場も非常に興奮して盛り上がり、局内でも非常に評判が良かったとお聞きしました。取材に来た制作会社の方達は、ここ数十年で最も面白い宝飾業界のトピックとして非常に注目していると教えてくれましたが、一方でメディアや消費者の注目度とポジティブな意見に反してジュエリー業界では否定的な意見がある多くことが不思議だともいう声もありました。

 最近、業界内の論調を見ていると、一元論的に「合成ダイヤモンドは悪か善か」のような雰囲気があるように思います。派閥争いではないのですから、「天然ダイヤモンド派」と「合成ダイヤモンド派」に分ける必要はないですし、天然ダイヤモンド派の人間が合成ダイヤモンドを扱ってはいけない訳でもありません。仮に天然ダイヤモンドだけ、合成ダイヤモンドだけを専門に取り扱うショップ、ブランドがあったとしても、それはあくまでブランディングの問題です。

 合成ダイヤモンドの問題以前から、例えば10金や14金のゴールドをジュエリー素材として認めるのかどうか、新素材に関してはどうなのか、などの議論が業界内では度々起こっていました。しかし、どの素材を取り扱うか、または取り扱わないのかは各ブランドやショップのブランド戦略の問題で、素材を正しく表記して説明している以上、何を選択するかはお金を支払う側である消費者が決める事になります。当然ですが、ろくに説明もせずに18金のジュエリーを売っているショップより、両方の特徴、メリットやデメリットを説明しながら丁寧に1 4 金のジェエリーを売っているショップの方が誠実でお客様にとって良いショップである事は間違いありません。何を扱うかは重要な問題ですが、どう説明するのかはそれ以上に重要です。最終的に判断するのはお客様だからです。

 合成ダイヤモンドに関しても同様に、それ自体の是非よりも、ブランド戦略としてどう取り入れるのか(または取り入れないのか)をしっかり考える事の方が重要です。今回の一連の報道に関する消費者の反応をSNS等でリサーチすると、一般消費者は我々が想像するより多角的に多くの情報を持っており、合成ダイヤモンドが物質的科学的に本物のダイヤモンドである事をすでに理解しています。その上で、シチュエーションなどによって使い分ける事をすでに想定しているようです。消費者のマインドは、既に合成ダイヤモンドがジュエリーとして店頭にある市場を想定しているという事です。

 今回の国際宝飾展では一方で、HRDAntwerpのセミナーでは天然ダイヤモンドの特徴である青白色の蛍光性についての肯定的なリサーチ結果が詳細に説明されました。また、イスラエルのSarine社のブースでは、ダイヤモンドがユニークな天然の原石からどのように美しい輝く宝石になるのか個々に表示する最新のツールが紹介されていました。ティファニーは先日、自社の天然ダイヤモンドの透明性と価値を高めるために、ダイヤモンド原産地の情報公開プログラムを開始しました。これらは全て、天然ダイヤモンド特有の個性と価値にスポットを当てるものです。合成ダイヤモンドの登場は、天然ダイヤモンドの価値をより際立たせるものになります。今後、消費者にとって二つのダイヤモンドの選択肢が生まれる中で、それを販売するブランドやショップは、どの価値に焦点を当てるのかを意識する必要に迫られます。

 今年、ダイヤモンドビジネスは新たなステージに突入します。合成ダイヤモンドによって新たなジュエリーの顧客層を取り込める可能性もありますし、また、天然ダイヤモンドの価値を再定義して販売をすることも可能になります。今まで通りの方法が通用しなくなる中で、このコラムが天然ダイヤモンド、合成ダイヤモンドそれぞれの新たな方向性を見出す一助になれば幸いです。
■連載コラム No50

ジュエリー業界全体で大きなチャンスを掴む

新年あけましておめでとうございます。
 2019年が皆様にとって更なる飛躍の年になりますよう、心から記念しております。

 ちょうど一年前にこのコラムで「2018年はAI競争が加速する」と書かせていただきました。実際、昨年の特に後半はAIというキーワードがテレビや雑誌などで頻繁に取り上げられ、『AI搭載』と書かれた謳い文句の商品が数え切れないくらい登場しました。昨年一年間という短期間に、いかにテクノロジーが私たちの生活により深く浸透したかを実感したのではないでしょうか。

 「スマホ時代」というタイトルで本コラムを書き始めて丸4年経ちましたが、最近このタイトルも少し時代遅れではないかと感じています。スマホを含むデジタルデバイスは我々の生活に溶け込み、スマホがなかった時代のことすら想像できないというレベルまで来ています。そもそも「スマホ時代」しか知らない世代も社会に出てきているのではないでしょうか。実際若い世代は、「スマホ便利で好き!」などとそもそも思いません。インターネットとスマホは既に生活インフラの一部で、彼らに言わせると「水道便利で好き!」と言っているくらいのレベルです。スマホを使う、SNSを利用する、これら全て息を吸って食事をするのと同じくらいのレベルまで浸透しています。今までテクノロジーを積極的に取り入れることを中心に書かせていただいていましたが、2019年以降は、テクノロジーがあることを前提に、いかにビジネスとの融合を図るかが大きなポイントになります。それは情報発信についても同様です。今の若者は作られたマーケティングに非常に敏感です。単純なテレビ雑誌広告はもちろん、ステマに対しても非常に敏感で鋭い嗅覚を持っています。

 ダイヤモンドは長い間、ステータス性とブランド力だけで販売されてきた商品です。しかし、ダイヤモンドに限らずステータス性やブランド力だけで商品が売れることは今後あり得ません。特にこれからの世代には納得感と説得力が必ず必要になってくるのです。ダイヤモンドは、ジュエリーを含めどう『本当の』差別化ができるかが問われる時代になります。特に今後は、ダイヤモンドも天然だけではなくラボグロウンダイヤモンド(合成ダイヤモンド)が市場に入ってきます。消費者にとって商品の選択肢が広がる中で、販売側も選択を迫られることになります。そして、それが天然であれラボグロウンであれ、自社にとってのダイヤモンドビジネスを再定義することが必ず必要になってくるということです。

 メディアはいま、革命的なダイヤモンドとしてラボグロウンダイヤモンドに大きく注目しています。実際に多くのメディアの方から話を伺っていますが、多くの消費者が関心を持っているトピックだと口を揃えて言われました。実際に今年も幾つか地上波のテレビ番組での放送が既に決まっています。私自身も昨年はラボグロウンダイヤモンドの研磨工場、HPHTのファクトリー、CVDのファクトリーなどを訪れましたが、製造業者はどこも非常に意欲的でビジネスの拡大を確信しています。生産能力、そして品質は非常に高く、長年ダイヤモンドビジネスに従事している私の目から見ても、そのクオリティは感動を覚えるほどのものです。そして各社既に十分な生産能力を持っていますが、どこも今後生産を拡大する予定だと教えてくれました。つまり現在、多くのメディア、消費者、製造業者がこの新しいカテゴリーにフォーカスしているということです。

 一般消費者がどう思っているのか、実際に合成ダイヤモンドやグロウンダイヤモンドに対しての反応を、キーワードやハッシュタグでSNS等をリサーチすると、ほとんどの意見は非常に肯定的です。特に若い世代を中心にこの傾向は顕著ですが、これを「消費者が天然ダイヤモンドからラボグロウンダイヤモンドにシフトした」と捉えるのは間違いです。ネットなどで情報収集してSNSにポストすることが当たり前の新しい世代が、この新しいカテゴリーのダイヤモンドの出現によってダイヤモンドやジュエリーに関心を向けるようになった、ということです。つまり、テクノロジーによって生み出された新しいこのラボグロウンダイヤモンドが、新たなジュエリー市場を開拓する可能性を持っているということです。その延長線上で、目的に合わせて、予算に合わせて、アイテムに合わせて天然ダイヤモンドとラボグロウンダイヤモンドを消費者自身が選択するようになるでしょう。お店として、ブランドとして何を取り扱うかを慎重に検討し、決定することは非常に重要です。しかし、この時代に何を購入するかという選択肢は消費者自身にあるということです。

 この流れの是非や善悪を議論することには既に意味がありません。既に技術は出来上がっており、流通も始まり、そして消費者の認知は急速に広まっています。この流れが来ていることを前提に、どのような戦略を取るのかを考えるタイミングに既に来ているということです。AIに関して言えばメディアでは「AIが仕事を奪う!」というトピックが頻繁に出てきています。しかし、AIを否定することに意味はなく、AIを取り入れることによってビジネスのクオリティを上げる、もしくはAIができない領域の人間の仕事の質を上げることに目を向けるほうがよっぽど理にかなっているはずです。

 今月の東京ビッグサイトで開催されるIJTでも、ラボグロウンに関係するセミナーや、ブースが出展されるなど、大きな関心を集めることが期待されています。

 ラボグロウンという水源から湧き出た水は十分な時間を経て、既に太く大きな流れになり、今年一気に流れ込んで来ます。川の流れを変えようとするのではなく、川の流れる先へ行くことで、業界全体として大きなチャンスがつかめる年になるはずです。
■連載コラム No49


時代の流れに対応した人間のみが生き残れる

先日、日本のインターネットの普及と経済に関する非常に興味深い講演を聞く機会がありましたのでご紹介したいと思います。

 日本でYahoo!Japanがサービスを開始したのは1996年でした。インターネットを広く利用可能にしたと言う意味で、この年が日本での一般的なインターネット元年とも言えますが、インターネットが我々の生活をいかに変化させたか、皆様現在も実感されていると思います。

 それ以前の仕事がどうであったか想像していただくと、スマホは当然ありませんし、携帯やパソコンすらほぼなかったわけです。今と比べて圧倒的に非効率的な仕事をしていたわけです。一人の人間の生産性はテクノロジーの向上によってこの20年で比較にならないほど向上しました。つまり社会の生産効率が飛躍的に上がったわけです。

 ところが、この20年で日本の名目GDPはなんと0.8%しか成長していません。ほぼゼロです。生産効率が飛躍的に向上し、一人の人間の能力が何倍にも拡張したのにも関わらず、です。同期間の他国はどうだったかと言うと、米国は139%、韓国は157%、中国に至っては1285%となっています。普通に経済活動を営んでいる世界中の国は日本を除き全て成長しているのに、唯一日本だけがゼロという異常事態です。

 ちなみに宝飾業界のピークは同じく約20年前で市場規模は3兆円、そこから下降の一途を辿り現在では1/3以下の9600億円と、テクノロジーによる生産効率の向上と反比例するかのように市場縮小しています。

 日本経済が成長しない(できない)理由は幾つか説明がありましたが、私が着目したのは「規制がイノベーションを抑制している」「改革を忌避する既得権益者」「リーダー層の低いデジタルリテラシー」の3点です。

 例えばUBERは本来、いわゆる個人所有の自動車を利用したライドシェアサービスですが、世界で唯一日本だけがUBERを本来の用途で活用することができません。道路運送法によってライドシェアは白タク扱いとなり、違法になるからです。そしてこの規制を改革せずに維持することによって利権を守れる会社や団体が多数いると言うことです。しかし消費者にとっては革新的で利便性の高いサービスを利用する機会を阻害されることになり、結果的に新しい経済を生み出すイノベーションが抑圧されると言うことになります。一部の既得権益者だけが得をし、消費者と社会経済にとっては何のメリットもありません。旅館業法によって規制されているAirBnBなども全く同じ構図になっています。本来、新しいイノベーションが生み出されたらそれをどう活用し新たなビジネスとするか模索するのが健全な社会の考え方です。それを規制し既存のビジネスの方法に固執することに将来性も消費者目線もなにも全くありません。

リテラシーの低さです。新しいテクノロジーを採用することによって生じる僅かなリスクを必要以上に重視しすぎて、利便性の高い技術を利用できない、または活用できないというものです。個人でもたまに、不正利用が怖いのでネットでクレジットカードを一切使わないという人がいますが、正直どうやって生活しているのかと不思議になることがあります。私の感覚としては、事故が怖いので車には一切乗りません、というのと同じ感覚で、リスクの為に大きな利便性を犠牲にしているとしか思えません。企業でもテクノロジー活用に関して同様のことは事の大小を問わず多くあります。

 宝飾業界に目を移すとどうでしょうか。宝飾業界は基本的に金属の土台に宝石をセッティングして売るという極めてアナログな業界です。しかし、ここ数年で過去に類を見ない革新的なテクノロジーやイノベーティブなものが数多く登場しています。ここ100年で、ここまでの破壊的イノベーションが宝飾業界に起こったことは恐らくないでしょう。インターネットは生産者と消費者の距離を限りなく縮め、ECによるボーダレスな販売を可能にしました。テクノロジーは店頭でのダイヤモンド接客に革命を起こし、そしてラ
ボグロウンダイヤモンドは新たなカテゴリーとして消費者に衝撃を与えています。つい先日テレビの情報番組で取り上げられたのでご覧になられたかもしれませんが、多くのメディアは現在ラボグロウンダイヤモンドに大きく注目しています。

 しかし依然、多くの業界人はそれに触れようとせず、見ぬふりをして嵐が去るのを待とうとしています。または、それを邪魔し阻害することによって自分のテリトリーを守ろうとしているのかもしれません。しかし、時代は既に変化しています。メーカーが広告戦略によって消費者の嗜好や商品イメージをコントロールできる時代は終わりを迎え、SNSなどのメディアの登場と普及は商品認知の方法を根本から変えました。消費者は自分たちで需要を作り出しつつあります。

 この破壊的イノベーションは日本だけでなく世界中で同時に起きています。アメリカの特に新興の小売店はこの状況を大きなチャンスとしか考えていません。なぜなら、消費者側がこの新しいイノベーションを求めているからです。アメリカのある著名な調査会社は宝飾業界に対して一つのアドバイスをしています。「川の方向を変えようとするのではなく、川が流れる方向に向かうべきだ。」

 この目まぐるしく変化する時代において、時代の流れに対応した人間のみが生き残れます。宝飾業界はまさにその破壊的イノベーションの真っ只中にいるのです。
■連載コラムNo48

消費者の価値観が変わる日々が見えますか?

 先月末にパシフィコ横浜で秋のIJTが開催されました。今回、日本初のラボグロウンダイヤモンド専門商社としてブースを構え、3日間を通じて感じた事を書かせて頂こうと思います。

 以前から本コラムでお話をしている通り、テクノロジーの発展によって普及するものは、その流れを止めることは基本的に不可能だと思っています。そしてジュエリー業界で言えばその一つがラボグロウンダイヤモンドです。私自身、HRD Antwerpの代理店としてダイヤモンドの判別機材を取り扱っている立場から、何年も前からラボグロウンダイヤモンドについてリサーチしていましたが、技術の進歩や海外の生産者の勢いは凄まじいものがあり、この流れは止められないと何年も前に感じました。

 ラボグロウンダイヤモンドは物質的特性としては天然ダイヤモンドと全く同一のものです。炭素からできていますし、同じ硬さ、同じ屈折率を持ち、そして二つとして同じものの無い、本物のダイヤモンドそのものです。頭で理解はしていましたが、4年前に初めてラボグロウンダイヤモンドを見たときには、想像よりも美しく驚いたことを覚えています。アメリカ市場では既に数年前から販売されており、年々市場は拡大しています。既にアメリカの市場で認知され、そして物質としても優れていることから日本市場に入るのは時間の問題だと思いました。しかし日本はどうだったかというと、ここ数年間ずっと市場から排除する方向で議論され続けて来たのです。それが一転したのは、今年5月にDeBeers社がLIGHTBOXを発表した時です。ダイヤモンド界の巨人がこのビジネスに参入することで、一気に風向きが変わりました。そして9月には(アメリカ国内限定のWEBですが)遂にDeBeersが販売を開始しました。

 日本国内では9月にラボグロウンダイヤモンドを使用した日本初となるジュエリーブランドが始動し、また全国展開しているチェーン店も全国での取扱いを発表するなど、遂に日本でも新たなジュエリーカテゴリーが産声を上げた、このタイミングでの国際宝飾展となったわけです。

 結果、初日は本当に昼食どころか一瞬座る暇もないほど開場から閉場までずっと対応に追われ、二日目以降もずっと来客は途切れませんでした。ありがたい事に、この為だけに横浜に来た企業も多くいらっしゃいました。5ctsのプリンセス、1ctのブルーやレッドダイヤモンド等を展示し、皆様非常に驚かれていました。また、現物を見た事で「これは本物のダイヤモンドだ」という事を(かつての私と同じように)実感として理解され、この流れを受け入れられたようにも見えました。実際、今回ご用意させて頂いたラボグロウンダイヤモンドは私が厳選して輸入したもので、見ていただければ必ず、ダイヤモンドを普段見慣れている方であればあるほど美しいと感じていただけたはずです。

 このタイミングでまだ知識がない方は論外として、知識としてラボグロウンダイヤモンドが何であるかはご存知の方でも、知識があるということと実際現物に触れることは意味が全く違います。頭では本物のダイヤモンドと理解していても、現物を見るまではイメージが先行してネガティブな感情が残っていた方がほとんどだと思います。しかし、現物を見ると意識が一瞬にして変わります。初めてラボグロウンダイヤモンドを見る方を観察していると、意識が変わった瞬間が良くわかります。ダイヤモンドは理屈抜きに美しさこそが全てだと直感的に理解でき、そして扱う意思を持たれていました。今回、大きく業界が動いていると感じました。

 先日、既に販売を開始されているショップでお話を伺う機会がありましたが、しっかりと説明をすればお客様は抵抗なく受け入れられているとお聞きしました。実際、私も少し前に消費者の方から直接お問い合わせを頂いた事があります。「都内中のジュエリーショップに問い合わせたけど、どこも扱っていないので直接売って欲しい。」とのお問い合わせでした。詳しく伺うと奥様への結婚5周年記念日のプレゼントという事でしたが、ラボグロウンダイヤモンドをプレゼントする事で、自分が物の価値を見極めることができる人間であるとアピールしたいと仰っていました。消費者の方々は多様な価値観を持たれていて、ときに販売側の予測を軽く飛び越えます。

 一方、国際宝飾展の隣のブースではSarine社が新しい「Diamond Journey」(ダイヤモンドの旅)という新しいプログラムを公開しました。Sarine社はダイヤモンド原石のプランニング技術の圧倒的な世界トップ企業ですが、そのシステムを利用し、研磨された個々のダイヤモンドが実際にどの様な形状の原石からどの様に切り出されたのかをデジタルレポートとして提供するというものです。研磨されたダイヤモンドは個々の違いがわかりづらいですが、原石は一つ一つユニークで、それをお客様がご覧になる事でご自身のダイヤモンドが本当に唯一無二であることを実感としてご理解頂けます。また、輝くダイヤモンドを切り出す為に大きな原石を惜しみなく削ぎ落とすことを理解でき、よりダイヤモンドへ価値を感じ愛着を持たれるはずです。Sarine社は来年で設立30周年を迎えます。何十年もの間ダイヤモンド業界のすべての分野にテクノロジーを提供し続けてきた同社
だから実現できた画期的なプログラムです。

 今回は特に誤解の無いように強調させていただきたいのですが、ラボグロウンダイヤモンドを取扱うべきだと主張するつもりも全くなければ、ましてやここでビジネスの宣伝をするつもりも一切ありません。ただ、この2018年ほどダイヤモンド業界が大きく動いた年はないということを皆様にご理解をいただきたく、説明させていただきました。テクノロジーによってダイヤモンドの魅せ方、接客方法は大きく変わり、そして素材そのものまでも新たなステージへと突入しました。今後ダイヤモンド業界が変わるのではありません、今この瞬間に変わっているのです。そして、消費者の価値観も日々変わり続ける中で、この全体の流れを知らずにいる事は命取りになります。

 今この瞬間も、業界は動き続けています。それが見えるか見えないか、この差は決して小さくはないと思います。
■連載コラムNo 47

ZOZOスーツから見る、圧倒的な優位に立てることとは

 Amazonや楽天などの台頭によってネット通販はだいぶ一般的になってきました。私も食料品以外の買い物はほとんどがネットですが、洋服だけはサイズ感に不安があるためネットでの購入に抵抗感があったのも事実です。Mサイズと表記されていても、メーカーによってサイズ感が異なることはよくあることです。同じように感じている方も多いのではないでしょうか。

 そこで、特に新しい話というわけではありませんが洋服通販サイトのZOZOが実質無料で販売しているZOZOスーツを買って試して見ました。試してみた方はご存知と思いますが、マーカーと呼ばれるドットのついた水玉模様の全身タイツのようなもので、これを着用してZOZOのアプリでスキャンすることでウエストや袖丈はもちろん、首回り、太もも周り、股下や足首周りなど18カ所のサイズを自動的に採寸してくれる仕組みになっています。このデータはZOZOの自分のアカウントと結び付けられていて、自動的に自分の体型に合うサイズの服の絞り込みが行われるというわけです。実際にZOZOオリジナルブランドのデニムパンツを購入してみたところ、本当にジャストサイズのものが届きビックリしました。これから服は全部ZOZOで購入すれば安心かな、と思ったほどです。

 ただ、インターネットで ZOZOスーツの評判を調べてみると否定的な意見が多いことに気づきました。スキャンが面倒すぎる、届いた服のサイズがピッタリではなかった、などです。また、当初はセンサー式だったものがより低コストのマーカー式に変わったことで残念、というものもありました。ではこのZOZOの試みは失敗だったのでしょうか?決してそうではありません。得てして日本企業は100%の完成度を待って商品をリリースしようとしますが、ZOZOはこの製品を恐らく60〜70%程度の完成度で市場に投入しています。革新的な試みは100%の準備が不可能であり、挑戦するものだけが市場を支配すると知っているからです。恐らくZOZOはこの批判的な意見も取り入れ、近いうちに高い完成度を実現するでしょう。そうなれば、日本国民の膨大な体型データを持ちノウハウを有するZOZOはこの分野において圧倒的な優位に立てることになります。

 もちろん中には、洋服の購買は試着したり店員とコミュニケーションを取ったりしながら店頭で購入するのが楽しいし、一番自分に合う服を探す方法だという方もいるでしょう。もちろんそれも正しい意見だと思います。しかし、だからといってこの様なテクノロジーによるインターネット販売の発達を巻き戻すことが可能でしょうか?好む好まざるに関わらず、テクノロジーは発達していきます。個人の趣向として購買スタイルを選ぶことは自由ですが、ビジネスとして捉えた時に個人の趣向を優先させることは間違いなく命取りになります。

 このような事を『破壊的イノベーション』という言い方をしますが、何も決して最近に限ったことではありません。冷蔵庫が普及したことにより氷売りはほとんど必要とされなくなりましたし、自動車ができたことにより馬車に関わる仕事のほとんどは消滅しました。また、蓄音機はレコードプレイヤー、ウォークマン、MD、MPプレイヤーと変わり、今ではほとんどの人はiPhoneなどのスマホで音楽を聴いているのではないでしょうか。実際CDすらも今の若い世代はほぼ買うことがありません。レコードの音質が豊かだからとスマホの音楽配信を否定して見ても、ビジネスとしては意味がないことに反論の余地はないと思います。

 ジュエリーに関しても、デジタルツールを利用した販売戦略は加速の一途を辿っています。ジュエリーのサイズ採寸などアパレルに比べれば遥かに簡単です。ヴァーチャル試着などができれば、商品が手元になくても接客や販売は容易になるでしょう。この販売方法が正しいかどうかをここで議論するつもりはありませんが、ここで言わんとしているのは、テクノロジーはいずれそれらを可能にし、それを拒否することは不可能だということです。もしあなたがやらなくても、いずれ誰かがやるでしょう。

 先月の香港ショーでは以前にも増して多くのラボグロウン(合成)ダイヤモンド業者が出展していました。ラボグロウンダイヤモンドは本物のダイヤモンドですが、テクノロジーによって成長しているテクノロジーの産物です。テクノロジーによってハウス栽培の花が安定的にそして高品質になるのと同様、ダイヤモンドも品質や生産効率が進化します。長い間宝飾ビジネスに携わってきた皆様には思うところが色々とあるとは思いますが、この流れが止められないのも一方でまた事実なのです。

 もちろん、蓄音機とスマホのような関係性とはまた異なりますので、どちらかの市場が消滅するということではありません。消費者の価値観は多様性がありますから、天然ダイヤモンドは天然としての価値を見出され売れるでしょうし、また他の消費者にとってはラボグロウンダイヤモンドの価値が受け入れられるということになります。重要なことは、今後テクノロジーによる発達が何をもたらすかを予測し、そして備えるということです。先月末、ついにLIGHTBOXがスタートしました。これはダイヤモンド業界に投げ込まれた起爆剤です。DeBeersの意図とはもはや関係なく、今後業界は大きく、しかも短期間に大きく動くでしょう。将来のことは誰にもわかりません。しかし、変化に備えずに成功するということは、あり得ないのです。
■連載コラムNo 46

バーチャルが生み出す、在庫や接客の効率化と利便性

 先日、AIに関する非常に興味深い講演を聞く機会がありました。
 著名な脳科学者と言えば想像がつく方もいらっしゃるかもしれません。AIの発達によって今後何が起こるのか、そしてその(抗えない)流れの中で、人はどのように価値を創造していくべきなのか、私たちのビジネスにも非常に関係の深い話ですので少しご紹介できればと思います。

 まず大前提として、AIが発達すれば、今までの頭の良さの尺度は全く意味がなくなるということです。例えば、歴史の年号を全て暗記している人がいたら学校のテストで高い点を取れるでしょうし、とても頭がいい人と言ってもいいと思います。でも、今は皆さんスマホを持っていますし、手元で調べれば一瞬で情報を得ることができます。また、ソロバン一級を持っている人がいたらそれはすごい能力だと思いますが、それだけで、是非うちの会社に欲しい!と思われますか?それより、エクセルを使いこなせる人の方が、能力が高いと判断されるのではないでしょうか。

 誤解のないように言いますが、年号を覚えたりソロバンを覚えたりすることに意味がないと言っているのではありません。全てをコンピュータに頼るのはもちろん良くありません。しかし情報量が過去と比較にならない現代において、人間の能力をテクノロジーやAIによって拡張することは今後必要不可欠になってくるということです。

 AIの最も得意とすることは、ビッグデータがあること、そして評価関数の決まっていることです。例えば統計を出したり、過去のデータから照合して適切な答えを導き出したりすることなどは最もAIに適した作業になります。ディープマインド社が開発したアルファゼロは、囲碁や将棋、チェスのAIですが、既に人間の能力を凌駕しています。これも、AIの能力を示す良い例ですが、実はアルファゼロを開発した人々は囲碁にもチェスにも全く興味がありません。興味の有無ではなく、AIを使用することによって容易に世界一になれるのが、今後のAI社会ということです。

 ビッグデータと評価関数が決まっていることといえば、ダイヤモンド鑑定もその種類の業務でしょう。ダイヤモンドスキャンの精度に依存はしますが、適切にスキャンが行われていれば、あとは機械の学習によって完璧に正確なダイヤモンドグレーディングが可能です。また、鑑別作業自体もデータ蓄積によって可能になってくると思います。

 この流れは、つまりAIが人間の既存の業務に取って代わるということは避けられない事実です。このこと自体に抗っても意味はないのです。ただ、人間がこのAI時代に価値を見出すことはもちろん可能です。AIは、前例があって評価関数が決まっていることは得意ですが、逆のこと、つまり前例がないことは不得意です。直感力や想像力を持つ人間だけが新しいことを生み出せるのです。そして、この前例がないことはビジネスにおいて大きなジャンプになる事が多いのです。

 新聞やテレビだけが情報源だった時代と異なり、現在は様々な情報ソースがあり、我々は能動的にどの情報を自分が得るか選択できます。既存のメディアの情報だけを得ている人と、能動的に新しい情報にアクセスしている人には自ずと大きな差が出てきます。以前は一般的な知識を知っている事が重要でしたが、いまは何に意識を向けているかが知識レベルを左右するということです。例えば、スポットミニが何かご存知ですか?ハイパーループは聞いた事がありありますか?スマートスピーカーは使った事がありますか?今後、このような情報の積み重ねと経験はAI時代に大きな差になって個人や企業の明暗を分けるでしょう。

 しかし、この新しい技術を積極的にフォローしていくということは、個人や企業の能力を最大化し、拡張できるというメリットがあります。私が今、今後のために取り組んでいることのひとつに、タブレットを用いたバーチャルジュエリー接客があります。店頭接客ツール利用を想定していて、タブレットの中に大量のリングデザインデータが格納されているものです。サイズ、リング幅、素材に応じて3Dデータをリアルタイムで生成する事が可能です。お客様の希望するリングデザインがどこに展示してあるかケース内を探す必要はないですし、素材違いもすぐにビジュアルで提案する事が出来ます。また、拡張現実(AR)を実装すれば、お客様にご試着いただくことも可能です。店頭に枠見本を大量においておく必要もありません。新しいデザインが発売されたらシステム内に自動的にアップデートされるので、店頭見本を追加発注するかどうかを悩むこともありません。また、1店舗でも100店舗でも、アプリケーションさえダウンロードすればその日から導入スタートする事が可能です。

 店頭在庫がゼロというわけにはいかないでしょうが、Sarine Profileなどのダイヤモンドの精細な3Dスキャンイメージと組み合わせれば、タブレット上で接客を完結させることも可能でしょう。このような新しいテクノロジーの活用は旧体質的な業界では導入が進みづらいかもしれませんが、アルファゼロのように、異業種の参入によって大きく構図が変わる可能性すらあるのです。

 結論として、AIは人間の知識の差を限りなく小さくしますが、技術を活用できる人間、企業にとっては大きな恩恵をもたらすものになるということです。そして、その効率化された中で、どのように技術を取り込み活用するか、そしてどのように新しい価値を生み出していけるのかが、今後のビジネスを飛躍させる鍵になってくるということです。
■連載コラムNo 45

既存の枠を超えて楽しめる素材

ダイヤモンドが事業種に広がる可能性

世界一高いマティーニをご存知ですか?六本木、東京ミッドタウンの45階に位置する、『ザ・リッツカールトン東京』のバーで提供されるマティーニがそれです。価格は何と一杯200万円!しかも、サービス料、消費税別です。ちなみにリッツカールトンのバーのサービス料は15%なので、サービス料だけでも30万円です。

 この規格外のマティーニは『ザ・ダイヤモンドイズフォーエバーマティーニ』と言う名前で、実は1カラットのダイヤモンドがグラスに入っているのです。ある意味反則技のようなマティーニですが、話題作りのための飾りとしてメニューに載っているわけではなく、バーでは常に1カラットのダイヤモンドを常備しています。実はこのダイヤモンドを私が手配しているのですが、このマティーニ、注文されたお客様が今までに何組もいらっしゃいます。

 もちろんそのダイヤモンドはお客様が持ち帰ることができます。そう考えると実はかなり良心的な価格設定だと思いますが、リッツカールトンとしてはサービス料だけでもかなりの金額の利益を上げることができるので、結果お客様にとってもリッツカールトンにとってもメリットの大きいサービスになっています。これは既存の宝飾業者にとっては考えつかないダイヤモンドの利用法ではないでしょうか。世界一高価なマティーニという看板を掲げながら、実質比較的リーズナブルな価格でダイヤモンドを、しかもリッツカールトンというブランドで提供できるのです。

 約2ヶ月前にD e B e e r s は自社のLab-Grown Diamondブランド、LIGHTBOXを発表しましたが、その際に「フォーマルに対してのカジュアル」という表現がありました。特別な日のシャンパーニュに対してのカヴァ、レッドカーペットに対してのストリートファッションという例えと共にそのコンセプトは表現されていました。要は、ジュエリー素材としての上下の二階層構造を示したわけですが、しかし上記のリッツカールトンの例でもわかるように、ダイヤモンドは既存の枠を超えて楽しめる素材です。もちろんリッツカールトンで使用されているのは天然ダイヤモンドですが、今後ラボグロウンダイヤモンドはダイヤモンドという素材の可能性を大きく広げることができます。単に上下の二階層構造ではなく、多様性に富んだ展開が可能なのです。今まで、ダイヤモンドはジュエリー業界だけのものでした。しかし今後は異業種にダイヤモンドが素材として広がっていく可能性があると思っています。以前、188年の歴史を持つフランスの銀食器ブランド、クリストフル社とコラボレーションしたことがあります。天然ダイヤモンド入りの箸をインバウンド向けに一膳18万円で販売したのですが、これも非常に好評でした。また別の分野で、リーズナブルで高品質なLab-Grown Diamondを使用すれば更に表現性の豊かな新しい価値の商品が産まれるかもしれません。

 実は先日、高品質なL a b - G r o w nDiamondのメレを見る機会がありました。たまたま天気の良い日の窓際で、ロットで袋に入れられたそれらのダイヤモンドは、ダイヤモンドに見慣れた私でも新鮮な驚きを感じるほどのものでした。実際、このダイヤモンドで何か製品を作ったらどんなに美しいだろうとワクワクしたくらいです。材料もののダイヤモンドに関していえば、美しいダイヤモンドの方がお客様にとっては絶対的に嬉しいはずです。もちろん天然の美しいメレダイヤモンドをふんだんに使用したダイヤモンドジュエリーには価値があると思います。しかし、天然というだけでキズだらけの「屑」ダイヤモンドを使用している超低単価ジュエリーにどれだけの価値があるのかは甚だ疑問です。

 以前も幾つかのセミナーでご紹介させて頂きましたが、面白い調査結果があります。これは以前にアメリカのある権威ある調査機関によって発表されたものですが、アメリカで1年間の間にインターネット検索されたジュエリーブランドは何だったのか、というものです。つまり、消費者がどんなジュエリーブランドに関心を持っているのかの調査というわけです。結果、1位はカルティエ、2位はティファニーでした。ここまでは想定の範囲内だと思いますが、3位は実はスワロフスキーでした。スワロフスキーは洗練されたジュエリーのブランドですが、使用されている素材はダイヤモンドではありません。私は過去同コラムにおいて、新世代の消費者の目線を意識できるかどうかが今後のダイヤモンドビジネスを左右すると何度も説明してきましたが、まさにそれを象徴する例で、いまの消費者は価格と見た目の美しさのバリューを意識して購買決定をしているのです。クリスタルが消費者の第3位の人気を獲得しているとすれば、L a b - G r o w nDiamondを使用したステータスの高いブランドが誕生したらどうなるでしょうか。

 冒頭の話に戻りますが、マティーニにダイヤモンドを沈めて供するという発想は宝飾業的ではなく異業種の発想です。今後、消費者の多様性に伴い異業種でダイヤモンドを取り入れる例が増える可能性があります。しかしこの流れは、今まで横這い、または衰退産業と言われていた宝飾業界にとっては、明るい兆しではないでしょうか。今までも、そしてこれからも『ダイヤモンド』という単語は世の中では『最高』と同義です。その最高のイメージを使いながら、どれだけ新しい発想を持てるか、そして時代を先回りできるかどうかが重要なのです。
■連載コラムNo 44

「スマホ時代」の意味を理解し、様々な可能性を考え、準備すること

 5月末にDeBeersは自社の合成ダイヤモンドブランド『LIGHTBOX』を発表し、6月初めのラスベガスJCKショーで発表しました。天然ダイヤモンドの供給ルートを持ちビジネスを展開してきたDeBeersが宝飾用合成ダイヤモンドを売り出すとあり、業界の困惑は相当なものがありました。実際、JCKショーでのプレゼンテーションは混乱状態で異様な雰囲気だったようです。

 DeBeersが合成ダイヤモンド事業を行うこと自体に加え、その価格設定も衝撃的なものでした。小売価格が1ctでUSD800、1/2ctで半分のUSD400、1/4ctで更にその半分のUSD200と、その低価格もさることながら全てのサイズレンジで同じカラット単価とすることで、ダイヤモンドのプライスの常識を無視していたことも衝撃的でした。

 何故DeBeersはこのビジネスへの参入を決定したのでしょうか。大きな理由のうちの一つは、合成ダイヤモンドマーケットが急速に拡大していることへの懸念があることは疑いようがありません。実際、昨年1年間でアメリカでのマーケット規模は3倍に拡大していると言われており、今後さらなる拡大が予想されている成長市場です。数々の企業がブランドとして販売しており、ハリウッド俳優の資本参加やハリウッド女優の着用などによって素材としてのイメージは確実に向上し、無視できない規模になっております。
DeBeersはこの市場をコントロールし、その影響力を使って消費者へのイメージ付けをしようと試みています。

 しかしアメリカでは先行プレイヤーが既に市場を構築しつつあり、単純にプライスメリットがあるだけの商品ではなくピュアで倫理的価値の高いダイヤモンドとして一定の支持を得ています。加えて、サイズを重視しながらも品質も良いものが購入できる合成ダイヤモンドはアメリカ市場で特に合理的な選択肢となっています。

 ここで皆さんには一つの疑問が湧き上がっている事と思います。『日本で合成ダイヤモンドは市場に受け入れられるのか』と。その答えは、時間のみが知ることすが、ここで留意すべき点は、合成ダイヤモンドは宝飾業界の商品に見えますがテクノロジー分野の商品であるという事です。この分野の商品は時に我々の予想を大きく超える可能性がありますし、「スマホ世代」の消費者にとっては別の価値観を持って捉えられる可能性が大いにあるという事です。

 iPhoneが初めて登場した時、携帯業界人は日本での普及に大きく懐疑的でした。おサイフケータイ機能もなくワンセグTVもついていないタッチパネルの携帯が日本で普及するはずはない、日本の消費者は日本カスタマイズされた携帯を欲しがるはずだ、と考えたのです。恐らくそう考えたのは携帯メーカー各社の重役の方々だったでしょう。
その結果がどうなったのかは、皆さんがご存知の通りです。Appleがダントツのシェアを誇り、サムソンやファーウェイが猛威を振るう中、かつてトップだった富士通が携帯端末事業売却を決定しました。

 新しいテクノロジーの登場による市場の変革に抵抗することには意味がありません。ダイヤモンドの場合は、新しい商品の登場によってどちらかが淘汰されるという単純なものではありません。例えば合成ダイヤモンドの登場によって天然ダイヤモンドへの憧れを強くする消費者もいるかもしれませんし、エンゲージメントリングを購入する予定のなかった方がエンゲージメントリングを購入するという新たな需要喚起になる可能性もあります。加えて、天然ダイヤモンド専門ブランドという新たな価値も生まれる可能性すらあります。
 先にも述べたように、日本の市場がどうなるか、これは時間のみが教えてくれることです。しかし、わからないという事と、考えないということは別問題です。考えることを放棄して既存のビジネスを続ける事と、色々な可能性を考えた上で今までのビジネスを強化するのが得策だと判断してそれに注力する事は大きな違いがあります。また、違う方向に舵を切るという判断をされる方もいるかもしれません。ダイヤモンド業界は何十年もの間同じビジネスを継続してきたため、これが今後も続いて行くと考えがちですが、そのようなビジネスはこの時代には存在しません。先を予想し、様々な可能性を考え、先回りをして準備している人だけが今後生き残れるのです。

 何れにしてもテクノロジー分野の商品である以上、もし宝飾業界の人間が手がけないのであれば、異業種が参入して日本で販売を開始することは間違いないでしょう。なぜなら、アメリカで既に受け入れられ売れている物販商品だからです。

 DeBeersのLIGHTBOXに端を発したこの騒動が今後のビジネスにどう影響を与えるのか、いずれにしてもこの発表が今後のマーケットを大きく動かすことだけは間違い無いでしょう。既存の合成ダイヤモンド事業者はこのことをポジティブに捉えているようです。DeBeersによって合成ダイヤモンドジュエリーが今まで以上に健全なものとして市場に認知される可能性があるということ、そして取り扱う企業が増えるということです。否定する事は簡単ですが、先を見通してビジネスを構築する事は柔軟な発想と真剣さが無いと不可能だと思います。技術は日進月歩どころか秒進分歩で発展しており、今日の新技術が明日には陳腐化する時代です。そして、我々の今後のターゲットは「スマホ世代」だという事です。この意味を理解することが、今後宝飾業界で生き残る唯一の道だと私は思います。
■連載コラムNo 43

570年前の1447年に、疑似石の取引を制限したアントワープ

 先月(5月)、ベルギー・アントワープの AWDC(アントワープ・ワールド・ダイヤモンドセンター)の主催で、昨年に引き続き第2回目となる日本企業対象のアントワープ・ダイヤモンド・エクスペリエンスツアーが開催されました。
 570年という世界で最も長いダイヤモンド産業の歴史を持つベルギーの魅力、信頼性を、実際に見て体験していただくことで、ベルギーダイヤモンドの優位性を知ってもらうことを目的にしています。メーカー、小売店など様々な業種の方々が今回このツアーにご参加され、歴史や倫理など改めて実感されていたように見受けられました。

 世界に31箇所あるダイヤモンド取引所のうち4つがアントワープに存在し、世界で最初に設立された取引所もあります。また、原石専門の取引所は世界で唯一アント
ワープだけに存在します。世界中にある他の30の取引所は研磨済ダイヤモンド用ですが、この取引所では原石のみが取引されます。実際、このアントワープの限られた一角で世界中のダイヤモンド原石の84%が現在でも取引されています。

 アントワープはダイヤモンドの長い歴史と最先端が共存する場所です。その長い歴史の中で世界中どこにも類を見ない高度な業界構造を作り上げており、世界で最も高い倫理水準を実現しています。

 今から570年前の1447年には既に、疑似石の取引を制限するアントワープ市の法律がありました。いかに昔からダイヤモンド取引の信頼性を街として重視していたのかお分りいただけると思います。現在においても取引の信頼性を守るため、アントワープはダイヤモンド研究の最先端であり、世界最高水準の信頼性をもたらしています。

 AWDCの傘下にはHRD Antwerpというダイヤモンド研究・鑑定鑑別機関があり、世界で最も信頼性の高いダイヤモンド鑑定機関のひとつとして知られています。特に昨今、混入が問題視されている合成ダイヤモンドに関する研究も最先端のものです。

 合成ダイヤモンドは、その生成技術と処理技術の向上によって、少し前の選別技術が有効ではなくなる、つまり見分けられなくなることも少なくありません。例えば、メレサイズの合成ダイヤモンドの大半を占めるHPHT合成ダイヤモンドに関して、HPHT合成ダイヤモンドの特徴である燐光(りんこう ‒物質に光を当てた際に光の補給が停止しても残光が見られる現象)を撮影することで天然ダイヤモンドから選別するという技術がありますが、最近では比較的簡単な後処理によってHPHT合成ダイヤモンドからその燐光を消す技術が明らかになりました。実際に、燐光を示さないHPHT合成ダイヤモンドが既に市場に存在しているようです。一方、元々未処理のCVD合成ダイヤモンドでは燐光を示さないことからHRD Antwerpでは紫外線(とその他複数の技術)によるダイヤモンドタイプ選別を採用しマシンを開発していましたが、その技術は現在でも全ての種類の合成ダイヤモンドの選別に有効なものです。容易に欺けない技術を信頼性の担保として採用していることも、アントワープの信頼性を影で支えている大きな柱のひとつです。

 また、一般的に上記のようなマシンを使用して行われるのは「スクリーニング」と呼ばれる、天然ダイヤモンドと、疑いのあるものを選り分けるという作業です。無色のダイヤモンドであれば98%はこのスクリーニングによって天然ダイヤモンドの確認が取れますが、残り2%、場合によってはそれより多くのダイヤモンドは更に検査が必要になります。通常はHRD Antwerpのような高度な鑑別機関に依頼しないと最終判断できませんが、HRD Antwerpでは天然ダイヤモンドか合成ダイヤモンドか(もしくは疑似石なのか)を1台で最終判断するためのマシンを開発し、5月に発表しました。
“D-Tect”という名称のこの機器は、全てのサイズ、シェイプ、そしてジュエリー製品に使用することができ、そのダイヤモンドが何なのかを最終特定することを可能にしました。

 アントワープは最先端の研究と、その技術をダイヤモンド産業全体に提供することにより信頼性を担保しています。HRD Antwerpでは合成ダイヤモンド( L a b - g r o w nDiamond)専用の鑑定書を発行しており、新たなカテゴリー商品としての価値を提供しています。最も重要なことは取引の情報開示ですが、アントワープでは高度で正確な検査を実現することにより、将来を見据えた高い信頼と取引を実現しているのです。

 ダイヤモンドに従事する人間が初めてアントワープを訪れるとき、そこに息づく歴史、誇り、そして最先端技術を同時に感じることができます。その信頼性という価値は、消費者にとっても同様に価値のあるものではないでしょうか。
■連載コラム No42

米国で認知された合成ダイヤモンド

世界で急速に拡大する時、日本は?

前回はダイヤモンドの信頼性について説明させていただきましたが、今回は別の視点での信頼性についてもう少し書いてみようと思います。

 業界の皆様が現在最も気になっていることの一つに、合成ダイヤモンドがあると思います。本コラムでも過去何度とこのトピックに関して書かせていただきましたが、私は今年が本当の意味で日本においての合成ダイヤモンド元年となると考えています。今までは合成ダイヤモンドに関しては「どう混入を防ぐか、どう天然を守るか」と言う文脈でネガティブに語られていたものがほとんどです。しかし、今後は合成ダイヤモンドをポジティブに、ビジネスとしてどう考えるかの選択に迫られることになるからです。

 その主な根拠は、海外での市場拡大です。特にアメリカ市場では合成ダイヤモンドが新たなカテゴリーの商品として認知、販売されており、市場規模は過去1年間で約3倍、今後更に加速することが予測されています。そもそも、海外では既に『合成(Synthetic)』とは言われておらず、『ラボグロウン(Lab-grown)』と呼ばれ、認知されています。そして、GIA、IGI、HRD Antwerpなどの鑑定機関では『LaboratoryGrown』と記載した正式なダイヤモンド・グレーディングレポートを発行しています。また、ラボグロウンだけを取り扱う専門店、既存の宝飾店の一部のコーナーでの展開、百貨店での販売、ECなど様々なチャネルで展開されており、消費者にとってラボグロウンは新たな選択肢となっていま
す。どのチャネルでも販売は非常に好調で、売上は増加し続けている成長市場です。加えて、ハリウッド女優がオスカー受賞パーティーにラボグロウンのブランドジュエリーを身につけて出席するなど、既にマイナスイメージはなく、むしろ高いステータスを獲得しているのです。

 ダイヤモンドビジネスはアメリカが先進国ですから、このラボグロウンに関しても日本市場に入り出すのは時間の問題です。怖いからと言って目を背けていたらずっと見なくて済むわけではないのです。問題はあくまで「混入」であり、ラボグロウンダイヤモンドそのものは新たなカテゴリーの商品なのです。

 一方で、ラボグロウンの販売が始まったからといって天然ダイヤモンドの価値が下がるわけではありません。地中奥深くで気の遠くなるような時間を経て我々の手元に届く結晶は奇跡の産物ですし、天然ダイヤモンドの持つ個性や希少性は非常に魅力的なものです。一方で、ラボグロウンの持つ強みや性質は新たな価値として消費者に選択肢を与えるものになるでしょう。

 合成ダイヤモンドに関して日本ではネガティブなイメージで語られがちですが、ラボグロウンがジュエリーとして受け入れられるかどうかを決めるのは我々ではなく、消費者です。我々に本当に求められることは、カテゴリーの棲み分けと適切な説明です。

 今後もし、ラボグロウンダイヤモンドがジュエリーとして日本で販売開始された際、必要になることは、販売側のダイヤモンドへのより高い専門性です。ラボグロウンダイヤモンドを扱う場合はもちろん、扱わないのであっても必ずダイヤモンド全般についてのより深い知識が必要になるはずです。ダイヤモンドは永遠です、と言う説明で売れていた時代は過去のものです。天然ダイヤモンドの天然としての特性、価値は何なのかを改めて問うと同時に、ラボグロウンと天然の違いをお客様にしっかりと説明する必要が生じるでしょう。

 ラボグロウンについては、どのように成長させているかご存知ですか?どのような国、場所でどのようなタイプのラボグロウンがつくられていて、どのような形をしているかはご存知ですか?どのように流通しているか、種類によってどのような特性があるかはご存知でしょうか。最新の技術に関してはご存知でしょうか。そもそも、現物をご覧になったことはありますか?

 ラボグロウンはIT同様、テクノロジー分野の商品です。技術は日々進歩し、より高度なものへと進化していきます。技術の発達に伴い生産量も増加を続けており、今後3年間で5倍に増加すると推定されています。これは今後市場が益々拡大することを意味しており、抵抗してもせき止めることは不可能です。

 しかしこのような状況の一方で、この新たなカテゴリーの登場はダイヤモンド業界を専門性という原点に回帰させ、ダイヤモンドの価値の再認識をさせる新たなチャンスにもなるのではないでしょうか。
■連載コラム No41

グレードを画像で見せる品質担保で、消費者心理を大きく捉える

前回はAIによるダイヤモンドグレーディングの概要についてご説明させていただきました。単純に先進的で目新しいイメージに感じると思いますが、テクノロジーの進化はそれだけではなく基本的には信頼性と密接に関係します。高級商材であればあるほど、品質の担保は消費者心理を大きく左右します。AIによるグレーディングが客観性と再現性の点で信頼性が高いという点は以前説明しましたが、店頭でのプレゼンテーションに信頼性をプラスできるのも大きな特徴です。例えばデジタルレポート上では自動的にプロットされたクラリティの図面が実際のダイヤモンドの画像にオーバーラップされて表示されます。販売員は(現物のダイヤモンドを見ることに慣れていなくても)それをお客様に示しながら、鑑定士でないと見つけられないような微細な内包物を示しながら、そのグレードの根拠を説明することが可能です。今までただの『記号』だったグレードが『個性的な特徴』となり、お客様からの信頼を得るツールとなります。

つい最近発表されたリクルートの調査では、婚約指輪購入の際に重視する点として「石の品質」が昨対ベースで増加、消費者傾向として素材が重視されていることが示されました。加えて、素材の価値(信頼性)をしっかり打ち出し、独自性のあるショップ、ブランドが好調に販売を伸ばしているようです。

信頼性の別の価値軸として、トレーサビリティーがあります。主に紛争ダイヤモンドや児童労働の排除の意味合いがありますが、日本国内においては二次流通商品などが度々メディアで取り上げられていることもあり、婚約記念品として相応しいソースのダイヤモンドかどうかということが度々話題になります。また今後は天然ダイヤモンドとして販売されているものが合成ダイヤモンドではないのかという懸念も生じて来るでしょう。

しかし、ダイヤモンドが心理的価値商品である以上、トレーサビリティーが担保されていれば何でも良いというわけではないことも想像に難くないと思います。例えば、仮に見た目と味が同じであっても聞いたことのない地名のお菓子より京都の老舗のお菓子の方が美味しいとほとんどの人は信じるはずですし、多少値段が高くてもそちらを選ぶ理由があります。ダイヤモンドも同様、つまるところイメージが非常に重要ですから「どこから届いたのか」ということはブランドイメージを大きく左右します。

ベルギー・アントワープは世界中のダイヤモンド原石の8割以上が集まる世界のダイヤモンドキャピタルで、ダイヤモンド取引において570年という世界最古の歴史を誇ります。アントワープでは世界中にその価値を発信すべくD n A(Diamonds& Antwerp)というプログラムをスタートしました。これはベルギーダイヤモンドの品質を啓蒙し、その証明をつけて消費者信頼とブランド価値をアップさせるというプログラムです。ベルギーは一時期のショコラティエブームなども手伝い、歴史がありオシャレなヨーロッパの国というイメージが広まっています。確かに、ベルギーダイヤモンドは安くはないです。しかし、信頼性が担保されており、歴史のあるヨーロッパの国から届いたダイヤモンドというイメージは、人生の節目に購入するダイヤモンドとして非常に親和性が高く、プログラムを採用し積極的にこのイメージを打ち出している店舗では、以前に比べて高単価のダイヤモンドの販売を大きく伸ばしています。

イメージ戦略に凝っているブランドは多々あります。また、トレーサビリティーをアピールする販売も珍しくはありません。しかし、その二つが密接に関係していなくては心理的価値商品であるダイヤモンドの販売を後押しすることは難しいでしょう。京都の老舗の和菓子のように、信頼性とブランドイメージがリンクする戦略が重要になってきます。片方だけではダメなのです。

最新のAIグレード、570年の歴史とヨーロッパのイメージ、一見正反対に見えますが、消費者信頼という視点ではどちらも非常に強力な武器になります。

5月(22-24)にはベルギーAWDC(アントワープ・ワールド・ダイヤモンドセンター)の主催でアントワープダイヤモンド産業の視察ツアーが予定されています。世界のダイヤモンド中心地をその目で見て経験するということは、消費者信頼に大きく影響するものになると確信しています。
■連載コラム No40

Amazon Goから読み解く、今後のリアル店舗のスタンダード

Amazon初のリアル小売店『Amazon Go』1号店が1月22日、アメリカのシアトルでオープンして話題となっています。これはレジのないコンビニで、消費者は商品を手にとって自分のバッグに入れるだけで店の外に出ることができます。商品代金は利用者のアカウントに自動的に課金される仕組みとなっています。これにより、レジの列に並ぶ必要がない超高回転率と、人件費の削減という二つの効果を実現しています。しかしAmazon GoはEC最大手がリアル店舗に進出したという単純な話しではありません。

Amazonは元々、書籍のEC店舗としてスタートしましたが、今ではほぼ全てのジャンルを網羅するEC、加えて電子ブック配信、動画オンデマンド配信、音楽配信、AWSと呼ばれるWebサーバーサービス、AI開発と事業は多岐にわたっています。Amazonの動向による経済や政治の影響は米国では「Amazon効果」と呼ばれているほどです。AmazonはすでにEC企業ではなく、ビッグデータとAIを軸にしたテクノロジー企業です。

Amazon GoでAmazonは、ECで培ったノウハウを注入し、同時にこのAmazon Goで得たデータを新たな分野で活用しようとしています。AmazonはこれまでもビッグデータとAIを組み合わせて顧客の経験価値を高めてきました。ここ近年のテクノロジーの発達に伴い、消費者がサービスに期待する経験価値はかつてないほど高まっています。例えば、高性能なスマホでネットショッピングをすることに慣れていると、店頭で商品を探すのが面倒だったり、商品レビューが見られなくて不満に感じたりしたことがないでしょうか。Amazon Goではそのようなテクノロジーに日常的に慣れている消費者に対してリアル店舗で高いエクスペリエンスを提供することで優位に立とうとしています。

また、今までのリアル店舗の課題の一つが顧客分析です。Amazonはこの分野では非常に高い優位性を持っています。ネットショップの場合、どのユーザーがどの商品を何秒閲覧して、最終的にどの商品を購入したのか動向の情報全てが収集でき、その情報を蓄積して分析することにより今後のユーザーの動向が高い精度で予測できます。Amazonではこれを0.1人セグメントと呼んでおり、一人の人間のその瞬間ごとのニーズまでも絞り込むことを目標としています。Amazon Goでは、どのユーザーがどれくらい滞在したか、どのコーナーを見たか、どの商品を手にとってまた棚に戻したか、最終的にどの商品を購入したのか、全てのデータを収集して分析を行います。これによって実際に売れた商品以外の商品動向の分析も可能になり、高い精度でお客様へのリコメンドを行うことができます。

Amazon Goから読み解く今後のリアル店舗のスタンダードは次の2点に集約することができます。一つは「高い経験価値を提供できること」そしてもう一つは「深い顧客分析ができること」です。

前述の通り、高性能なスマホに慣れ親しんだ現代の消費者は「使いやすく」「楽しく」「わかりやすい」体験を求めており、リアル店舗においても同じ価値を要求しています。それに呼応するように様々な業態ではリアル店舗でのデジタルエクスペリエンスを導入し、店頭での上質で楽しい経験価値を提供しています。一方で、心理的価値に重点をおいてきたはずのダイヤモンド業界では、この分野で大きく遅れていると言わざるを得ません。取扱ブランドのネームバリューに頼りきっていている店や、価格を少しでも下げることだけがお客様への貢献と信じている人が今でも非常に多いのが現状です。

また、購入サイクルの長いジュエリー業界では顧客分析も他業種に比べ決して高い水準にあるとは言えません。例えば、あなたがスーパーバイザーであれば売上のデータはチェックしていると思います。しかし、例えばEカラーを購入したお客様がDカラーと迷ったのかFカラーと迷ったのかは把握しているでしょうか。VS1を購入したお客様がVVS2と迷ったのかVS2と迷ったのかは把握していますか。このデータの蓄積と分析は本来であれば仕入れ計画に非常に大きな意味を持つはずです。

上記の課題を解決するのは、テクノロジーしかありません。テクノロジーはかつてない経験価値を生み出し、ダイヤモンド販売の現状を一変させるパワーを持っています。特にAIは今までの課題を飛躍的に大きく解決するものになります。望むかどうかに関係なく、この流れは世界的に大きな流れとなって押し寄せてきます。ダイヤモンド生産現場、グレーディング、そして小売の分野で既に広く活用され始めているからです。

先月、世界で初となる人工知能(AI)によるダイヤモンド鑑定がイスラエルでスタートしました。前回も簡単に触れましたが、これは単に業務の効率化などの意味、人間が機械に置き換わるというものを遥かに超えた意味を持っています。現在、世界中のダイヤモンド産業の現場でAIテクノロジーが活用されてきており、これは今後起こる革命の序章にすぎません。AIは正確性、再現性だけではなく、透明性と高い経験価値、高度な情報分析を実現するでしょう。今までの例えば鑑定機関技術と大きく根本的に異なるのは、今までは閉じた技術だった鑑定機関での現場の技術が、そのまま店頭でのプレゼンテーションへと転化可能になるという点です。しかも魅力的な経験としてです。

人工知能によるダイヤモンドグレーディングと、小売店での活用に関してはまた次号掘り下げて説明させていただきます。
■連載コラム No39

新たな購買体験として、AIによるダイヤモンド鑑定がスタート

先月、「第29回国際宝飾展」が東京ビッグサイトで開催され、私も出展者の一人として4日間会場で来場者の方々とお話をさせていただきましたが、ダイヤモンドを差別化し特別な価値を与える『何か』を探している人が増えているように感じました。昨今のダイヤモンドの価格競争は熾烈を極めており、その競争から脱却する方法を模索している方が多いのではないでしょうか。

 ところで、消費者の目線で見たときに価格が安いということは本当に最重要事項なのでしょうか。もちろん価格は購買決定の大きな要因の一つですが、高級品においては常に最重要事項ではありません。消費者が買い物をする際に最も気になるのは、それが少しでも安いかではなく、商品が対価に見合うかどうかです。特に買い直しがきかない高額品においては、安物買いの銭失いを恐れます。消費者は間違いない買い物をしたいと思っていますが、どの店に行っても「これが、最も美しくて間違いないですよ」とお勧めします。お客様自身が価格との整合性を見極めることは難しいですから、極論を言えば消費者のダイヤモンド購入の大部分は、どのお店のプレゼンテーションが一番信用できるかの判断ということになるでしょう。例えば信頼性の薄い店で30万円を支払うよりも、より信頼できる店で35万を支払う方がお客様にとっては意味があるということです。

 当然店頭のダイヤモンドには4Cグレードが付いていますから、それが価値の担保だと言う方もいると思います。しかし、様々なカテゴリーの商品でデジタル購買体験が提供されている現代において、4Cが同じであれば全て同じ価値ですよという説明は現代の消費者には受け入れ難いものです。4Cは依然として価値の目安であることに変わりはありませんが、最も重要なのはそれをどう消費者に伝えるか、つまりプレゼンテーションです。

 異業種では様々な商品の販売現場でデジタル・プレゼンテーションが導入されています。ワインショップ、アパレル、カーディーラー、コスメティックの売場などでデジタル体験が用意されており、ただの商品のスペックと価格表示だけではなく、デジタルインフォメーションによって商品そのもの、そしてそのバックグラウンドをより深く理解することが可能です。現物の商品とデジタル情報が組み合わさることで購買体験はよりリッチなものになり、現代の消費者はこのような体験を通して商品とお店への信頼性を構築します。特に高額な商品ほど、価格に対して顧客エンゲージメントの重要度は増します。
 ダイヤモンドの購入も全く同じです。実際にデジタルツールを使用したダイヤモンドのプレゼンテーションは日本国内外の店頭において既に広く活用されており、導入店舗では販売されている方自身がその効果を劇的に実感しています。そして、今年中には人の目に頼らないAIによるダイヤモンド鑑定もスタートします。AIは4Cグレードへの消費者の信頼感を更に強化します。

 ところで、シリコンバレーではピザが無人の自動運転(AI)で配達されていることをご存知でしたか?「自動運転で配達されるなんて危険だ!」と思われるかもしれませんが、シリコンバレーの人々は人間のドライバーの方がよほど危険だと真顔で言います。人は様々な要因で容易に集中力を切らしますが、AIは運転中にスマホを見たり、体調を崩したり、今夜の食事に悩んだりしません。全てのAI は常に集中力を切らさず運転することが可能です。Iの活用は今後、どの業界でも信頼性と同義になって行くでしょう。

 AIによるダイヤモンドグレードは、単なる4Cの表示ではなく、新たな購買体験としての消費者へのプレゼンテーションになります。今までは無機質に紙に書かれた4Cを説明していましたが、今後は全ての販売員が、ディスプレイに表示された実際のダイヤモンドを見ながら、そのグレードの根拠を特別なツールで説明することができます。消費者はディスプレイに触れ、そのダイヤモンドのグレードを体験として実感することにより、安心して購入することが可能になります。今まで記号だった4Cは、テクノロジーにより感動的な購買体験へと変わります。そして、我々販売する側をもダイヤモンドの専門性へと原
点回帰させるものにもなるでしょう。

 今年は日本の宝飾業界が新しいステージへと移行する年になります。新しい情報を提供させていただくことで、皆様のお手伝いができれば幸いです。
■連載コラム No38

What’s a computer? 新しいステージへの移行

新年あけましておめでとうございます。
 2018年が皆様にとって希望に満ちたものでありますように、心から祈念しております。

 昨年は特にAIというワードが世の中の大きな注目を集めましたが、2018年はAI競争が更に加速します。人工知能を始めとした技術発展のスピードはかつてなく高速化しており、ダイヤモンド業界においてもそれは決して例外ではありません。

 昨年末から流れているA p p l e 、iPad Proの新CMをご覧になった方も多いと思います。簡単に内容を説明すると、ある少年がiPadをフル活用して友達とコミュニケーションを取ったり、街で見かけた虫たちの記録を作ったりしています。デスクの前ではなく、バスの中や、カフェ、庭に寝そべりながらです。それを見た隣の家の女性がコンピュータで何をしているのか尋ねますが、少年は「What’s a computer?(コンピュータって何?)」と答える、というものです。

 このCMを見たとき、ある意味衝撃的で、そしてある意味スッキリとした感覚を得ました。これは今後の若者にとって、デジタルツールというものは全く特別なものではなく、そこにあって当たり前のもので、日常生活のどの部分にも溶け込んでいくものであるということを端的に表現しています。デジタルと現実の境界はより希薄になっていき、その双方で説得力のある価値の提供が今後更に求められるでしょう。

 スッキリしたという表現を使用したのは、今後のビジネスの方向性に確信的な答えを得たと思えたからです。現在、Appleを始めとした世界中のテクノロジー企業は日常の様々な分野でのデジタルの活用を目指しています。人々は今後、より『コンピュータ』の存在を意識することなく、かつてなく『コンピュータ』の恩恵にあずかる生活へと突入します。そのライフスタイルには賛否があるでしょうが、デジタルの存在は全ての業界にとってより自然なものへとなっていきます。ダイヤモンド業界もAIとデジタルツールの導入は必要不可欠なものになりますが、これは今後の消費者の動向を見ると非常に明白です。

 A(I Artificial Intelligence - 人工知能)というと非常に大げさに聞こえますが、シンプルにいうと人間の判断を機械が代わりにするというものです。暗くなると自動的に点灯するライトも、初歩的なAIのひとつです。人間との違いは、人間は暗いと判断する基準が気分によって変わりますが、機械は常に一定の暗さで点灯を決定します。

 この機械による判断が高度に発達すると、膨大な判断を脳内で行っている人間に近いことが可能になります。(人間の行動は連続する大量の判断の結果で、フローチャートで説明することが可能です。)人間との大きな違いは自動ライト同様、常に一定の判断基準を持つ事です。

 今後ダイヤモンドの流通と販売のプロセスにおいてAIは大きなサポートを提供することになります。AIによる4Cの自動グレーディングを含む新たなダイヤモンドの評価はすぐ目前に迫っており、誤差の極めて少ない一定のグレード、すなわち信頼性を提供することが可能になります。現代の消費者にとっては、AIによる判断基準はかつてない信頼性の担保になるでしょう。また、技術が進めばお客様に最適なデザインの提案をAIがサポートすることも可能になるでしょうし、また感覚的だった在庫計画もAIが計算によって計画することができるでしょう。

 誤解されがちですが、AIやデジタルの発展はビジネスをWebに移すことを意味しません。店頭で、実際の商品、生身の販売員とデジタルの融合による新しい購買体験を提供することによって、デジタルネイティブ世代の消費者は必ずそこに価値を見出すようになります。AIダイヤモンドグレーディングは間もなく利用可能になりますが、そのご案内は改めてここでさせて頂きたいと思います。

 今後のデジタルは、特別なものではなく、自然にそこにあるものになります。『What’s a computer?』

 2018年はデジタルの活用によってダイヤモンド業界が新しいステージに移行できる年になると確信しています。皆様と一緒に、新しいダイヤモンド産業を築く年とできれば幸いです。
■連載コラム No37

未来はこっち、早く慣れた方が、絶対いい

 11月にAppleから新型のiPhone X(テン)が発売されましたが、核となる機能にイスラエルテクノロジーが使用されているのをご存知ですか?iPhone XはiPhoneの発売から10年目という記念すべきモデルで、過去10年間にAppleが築き上げたスマートフォンを再構築するものです。全面ディスプレイ実現のためにiPhoneの特徴とも言えるホームボタンと指紋認証を廃止し、その代わりにFace IDと呼ばれる新しい認証技術を採用しました。3万以上もの目に見えない赤外線ドットを顔に投射し、3Dで使用者の顔を正確に認識する技術で、それによってロック解除や支払いの認証が可能です。

 これはイスラエルに本社を置くPrimeSense社の3D空間認識センサー技術で、2013年にAppleが同社を3億6千万ドル(約400億円)で買収しています。その後4年もの沈黙を経て、このイスラエルテクノロジーでAppleはスマートフォンの新しい未来を作ろうとしています。

 ただ実際は、慣れ親しんだホームボタンとの決別、それに伴う操作体系の変化、指紋認証がなくなることへの不安など、過去と大きく変わるプロダクトに関しては大きな賛否がありますし、切り替えに二の足を踏む人も多いと思います。スマホはほとんどの方にとって生活必需品であり、毎日触れるものですので、今後の生活の快適性を左右する問題です。事実、私も情報を色々調べてメリットとデメリットを比較したり、発売日に入手したマニアのレビューを見たりしました。しかし、見聞きしただけでは本質はわかりません。最終的には「実際に自分で使ってみないと絶対にわからない」ということと「未来はこっちだから、早く慣れておいた方が絶対にいい」と考え、購入に至りました。

 これは、新しいテクノロジーの理想的な導入プロセスだと思います。未知の技術に触れたとき、ある人は理解を超えているので拒否し、ある人は納得いくまで調べて100%クリアになってから導入しようとします。しかし、全く新しいものですから、使わずして納得行く答えを得ることは不可能です。ある程度情報を入れて、良いと思ったらあとは実際に試す、これが理想的です。

 私がこのコラムを書き始めたのはちょうど3年前でした。その頃はまだスマホを持っていなかった方も、この3年の間に購入されていると思います。今では、スマホを使ってインターネット検索はもちろん、メール、チャット、SNS、乗換検索、新聞閲覧、音楽プレイヤーや、中には名刺管理やタクシー配車、英語学習やデジタルチケットのサービスを利用されている方もいるのではないでしょうか。

 では購入当時、スマホ購入の決定前にそこまでの利用を想定していましたか?購入した後の利便性を隅から隅まで調べて、どのアプリをインストールして使うか事前に全て決めて、利用方法まで完全に納得してからスマホを購入された方はおそらくいないでしょう。ほぼ全ての方が、少し調べて『便利そうだから』という動機で購入し、その後に実際に試行錯誤し触っていく中で新しいアプリを発見したり、便利な利用方法に出会ってきたはずです。

 スマホに限らず、新しいテクノロジーどれも同じで、今までの生活やビジネスには全く存在していなかった未知のものですから、実際に自身で試して初めて理解することが可能なものだと私は思います。そして、実際の経験や試行錯誤による熟練度が、後々に大きな差になります。スマホもそうですが、5年以上使用している人と1年しか使用していない人では活用方法の幅が全く違うということは皆さんも実感されていると思います。

 ダイヤモンド業界においても、テクノロジーの開発は加速度的に進んでいきます。今年早い段階から新しいテクノロジーを導入している企業では実際に、通常の活用だけではなく、既に次のステップのアイデアを考えるステージに来ています。新しいアイデアは実際に使って初めてわかるものです。迷っている時間があったら実際に試してみたほうがよっぽど早いのです。テクノロジーは常に進化し変化し続けるものです。重要なのはパーフェクトな導入などではなく、いかに早く触れ、理解し、対応するか。テクノロジーと時代の流れに乗ることが最も大切なのです。「迷わず行けよ。行けばわかるさ。」iPhone Xを購入しての感想ですか?もちろん最高です。
■連載コラボ No36

接客ノウハウを進化させた先に見えてくるデジタルツールの活用法

先月25日より三日間、パシフィコ横浜にて秋のI J T が開催されましたが、Sarine Technologiesは初めて秋のIJTに出展し、最新のダイヤモンド販売促進デジタルツールをご紹介しました。

 今回S a r i n e 社が紹介したのは、“Sarine Profile”(サリネ・プロファイル)というSarine社の様々なテクノロジーを使用したダイヤモンドの情報を集約する統合テクノロジーです。以前も何度かご説明していますが、このSarineProfileとは、ダイヤモンドの輝きを科学的に分析し評価したデータや、特殊な機器でスキャンされた360°全方位のダイヤモンドの観察と拡大可能な詳細なデータ、H&C、プロポーションデータなどを含むオンライン鑑定書のようなもので、デザインや内容などもそれぞれのブランドに合わせたフルカスタマイズが可能となっています。

 今回、宝飾業界の方々のデジタルツールに対してのリアクションが、以前とは大きく異なっていたのが非常に印象的でした。これは、個別の情報が一つのプラットフォームに統合されることによって、より導入に現実味を感じるようになったこともあると思いますが、基本的には数年前に比べて世の中全体がデジタルツールの活用に対して積極的になってきていることにあると思います。

 数年前であれば、ダイヤモンドはデジタルとは相入れない感覚的な商品だと思っていた人も多かったでしょう。また、現実離れしていてどこか遠い未来の話のように感じていた人も多くいたように思います。しかし、今回は多くの方がご自身のビジネスに照らし合わせて可能性を探っていたように見受けられました。

 これは恐らく私の感覚的な感想ではなく、今後この流れが大きく加速していくことを示しているのだと思います。最終的には、ダイヤモンドの販売にデジタルツールがいかに効果的かということを、時間の差はあっても『ほぼ全ての人』が理解するようになるということです。ダイヤモンドは消費者から見て極めて価値判断の難しい商品です。一般的な商品、例えばインテリアや服飾、時計などであればお客様がその商品を見て、いくらぐらいなのか、少なくとも高そうか安そうかという感覚的な予想ができますが、ダイヤモンドは違います。

 お客様にとって感覚的な価値判断の難しい商品販売において、4Cの情報だけではなくしっかり実物の価値をご納得いただくのは、非常に難しいと同時にダイヤモンドの販売では非常に重要です。したがって、この部分で接客の差別化が実現すれば、よりダイヤモンドの販売は強化されるはずです。当然、紙の鑑定書の説明だけで、実物の詳細な説明をしない(できない)店舗ではお客様はダイヤモンドを購入しづらくなり、デジタルツールによる個々のダイヤモンドの詳細な説明が可能な店で納得してダイヤモンドを購入するようになるでしょう。

 また、Sarine Profileはオンラインデータなので、下見のお客様にご自宅でご覧いただけるリンクURLをメール等でお送りすることができます。通常、下見のお客様には名刺の裏に4Cやプライスを書いて渡されるお店が多いと思いますが、名刺の裏のメモと、自分のスマホやタブレットで自由に閲覧できるデジタルデータと、どちらが後で検討しやすいか、言うまでもないと思います。

 ここで重要なことは、デジタルツールは販売スタッフの代わりにダイヤモンドをお客様に説明してくれる魔法のツールではないと言うことです。ダイヤモンドの質はもちろん、販売スタッフのスキルがこのデジタルツール接客にマッチすることによって、最大限の効果を発揮します。その方法は恐らく、商品、ブランド、元々の接客スタイルによって大きく変わるでしょう。デジタルツールを使用すると言うことは、進化するツールと、そのツールの効果を引き出す接客ノウハウを常に進化させ積み重ねていくと言うことでもあり、この部分の差は非常に大きなものになります。 今、日本国内でも数々のジュエリー企業がデジタルツールを採用し始めています。このシステムが一般的になる日も、もうすぐかもしれません。
■連載コラム No 35

不可能と言われた新しい購買体験と商品に対する納得感の提供

 ファストファッション『GU』の最大面積店舗が先月15日に横浜港北にオープンしました。その最新店舗はテクノロジーを駆使したファッションデジタルストアになっています。

 まず目を引くのは店舗に設置された大きなミラーで、商品をかざすとその商品を着用したモデルや一般人のコーディネート、購入者レビューなどがデジタル表示されるようになっています。また、カートにはタブレットのようなモニタが取り付けられており、商品をセンサーにかざすとサイズ、カラーバリエーション等その商品の詳細情報、コーディネートやレビューなどが表示されるようになっています。お客様は商品を手に取り、パッと見ただけではわからない商品の特徴や購入した後のコーディネートを具体的にイメージしながら買い物を楽しむことができます。

 GUといえばユニクロの弟ブランドで、徹底したコスト管理で信じられないくらいの低価格を実現しているアパレルブランドです。例えば、生産コストの管理はもちろん、店頭ではユニクロと比べても細いハンガーを使用することで面積あたりの品数を増やすなど非常に細かいところまで徹底されています。そのGUが、恐らくかなり大きな開発費や設備投資、そして手間をかけて商品そのもの以外のところにコストを割いたのか、それは現代の顧客に対応するために他なりません。

 つまり、実店舗とデジタルコンテンツの融合による新しい購買体験の提供と、商品に対する納得感の提供です。アパレル業界ではネット通販が非常に大きな伸びを見せており、市場規模はこの4年間で2倍の630億円となっています。(ちなみに、アパレル業界もジュエリー同様、つい数年前まではネット販売は成功不可能と言われていたことを付け加えておきます。

 現代の顧客はネットでの情報収集、デジタルコンテンツとして商品を検討することに慣れています。ネット通販であれば色違い、サイズもすぐに検索できますし、ZOZO TOWNなどのサイトでは詳細な写真から様々なコーディネート例まで見られます。また実際に購入した人のレビューも見ることができます。一方で実店舗では商品に触れて質感を確認したりサイズ感を確かめたりすることができるというメリットがあります。その利点を融合させ、デジタルに慣れた現代の顧客に実店舗ならではの新しい購買体験を提供することが狙いです。

 現代のお客様は日常的にデジタルテクノロジーによるプレゼンテーションに触れています。この世代のお客様が今後メインターゲットになっていく全ての業界は、何らかの形でデジタル対応していく必要があると思いますが、これはジュエリー業界でも例外ではありません。例えばジュエリー業界でも今ではほぼ全てのブランド、ショップが独自のWebサイトを持っていると思いますが、10年前には持っていないブランドやショップも少なくなかったのではなかったでしょうか。当時は、「ホームページはあった方が良い」などと言われていましたが、今では選択の余地なく必要不可欠なものであることに異論のある方はいないでしょう。

 Webサイトは集客に非常に有効な媒体ですが、Webサイトを開設したからといってその瞬間に集客が増えるものではありません。そのツールを使ってどう見込み客にリーチするのか、その試行錯誤を積み重ねていった人だけが現在集客に成功しているのです。他社が成功したのを見たら自分もWebサイトを作ればいいと思って後から開設しても、自動的に集客できるわけではないのです。10年前にWebサイトを持っていた人と、今年開設した人の差は非常に大きく、簡単には埋められるものではありません。

 デジタルテクノロジーツールも同様です。更に10年後に何が起こっているかを正確に予測することは不可能ですが、現在の延長線上にあるテクノロジーツールは必ず必要不可欠なものになります。その時、勝敗を分けるのは、試行錯誤とノウハウの蓄積です。つまり、いかに早くそこに手を出すかが今後の10年を占う一つのポイントになっていくことでしょう。

 今月25日から横浜で開催されるIJTにはSarineのテクノロジーツールを出展します。今後のテクノロジー時代の片鱗を実際にそこで体験していただき、今後の参考にしていただければ幸いです。
■連載コラム No 34

海外ではすでに小売店が導入する ダイヤモンドイメージングによる夢を売る商売

 前回、技術によって個々のダイヤモンドの価値をしっかり示すことが可能というお話をさせていただきました。今回はそれが具体的にどうゆうことなのか、ダイヤモンドの販売においてどれだけ革新的な事か、ご説明させていただきます。

 皆さんもスーパーでトマトを買うことがあると思います。スーパーで積んで売られている、同じ大きさ、同じ価格のトマトを購入する際に、皆さんは何も考えず手前のトマトをカゴに入れますか?きっとほとんどの方は、値段が同じでも注意深く比較し、少しでも美味しそうなものを選んでカゴに入れるでしょう。

 または、雑貨屋で木製のお皿を購入するところを想像してみてください。同じ形状に加工されている同じ価格のお皿ですが、恐らくほとんどの方は一つ一つ比較して、木目の入り方や色味を見ながら自分の好みに合うものを選ぼうとするでしょう。

 一方で、ダイヤモンドを店頭でお客様に販売するシーンを想像してみてください。お客様の目の前には0.50ct D VS1 3EXのダイヤモンドが置かれており、お客様はそのダイヤモンドに興味を持たれています。そのダイヤモンドのグレードをお客様に説明する際、ほとんどの店頭ではこう接客するでしょう。4Cの説明ボードをお客様にお見せし、それぞれのグレードがどこに位置するか説明します。そして、クラリティの内包物イメージ図がボードに描かれていれば、『VS1クラスですとこの程度の内包物があるダイヤモンドになります。肉眼ではほとんど目立たないので気になりませんよ』というような説明をすると思います。この接客の流れを読まれて違和感を感じる方はほとんどいらっしゃらないでしょう。

 しかし、皆様もご存知の通り100ピースのVS1のダイヤモンドが並んでいれば、全く同じ内包物を持つダイヤモンドは二つとありません。加えて、ダイヤモンドの内包物は『欠点』ではなく、個々のダイヤモンドが持つ『特徴』であり『個性』です。地球の奥深くで数十億年かけて成長したダイヤモンドが生み出した天然の証でもあります。また、お客様は何十万というお金を支払ってダイヤモンドという自然の奇跡の結晶を購入されようとしていますが、その目の前のダイヤモンドがどんな『個性』を持っているのかを、店頭で説明を受け、また接客の中で見せてもらうことはほとんどないのが現状です。

 前述のトマトや木皿ですら、ほとんどの人が真剣に個々の特徴を見極めて購入するのに、その千倍も二千倍も、場合によってはそれよりも高価なものを購入する際に見比べたり特徴を確認したりすることはできません。同じVS1でも見え方にはそれぞれ違いがあります。それなのに、ほとんどのお店では『VS1です』の一言で説明が終了しているのです。

 念のために申し上げますが、現状のダイヤモンド販売方法を批判しているわけでは全くありません。10倍のルーペを使用してお客様に見ていただくことは難しいですし、顕微鏡を設置していたとしても、販売員もお客様も慣れていないと意外と扱いが難しいものです。つまり、そのような個々の特徴をしっかりお客様に説明する接客は今までは不可能だったのです。

 しかし、昨日まで不可能だったことが突然、技術によって可能になることは珍しいことではありません。このダイヤモンドの説明も例外ではありません。今の技術では、ダイヤモンド一点一点を、最先端テクノロジーを使用した専用スキャナーでスキャンし、店頭でPCやタブレットなどを使用してお客様にしっかりとお見せすることが可能です。これはダイヤモンドイメージングと呼ばれる技術で、ダイヤモンドの表面の形状と内部の特徴がしっかり見えるよう高度にコントロールされた光源と高精細カメラを組み合わせることによって実現しています。ラウンドブリリアントの場合、1つのダイヤモンドに対して全角度から960枚もの画像を撮影し、それをコンピュータ処理によってシームレスな画像へと変換させます。それによってダイヤモンドがPCやタブレットのスクリーン上であたかも空中に浮かび上がっているように表示され、自由に触ってどの角度からでも観察することが可能です。もちろん、内包物など個々の特徴もしっかりと見ることができます。

 この技術を使用したダイヤモンドの接客を想像してみて下さい。お客様の目の前には先のケースと同様、0.50ct D VS1 3EXのダイヤモンドが置かれており、お客様はそのダイヤモンドに興味を持たれています。
製品タグにはQRコードがプリントされており、販売スタッフはタブレットを取り出してそのQRコードをスキャンします。すると瞬時に、その現物のダイヤモンドの3Dモデルがスクリーン上に表示されます。スクリーンをなぞると、ダイヤモンドはくるくると回転し、好きな位置を拡大して観察できます。販売スタッフは説明を続けます。「これは、この実際のダイヤモンドをスキャンしたものです。このダイヤモンドはVS1というグレードなので、ご覧の通りテーブルの端に内包物と呼ばれるこのような特徴があります。これは、数十億年という気の遠くなるような時間をかけて造られた天然のダイヤモンドが持つ個性で、同じものは二つと無いアイデンティティなんです。肉眼では見えませんが、自然が創り出した個性なので神秘的ですよね?」とお客様に内包物を示し、続けて「一口にVS1と言っても、100個あれば100個全部違います。大変高価なダイヤモンドですから、それぞれの特徴を必ずご確認いただいて、お買い求め下さい。」と説明します。

 未来のダイヤモンド販売のように見えるかもしれませんが、これは既に始まっていることです。海外では既に多くの小売店が導入しており、日本でもこの販売方法は店頭で導入され、お客様への信頼感と納得感を生み出すという成果を上げています。

 ダイヤモンドは夢を売る商品だから、テクノロジーで全てわかるようにする必要はない、という意見もあるかもしれません。確かに、夢や神秘とテクノロジーは相容れないイメージがあると思います。しかし、数十億年かけて造られた自然の痕跡をお客様にお見せすることこそ、神秘ではないでしょうか。また、数ミリというサイズのダイヤモンドが、いかに人間の技で精巧に美しくカットされているか、その一つ一つの面の美しさをお見せするのは夢を見せることと言えませんか?逆に、4Cの記号と価格だけでダイヤモンドを販売することは夢を売る商売と言えるでしょうか?

 この新しい、ダイヤモンドの接客に革新をもたらすテクノロジーは確実に、そして皆様の想像より早いスピードで既に浸透し始めています。テクノロジーの進歩スピードはときに想像をはるかに超えます。テクノロジーによって今後、特にブライダル市場でダイヤモンドの接客は大きく、そして確実に変化が起こると確信しています。
■連載コラム No 33
許していません。

 そのイスラエルで今年6月、IDE(イスラエルダイヤモンド取引所)が“ダイヤモンド・テック”の開設を発表しました。これはダイヤモンド関連技術の革新センターで、スタートアップへの拠点提供と資金援助を行うというものです。このダイヤモンド・テックはSarine -Technologies社と、国際的原石ブローカーのHenning(ヘニング)グループと連携しており、今後ダイヤモンド関連ハイテク技術をさらに発展させることを目的としています。

 具体的には、鑑定鑑別技術はもちろん、企業間取引のプラットフォームや、消費者に対してのセールスツール、マーケティング関連技術など、ダイヤモンドに関連するあらゆる技術開発が対象となっており、今後ダイヤモンド業界で劇的な変化が起こることが予想されます。

 ダイヤモンドを含む身飾品は最も古典的なビジネスの一つですが、そのダイヤモンドであっても、技術的な進歩の必要性に迫られているのです。ダイヤモンドの取引や販売の方法は今後もずっと変わらないと思われている方がほとんどだと思いますが、間違いなく今後数年で劇的に変化します。ダイヤモンドビジネスもIT業界の領域に入りつつあり、IT同様短いスパンで大きく変わる市場に対応する必要があるでしょう。

 Sarine Technologiesは今年、最先端のセールスツールを日本市場に導入し、ダイヤモンド購買体験の質を根底から変えました。今までしっかり説明できなかった個々のダイヤモンドの特徴やストーリーをデジタル技術によってクリアに示すこの技術は、今後さらに洗練され、ダイヤモンドの販売になくてはならないものになるでしょう。

 一方で、ダイヤモンドそのものは基本的には天然鉱物ですので、商品そのものの質がテクノロジーによって劇的に変化するわけではありません。実際、「商品そのものの価値ではない、ツールにコストをかけるのは、最終的にお客様に負担が行くだけで不誠実だ」とのご意見を頂戴したこともあります。しかし、高額な買い物であるダイヤモンドの接客において、個々のダイヤモンドの特徴をしっかり説明せず4Cと価格だけで素人である消費者に販売する方が不誠実ではないでしょうか。ダイヤモンドの個々の価値をしっかり示すことは誠実な販売には必要であり、それを実現できるのはテクノロジーを置いてありません。事実、導入以降このツールは大きな成果を上げているのです。

 今後ますます、ダイヤモンドへの技術介入は加速していきます。まさにその分水嶺に立っている我々は、いかに柔軟に変化できるかが今後の分かれ目になります。

 そのための最新情報は、今後もぜひお伝えできればと思います。
■連載 No32

市場を成長させる唯一の方法は、宝飾業界が本来得意とすること

 「IPA」という言葉をご存知でしょうか。

 IT用語ではありません。もちろん、ダイヤモンドやジュエリーに関係する言葉でもありません。お酒好きの方はピンときたかもしれませんが、実はこれはビールのスタイルを表す言葉です。“インディア・ペールエール”と言って、比較的高いアルコール度数、強いホップの香りと苦味を持つ独特の味わいのビールのスタイルです。元々は18世紀にイギリスからインドへ送るビールが痛まないよう防腐剤の役割を持つホップを大量に投入したのが由来と言われています。最近では日本でも非常に人気のあるスタイルのひとつで、決して珍しいものではありません。

 少し前まで大半の日本のビールはラガータイプという一種類のみで、どのメーカーのものも一律に同じ味のものでしたが、最近では様々なスタイルのビールを店頭で見かけることが多くなっています。

 ビール業界は非常に厳しい業界の一つです。バブル期に比べると現在のビール消費量は7割程度と言われています。かつてビールは飲んで当たり前、「飲まない」という選択肢がないような時代もありました。現在ではビールを飲まない若者も多く、ビール離れは深刻な問題になっています。

 また一方で非常に激しい低価格競争が繰り広げられてきたのもビール業界の特徴です。1990年代の後半から発泡酒の普及、2000年代に入ってからは第三のビールという新しいジャンルで低価格化が広がっており、場合によっては過度な値引きによって清涼飲料水よりも安く販売されているほどです。元々ラガースタイルのみだった日本では商品の差別化が難しく、業界全体がイメージ・低価格戦略に傾倒していたのです。

 そのような中、冒頭に書いたようにビール業界では新しい波が起きつつあります。小売店でビールの棚を見る機会があると思いますが、以前と比べていわゆるプレミアムビールと呼ばれる高価格帯ビールの販売面積が増えていることにお気づきになると思います。プレミアムビールは素材や製法にこだわったもので、価格も場合によっては第三のビールの3倍以上するものもあります。

 各社が熾烈な低価格競争を繰り広げていた状況の中、その3倍以上もの高額なプライスのビールが売れると誰が想像できたでしょうか?しかし現在では様々なスタイルの、異なる味わいのプレミアムビールが普通に販売されています。実際、国内ビール市場において2003年には3.5%だったプレミアムビールのシェアも2016年には15.3%まで伸びているのです。

 飲食店においては、通常の居酒屋スタイルだった店がビールにこだわったビアホール業態にリニューアルし、スタッフがそれぞれのビールの特徴や味わいをお客様にしっかり説明するように変えたところ、ビールの価格は以前より高くなったにも関わらず、客単価、売上共に増加、またリピート客も増加したというケースも増えてきています。

 加えて、そのような商品、店が増えることによって消費者の意識も変化し、「とりあえず」だったビールの常識が、好みのスタイルのものを選択し楽しむという新たなビール文化へ変わりつつあります。ますます消費者動向が多様化する時代に、各社が新たな価値を顧客に示せるかどうかに今後のビール業界の発展がかかっているのではないでしょうか。

 と、ここまで読まれて宝飾業界紙でなぜビールの話を?と疑問に思われていると思います。しかし、上記のビールをダイヤモンドに置き換えてみると共通点があることにお気づきになると思います。ポイントは「若者の◯◯離れ」「常識の消失」「品質の同一化による差別化の難しさ」「極端な低価格競争」です。

 ダイヤモンドはかつて、婚約指輪として贈って当たり前のもので、ほとんどの方が購入されていました。しかし若者の意識の変化により現在では婚約指輪を買わないという選択も当たり前のものになっています。

 加えて、3EX・H&Cの一般化によりどの商品も差別化が難しく、結果いかに安く商品を提供できるかの競争に完全に突入しています。一部の方は恐らく、他社や他店より低い価格で商品を提供できないとダイヤモンドは売れないと信じているのではないでしょうか。このような状況の中、今より高い金額でダイヤモンドを販売することはなかなか想像し難いかもしれません。

 しかし、ダイヤモンドも素材にしっかりとしたこだわりを持ち、店頭でその説明をしっかりとすることによって、たとえ他店より高いプライスであったとしても販売することは可能です。ビールとダイヤモンドでは単価が違うので関係ないと思うかもしれませんが、本質は同じです。少なくとも私は、素材へのこだわりと丁寧な接客で販売単価を上げている宝飾店を幾つも知っています。

 本当に価値のある商品をお客様にお伝えし、適正な利益を得て販売していくこと、これが新たなダイヤモンドの消費者文化を創造し、市場を成長させる唯一の方法ではないでしょうか。でなければ、低価格競争で疲弊し消耗していくしかありません。ビール業界同様、お客様が多様化する時代に各社がいかに本質的なダイヤモンドの価値をお客様に示していけるのかが今後の市場の活性化に関わっているのです。ビールですら、素材のこだわりと価値の説明によって売上を増やしているのですから、その販売方法を本来得意とするジュエリー業界ができないわけがありません。

 ダイヤモンドへのこだわりと価値の説明。それには『素材』と『ツール』という二つの要素が必要不可欠です。それが接客としっかり組み合わさることによって、初めて大きなパフォーマンスを発揮することが可能です。素材の差別化、そしてテクノロジー・ツールによる丁寧で魅了的な接客は、現在ではどちらも可能なのです。

 次回以降、素材とツールについてご説明させていただきたいと思います。
■連載 No31

目を瞑る時間が長いほど、目を開けた時の眩しさは大きい

 前回、A(I 人工知能)に関して少し触れましたので今回はもう少し詳しく今後の可能性に関して話したいと思います。

 AIというと、SF映画に出てくるロボットのようなものを想像されると思いますが、実は本コラムを読んでおられる方の多くは既にAIを所有、利用されています。現在ほとんどのスマートフォンにはパーソナルアシスタント機能が搭載されていますが、それがまさにAIです。日本国内でも1億を超えるAIが日々働いていることになります。

 最近ではGoogleやAmazon等の大手各社がAIスピーカーの開発に力を入れていますが、これは画面を排除した完全な音声認識によるアシスタントで、ニュースの検索からタクシーの手配、ピザの配達依頼まで話しかけるだけでアシスタントが行うことが可能です。

 朝の目覚ましも言うだけでセットできますし、買い忘れた日用品もスピーカーに言えばすぐに配達されます。
 最新の音声認識技術は誤認率5.5%と人と近いレベルにまで達しており(人間の誤認率は約5.1%)、近い将来ほぼストレスなくAIと会話をすることが可能になります。

 AIの特徴は膨大なサンプルを得ることによって機械学習を行い、精度を高めていくというものです。多くのデータが集約されればされるほど、情報処理及び認識技術が向上していきます。AI業界には「生命は10億の例から産まれる」という標語がありますが、データが蓄積されればされるほど、人間よりも精度が高く早い判断が可能になってきます。

 ダイヤモンドの世界にも、今後AIは大きな影響をもたらします。ダイヤモンドの世界で反復学習と経験値が重要な主な分野は、鑑別鑑定でしょう。現在ダイヤモンド鑑定のオートメーション化が様々な機関で研究されており、実際いくつかの機関では既にマシンによる鑑定がセカンドオピニオン的に採用されています。

 今後AIがダイヤモンド鑑定システムに採用されると、段階的ではありますが鑑定は全て機械化され、最終的には人間の判断が必要なくなる可能性があります。

 熟練のダイヤモンド鑑定士は、例えばクラリティであれば自分が過去に検査した何千何万というダイヤモンドの内包物と、目の前のダイヤモンドを脳内で比較し、最も適切と思われるグレードを感覚的に決定します。

 AIによるクラリティグレードも基本的には人間の鑑定士と同じような仕組みになると考えられます。膨大なダイヤモンドの画像とクラリティグレードのデータをAIにインプットしておきます。新しいダイヤモンドを画像認識した際にどのパターンに最も近いかを瞬時に判断し、適正なグレードを決定します。そして、日々鑑定するダイヤモンドそのもの自体も新たなデータサンプルとして蓄積し、比較サンプルが日々増加していくことにより日進的に精度が向上していきます。

 AIの利点は、「一度学習したことは正確かつ高速に疲れずに反復できる」ことと「複数のマシンがインターネットを介してナレッジを瞬時に共有できる」ことです。

 夕方で目が疲れることも、寝不足で調子が悪くなることもなく、常に最高の精度で安定した結果を出し続けます。また、世界中全てのマシンがナレッジを共有することにより、マシンによる個体差や地域による誤差もなく、場所がどこであれ常に最大の熟練度での鑑定が可能になります。例えばある日1台マシンを新たに投入したとしても、その瞬間から最高の熟練度を持つグレーダーとして機能することになります。

 例えば人間のグレーダーであれば1日に一人が検査できるのは200pcsほどかもしれません。その場合人間のグレーダーが蓄積できる経験値は1日200パターンということになりますが、1日200pcsを検査するマシンが世界に100台存在した場合、1日あたり2万パターンのサンプルを蓄積できるということになり、人間には到底真似できない蓄積量になります。

 AIが発達することによって、様々な分野で人間よりも精度の高い処理が可能になっていきます。しかしこれは決して人間の領域が侵されているわけではありません。駅に自動改札が導入されたことによって駅員の業務効率化と乗客の利便性向上が進んだのと同様、大局的に見れば全体的に業界全体の健全化に大きく貢献するはずです。

 問題は、その大きな時流の中で自分が今どこに位置しているのかを正確に把握することです。抗おうとも技術は必ず進歩します。目をつぶっている時間が長ければ長いほど、目を開ける必要が生じた際には眩しさを大きく感じるでしょうし、目が慣れるのにも時間がかかります。

 上記はダイヤモンド鑑定の限られた一分野を例にしましたが、ダイヤモンドの販売においても新技術は日々投入され、大きな成果を上げています。ここ日本においても、です。今後、情報技術の採用を抜きにして戦略を考えることは難しくなってきます。人間の感性が活きる部分とテクノロジーの精度が必要な部分の見極めを日々行い、最適な形でビジネスに取り入れることが今後の大きな分かれ目になっていくでしょう。
■連載 No30

消費者から見た我々は、100年前の宝石店に見える

つい先日、Webプロモーション会社と打ち合わせをした時のことです。担当者は3月末まで官公庁関連の仕事で忙しく、やっと落ち着いてきたところとのこと。期末の予算消化のためにだいぶ先の計画の企画書と見積もりを提出するのだそうです。「ARを使った企画を東京オリンピックの2020年に実施するので企画書出すように言われていたんですが、2020年にARがどんな状況かわかりませんよね。」と笑っていたのが印象的でした。

来年のことを言うと鬼が笑うと言いますが、さすがに2020年のことは予測が難しいでしょう。ところで、2020年とは何年後でしょうか?当然みなさん3年後と答えると思います。ですが、2020年は実は14年後なのです。

 テクノロジーの進歩スピードは加速度的に進んでおり、私たちが予想するスピードを遥かに超えています。テクノロジーの成長は指数関数的に上昇すると言われていますが、現在パラダイムシフトの起こる率は10年毎に2倍、IT能力の増加は毎年2倍の速度となっています。ですので、パラダイムシフトは過去の6年分、IT能力は過去14年分に相当する進化が2020年までに起こるということになります。

 なので、2020年を予測するとは14年後を予測するのと同じことです。

 ちなみに初代iPhoneが発売されたのが10年前の2007年ですが、それまではスマートフォンという名前も概念も存在していませんでした。その当時に今の2017年の姿を想像できたでしょうか?それ以前の10年間(1998年〜2007年)と比較しても、この10年間(2008年〜2017年)は劇的な進歩を遂げていると思いませんか。

 もっとも初期の道具である石斧は、100万年以上もほとんど発達がなかったと言います。また江戸時代の農耕具が10年に一度劇的にバージョンアップすることもありませんでした。一方でスマートフォンが世に出てからの10年間に我々が体験して来た技術革新は10や20ではないはずです。そして、この数年で誕生したその革新的な技術のほとんどが、今や誰にとってもごく当たり前のものとなっています。

 この進歩率で発展すると、21世紀中には2万年に相当する進化をするということになります。

 現在、どれほど技術は進歩しているかご存知でしょうか?
 2011年にはIBMの人工知能『ワトソン』が、アメリカのクイズ番組で人間のチャンピオンに圧勝していますし、2 0 1 5 年にはG o o g l eDeepMindによって開発されたコンピュータ『AlphaGo』が囲碁でプロ棋士に勝利しています。

 また医療の分野では、『3Dバイオプリンティング』という技術によって移植用内臓を3Dプリンタで作り出して移植するという技術があり、霊長類のテストでは既に成功しています。今後、ドナーを待たずして必要な臓器を一度に複数製造することが可能になるでしょう。

 上記のような例を見ると、テクノロジー業界の2020年の予測は難しいと感じる反面、我々のような、金属と鉱物を組み合わせた固体を扱う業界ではあまり関係のないことだと思う方もいらっしゃると思います。しかし、ここで間違いなく言えることは、たとえ我々は変化しなくても、消費者は常に進化する、ということです。

 我々が変化を拒み、旧態依然とした方法に留まり続けるなら、10年後の消費者から見た我々は100年前の宝石店に見える可能性があるということです。

 前回のコラムでも触れましたが、テクノロジーは業界の競争ルールを劇的に変化させます。

 ジュエリー業界は最も古く、そして最も変化の緩やかな業界の一つですので、ほとんど変化していないように見えるかもしれません。しかしこの業界も10年前と比較すると技術関連の話題が圧倒的に増えています。最近では海外で、カスタムデザインしたジュエリーの仕上がりイメージを3Dホログラムとして空中に表示させるディスプレイが開発されたとのニュースも目にしました。また、今年中にはダイヤモンドのグレーディングが技術的には完全オートメーション可能と言われています。

 そして、ダイヤモンドの販売にも革新的なテクノロジーが投入されています。欧米、オーストラリア、アジア各国ではダイヤモンド個々の詳細な情報をデジタルレポートとしてお客様に見せる接客が増えつつあります。クラウド上にあるデジタルデータにはどこからでもアクセスでき、タブレットなどでお客様にダイヤモンドの情報を詳細に見せることができます。3Dスキャンされたダイヤモンドはまるで空中に浮かんでいるように表示され、どの方向からでも内包物の状態や形状を自由に観察することができます。また、拡大して隅々までお客様が見ることが可能です。

 日本でも、この革新的な、ダイヤモンド販売を一変させる技術が先月から導入スタートしました。Sarine Technologiesは全国展開しているあるジュエリーチェーンをパートナーとして、この4月より全店導入を開始しました。店頭で既にその革新的なツール「Sarine-Profile™」を使って接客が行われております。

 完全にブランドとしてカスタマイズされたデザインのデジタルレポートは、ブランドに対するお客様の信用度を一層高め、美しくデジタル表示される個々のダイヤモンドの忠実な外観や詳細は、お客様の購入意思決定を後押しするものになります。

 先月の日本スタート以降既に多くの消費者が、この革新的な技術と、新しい接客に触れています。現代の消費者は新しい技術へすぐに慣れ、そしてそれはすぐに当たり前のものとなっていきます。宝飾業界において今後この傾向は更に進んでいくでしょう。

 加速度的に進むテクノロジーに対して、2020年を正しく予測することは誰にとっても簡単なことではありません。しかし、現在目の前にあるテクノロジーに触れ、そして理解することは誰にでもきます。そして、そのテクノロジーの延長線上に2020年も2025年も存在しています。今や、全ての業界にとってテクノロジーは無関係ではありません。2020年に向けて、ジュエリー業界も変化を求められているのです。
■連載 No29

世界で変わる競争ルールから、次世代ビジネスをイメージできるはず

2月末から3月頭にかけて、恒例の香港ジュエリーショーが開催されましたが、皆様の中で訪れた方も多かったのではないかと思います。特に今回は顕著でしたが、ジュエリー業界も、静かではありますが大きな変化が始まっているのにお気づきでしょうか。

香港ショーの話の前に、先月は非常に興味深いニュースがあったのでご紹介します。自動車業界の話です。ですが、登場人物は自動車メーカーでも部品メーカーでもありません。半導体メーカー最大手のインテル社が、イスラエルの運転支援システム開発会社であるモービルアイを150億ドル(約1兆7205億円)で買収するというものです。この金額はイスラエル企業の買収額としては過去最高額です。モービルアイの提供するテクノロジーは先進運転システムと呼ばれる種類のもので、事故回避や自動運転に活用されます。

今まで、自動車メーカーにとってブランドのバリューを高めるものは運動性能、乗り心地などの快適性、燃費性能の追求でした。それがデザインとマッチしていれば市場に受け入れられ、売り上げが期待できます。そしてそれはメーカーの内部努力によって可能でした。しかし技術は成熟し、現在ではどこのメーカーでも一定以上の、消費者を満足させる高品質な自動車を製造することができます。結果、高品質(に見える)自動車を他社より安く販売することに各社注力してきたのです。

しかし、近年ではテクノロジーの進化と技術革新によって競争ルールは変化し、戦略方向性は一気に変化しました。車載エレクトロニクスの発展はここ数年めざましく、技術開発という本来の自動車メーカーの得意領域から外れる部分もカバーしなくてはなりません。そのためエレクトロニクス・IT企業の参入が自動車業界には相次いでおり、今回の買収劇もインテルがこの市場の今後の拡大を見込んだものと言われています。インテルは今後、自動運転技術では世界最高レベルを持つと言われるモービルアイの技術を使い、この分野での覇権を取ろうとしています。

この構造、ジュエリー業界に共通するものがあると思いませんか?かつては、品質や着け心地、そしてデザインに優位性があれば売り上げは見込めたかもしれません。
しかし、現在では製品のクオリティは総じて高く、ダイヤモンドに関して言えば、かつては希少な最高品質であったトリプル・エクセレント、H&Cが市場には溢れています。結果、自社製品の優位性を示すことが非常に難しく、価格によって差別化するしかない状況を生み出しています。

しかし、自動車業界同様、ジュエリー業界にもテクノロジーによる競争ルールの変化が生じています。香港ショーではそのコントラストが浮き彫りになりました。ルースをブース一面に並べて価格交渉をしている業者が軒を連ねる中で、注目を集めていたのは数々のテクノロジー系の企業でした。例えばそれは最先端のダイヤモンド検査システムであり、例えばB2Bのオンライントレードを運営するサイトでした。そしてダイヤモンドの企業間取引のみならず消費者への販売方法を一変させるシステムを紹介するブースでした。自動車業界同様、この分野は既存ジュエリー企業の得意領域ではありません。しかし、成熟した産業を次のステージに引き上げるものはテクノロジーを置いて他にはありません。

ある日突然、インテルのような今まで全くジュエリー業界に関係のなかったIT企業が参入し、価格競争をしている大多数の既存企業の横で市場の大半を持っていく。その可能性を否定できるでしょうか。否定できないのであれば、新しいテクノロジーについて真剣に考え始める時期に来ているのかもしれません。そしてそれは決して未来の話ではありません。それは実際に始まっています。日本でも、販売を劇的に変化させるテクノロジーの導入がスタートします。

また次期iPhoneにはAR機能が搭載されるという噂が出ています。これがジュエリーと組み合わさると何が可能になるでしょうか。高度に発達したARはインターネットと現実世界の境界線を一気に消し去ります。気になる方は「iPhone8AR」や「Google Tango」で検索してみてください。想像力が働く方は、次世代のビジネスがイメージできるかもしれません。

次回は、テクノロジーによってダイヤモンドビジネスの競争ルールはどう変わるの
か、ご説明させていただきます。
■連載 No28

残り10%の情報に大きな価値
意識の違いが対応への格差生む

前回少し触れましたが、東京ビッグサイトで開催された1月のIJT期間中にHRD Antwerpによる合成ダイヤモンドセミナーを実施させていただきました。ちょうど一年ぶりのセミナーでしたが、今回も非常に大勢の方々にご出席いただき、ほぼ満席での開催となりました。ご来場いただきました皆様には、この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。 昨年2016年1月のHRD Antwerpセミナーを皮切りに日本国内で合成ダイヤモンドの情報が飛び交い始めたことで、問題意識を煽ったのではないかと昨年はご批判いただくこともありましたが、結果的に正しい情報を伝えることによって業界貢献となったのではないかと今回はご評価を多くの方に頂きました。

昨年は日本における合成ダイヤモンド元年と言えたと思いますが、昨年一年を通して様々な組織や団体で合成ダイヤモンドをテーマにしたセミナーが開催されました。皆様もおそらく、いくつかのセミナーにご参加されたことと思います。合成ダイヤモンドのセミナーですから、どの組織や団体が開催していても、大筋の内容は似通っていたはずです。合成ダイヤモンドの定義、ダイヤモンドの合成方法の種類、及び説明と判別の仕組みなど、どのセミナーであっても共通して語られていた内容です。以前にも同様のセミナーをお聞きになった方であれば、他のセミナーは場合によっては9割以上の内容はすでに知っている内容だったことと思います。そのため、新しいセミナーには興味を示さない方も多いと思います。
しかし、残りの1割の情報にこそ大きな価値があるのが、合成ダイヤモンドです。なぜなら、合成ダイヤモンドは天然ダイヤモンドとは異なり、人間のテクノロジーによって作られるものだからです。テクノロジーは短い時間で大きく発展、変化します。ダイヤモンド合成技術は発展途上の技術ですから尚更です。残りの1割の情報の多くは、この部分の情報なのです。

今回のセミナーにご参加された方も、その1割を求めて出席された方が多かったように見受けられました。そして実際の問題として認識しておられる方が多かったのも、一年経って大きく変化した部分だったように思います。一年前のセミナーでは、内容として面白かったというような感想を頂戴することが多かったですが、今回セミナーを終えて色々お話を伺ったところ、具体的な対策方法のご相談や、また現在すでに実施されている対応方法が適切かどうかの相談をいただくことが非常に多かったのです。これは一年前のセミナーの際には全くなかったことで、いかに多くの方が身近な問題として認識されているかを実感する結果となりました。

今回のセミナーで技術的な部分で興味を引いたのは、HPHT合成されたダイヤモンドの形状に関しての情報です。HPHTであってもCVDであっても合成ダイヤモンドの結晶は非常に特徴的なフォルムを持っており、研磨前の状態では容易に判別できるというのが今までの認識でした。しかし、最近では天然ダイヤモンドと同じ正八面体の結晶のHPHT合成ダイヤモンドを成長させることに成功しています。つまり、原石の状態で見分けることが困難ということです。現状ではごく小さなサイズのもので、しかも宝飾用ではなく工業用として利用されるとのことですが、近い将来に大きいサイズが実現するのか、それが宝飾用として流通するのか、その可能性は否定できないと思います。

またマーケットの情報としては、昨年5月にアメリカで実施されたGoogleの検索分析が興味深いものでした。インターネット検索エンジン最大手Googleで最も検索されたジュエリーは何だったのか、という調査です。結果は、1位はカルティエ、2位はティファニーでした。そして3位にランクインしていたのはスワロフスキーです。カルティエは自社のダイヤモンドに非常に厳しい検査基準を設けていることで知られており、当然ながら同社のダイヤモンドは全て天然ダイヤモンドです。一方で、スワロフスキーに使用されているのはキュービックジルコニアやクリスタルです。同じジュエリーでありながら、1位と3位の間には大きな違いがあると言っていいでしょう。その一方で、特に最近アメリカ国内では合成ダイヤモンドを扱うブランド各社が大きなプロモーション費用を投じて合成ダイヤモンドの販促活動を進めています。その結果近い将来、検索の1位と3位の間に合成ダイヤモンドブランドが入るのか、わかりませんがそれも可能性がないとは言えないでしょう。事実、2015年1月から2016年1月までの間にアメリカ国内のマーケットで合成ダイヤモンドは230%増加しているとの結果が出ています。

テクノロジーもマーケットも、短い期間で大きな変化をしていることがお分かりいただける一例だと思います。今後も日々状況は変わって行きます。昨年一年間は合成ダイヤモンドの基本的な知識を得る年だったと思いますが、今年以降は最新の情報をキャッチして常に対応することが求められるのではないでしょうか。本コラムでも最新の情報は随時ご提供させていただきますので、皆様の参考になれば幸いです。

次回は、先月末から開催されていた香港ジュエリーショーでの最新情報などを書かせていただきたいと思います。
■連載 No27

全く異なる価値観に注目し、その「ビジネス」の方向性を考える

先月末には第28回となる国際宝飾展が東京ビッグサイトで開催されましたが、その際に世界的ダイヤモンド研究の権威であるHRD Antwerpによる合成ダイヤモンドセミナーを開催させて頂きました。

昨年一年間も数多くの合成ダイヤモンドの説明会が開催されておりましたが、本セミナーもほぼ満席となり関心度の高さを伺わせした。ちょうど一年前にもHRD Antwerpのセミナーを開催しましたが、この一年間で状況はより現実感を伴って我々のビジネスに関係して来ていると言えるでしょう。

ところで話は少し逸れますが、アメリカの食品業界でここ最近研究が進んでいる「人工肉」と言うものをご存知でしょうか。何やらSFっぽい響きですが、この人工肉はいまアメリカで様々な企業が研究を開始している新たな食料です。

サンフランシスコにあるレストラン「コックスコーム」では、2016年10月から人工肉を使用したハンバーガー、「インポッシブル・バーガー」を販売開始、大人気となっています。見た目も食感も味も、本物そっくりのハンバーガーですが、100%植物由来の人工肉でできています。

人工肉には大きく分けて2種類あり、小麦や大豆から抽出したタンパク質を使用する「植物由来人工肉」と、牛の細胞から肉を培養する「培養人工肉」です。現在前者はアメリカ国内のレストランやスーパーマーケットで販売されています。後者に関しては研究中で、培養に成功しているもののコストの関係で製品化していませんが、数年以内の販売を目指しているようです。

こうした人工肉の開発の目的は、地球環境への負担を減らすことです。食肉業界は以前より、持続可能なシステムではないと懸念を持たれていました。飼育時に乱用される抗生物質から耐性菌が生じる問題や、また牛を飼育する過程で大量の資料や水が必要になり自動車よりも二酸化炭素を排出するとも言われています。人工肉の場合、水は畜産の85%減、二酸化炭素は89%減と言われています。

また、人工肉は家畜を殺すことを反対している一部のベジタリアンからも、倫理的な理由で支持されています。今後コストがより下がれば人工肉の需要は拡大しますし、普及していく可能性は非常に大きいでしょう。

「インポッシブル・バーガー」のパテを開発したのは、シリコンバレーのベンチャー企業です。この企業にはGoogleが巨額の投資をしようとしたことでも話題になり、現在はビル・ゲイツが100億円以上も投資、他にも数々の投資家がこのベンチャー企業に投資しています。現在、多くの投資家がこの新たな食料開発に大きな関心を持っています。

単純に、「本物の熟成牛肉」と「人工培養された肉」であれば前者を食べたがるのが普通でしょう。食肉業者は、その牛がいかに丹精込めて飼育された上質な肉かを語るでしょう。しかし、一部の消費者は全く異なる価値観を持っていることに注目する必要があります。投資家と研究者が目指すように、世界中の肉が全て人工肉に切り替わることは極めて難しいでしょう。しかし、一部の人は普通の牛肉を食べますし、他の人は人工肉も食べる可能性があると言うことです。それは決して、普通の牛肉の美味しさや畜産農家の努力を否定するものではありません。

合成ダイヤモンドについても同様のことが言えるのではないでしょうか。天然ダイヤモンドは地球が育んだ奇跡の結晶であり、比類なき美しさを持つものです。一方で、別の価値観を持つ消費者は合成ダイヤモンドに魅力を感じる可能性もあると言うことです。天然ダイヤモンドの価値を追求するのであれば、合成ダイヤモンドに対しても理解を深め、その上で天然ダイヤモンドのビジネスの方向性を考える必要に迫られているのではないでしょうか。

HRD Antwerpによるセミナーでは世界的なトレンドを含め、興味深い最新の情報が提供されました。また次回以降お伝えできればと思います。
■連載 No26

Webと実店舗の境界線は、極めて曖昧

新年あけましておめでとうございます。
本年が皆様にとって希望と幸せに満ち溢れたものになりますように、心から祈念しております。

2017年のダイヤモンドビジネスのポイントは、「信頼性」そして「革新」になると予想しています。
信頼性に関しては言わずもがなですが、全てのダイヤモンドを取り扱う人間がプロフェッショナルになるということ、自社の扱う商品に対して責任を持つということです。2016年は日本での合成ダイヤモンド元年となりました。しかし、その対応が鑑別機関任せ、またはメーカーに責任を押し付けているだけでは今後消費者からの信頼を得ることは難しいでしょう。ダイヤモンドは情緒価値商品といいますが、その本質は鉱物であり、情緒価値を支えるのは間違いない品質への保証です。そこが揺るぐことは決してあってはならないはずです。値引きやイメージだけでの販売から脱却して、2017年は業界全体が本来の誇り高いダイヤモンドビジネスに立ち返る年でありたいと願っております。

革新に関しては、本コラムのテーマにもなっているテクノロジーに注目していく必要があると思います。特に流通分野のテクノロジーは近年目覚ましい発展を見せています。消費者は非常にフレキシブルで利便性があればどのようなテクノロジーでも受け入れる準備があります。

昨年は定額制の音楽配信サービスが続々スタート、日本での音楽配信サービスは一気に一般的になりました。頑なに音楽CDの販売を続けていた人たちはもちろんですが、音楽ダウンロード業界ですら半分以下に落ち込むと予想されています。流通の仕組みはテクノロジーによっていとも簡単に変化するという証拠です。

通販最大手のAmazonは2017年にレジのない店舗、Amazon Goを開始すると発表しました。コンビニほどの店舗で、消費者は棚から自由に商品を手に取り、そのまま店を後にできます。どの商品を持ち帰ったのかは全て正確に把握され、瞬時にAmazonアカウントにチャージされる仕組みになっています。AmazonはECの最大手ですが、実店舗販売にもテクノロジーを投入して拡大を図ろうとしているのです。

一方、同じくアメリカのダイヤモンドWeb販売最大手のBlue NileはWebroomという面白い取り組みを始めています。最初にニューヨークにテストとして設置し、現在では5つ目のWebroomをスタートさせています。これは非常に面白い取り組みで、Webroomという名前の通りWeb販売のサポート的な役割を担っています。Webroomではプロフェショナルのアドバイザーにダイヤモンドについて、そしてジュエリーについて納得いくまで説明を受けることができます。また、サンプルも手にとって見ることができます。しかし、そのWebroomではダイヤモンドは販売しておりません。Webroomの端末でインターネットを使用してオーダーするか、家に帰って自分の端末でゆっくりオーダーすることができます。お客様はジュエリーショップにありがちな、押し売りのようなプレッシャーを一切感じず、なおかつ商品の説明をしっかり受け、そして膨大なWeb上のストックから自由に心ゆくまでダイヤモンドを選ぶことができます。

2017年以降、Webと実店舗の境界線は極めて曖昧になってきます。実は消費者の中では既にあまり境界線が存在していません。ネット、実店舗と線を引きたがるのはどちらかと言うと売り手側の都合です。それに気づいた企業は、上記のような取り組みをすでに始めていると言うことです。Amazonでなくても、Blue Nileでなくても、そこに向けて取り組み始めることは可能です。テクノロジーは望む人には常にオープンです。

2017年の皆様のビジネスに、少しでも本コラムの情報が参考になることを願って、新年の挨拶とさせていただきます。本年もよろしくお願い致します。
■連載 No25

ダイヤモンドの4Cは、人の目ではなく、すべて自動で鑑定するシステムが登場

ダイヤモンドの4Cは人の目ではなく、全てテクノロジーによる正確なグレーディングができる時代が訪れようとしています。

世界のダイヤモンド鑑定システムの世界的企業であるSarine Technologies社が、先の11月に新しいシステムの情報を正式リリースしました。それは、研磨済みダイヤモンドのカラーとクラリティを自動で鑑定するというものです。

Sarine Technologies社は約25年前にダイヤモンドプロポーション全自動測定器“DiaMension™”を世界に向けて送り出しました。ご存知の方も多いと思いますが、それ以前のダイヤモンドのカット評価はプロポーションスコープと呼ばれる器具を用い、ダイヤモンドの影を目盛りのついた板に投影するという方式で行われていました。鑑定士は目盛りを読んで、それを紙に書き留めていました。DiaMension™がリリースされた当時、導入に関しては慎重な意見もあったようですが、現在ではカット鑑定は機械計測が標準になっており、全てのラボに導入されています。現在のシステムではハイエンド機では計測誤差が±10ミクロンという精度で、人間の限界を遥かに凌いだ精度を実現しています。特に日本では2006年のGIA方式カットグレード導入以来、このシステムはカット評価に必要不可欠となっています。

現在のダイヤモンド4C鑑定は、カラットは電子秤による計測、カットのプロポーションは全自動測定器による機械計測となっていますが、カラーとクラリティは鑑定士の目によって決定されることになっています。カラーはマスターストーンと呼ばれる基準石との慎重な比較によって、そしてクラリティは顕微鏡を使用した観察によって判断されます。専門的な知識と熟練した経験を持つ鑑定士は、非常に高い精度でそれぞれのダイヤモンドの評価を行うことが可能で、常に安定したグレーディングを行うことが可能です。しかし、グレーディングは主観的な要素が含まれているため鑑定士によるわずかな判定の誤差、及び鑑別機関によるグレード差異は依然として存在しています。

一方で、消費者及び一部の業者は鑑定結果に対して絶対的な評価だと信じていますので、グレード誤差が生じた時に大きな誤解と問題を生んできたのも事実です。

そのため、プロポーションと同様、常に安定して一貫した判定が可能なカラーとクラリティの全自動評価システムが長い間求められていました。しかし、カラーとクラリティは個々のダイヤモンドの特性を考慮して判断する必要があるため、機械による自動計測には高いハードルがありました。

しかし、S a r i n e T -echnologiesはこの高いハードルを越える革新を実現し、先月に遂にカラー及びクラリティの全自動計測器を発表しました。現在、大量のダイヤモンドを用いての試験を実施しており、2017年中旬には製品ベースでの実用の開始を見込んでいます。カラーはほぼ正確な一貫性のある評価を提供し、クラリティは研磨済みダイヤモンドの内包物の正確なマッピング、そして等級を決定するアルゴリズムにより、それぞれの基準に従って最終グレードを決定するというものです。現段階では、クラリティに関しては0.02ctから10ctまでのダイヤモンドに対応しており、カラーは0.20ct以上となっていますがそれ以下のサイズにも今後対応させるようです。

これによって、ラボにとっては非常に高い業務効率をもたらすと同時に、常に一貫した鑑定結果を実現する可能性があります。これはグレード誤差の大幅な減少となり、ダイヤモンド及び業界に対する消費者信頼に大きく寄与するものになるでしょう。

また別の側面としては、超高級時計メーカーや高級ジュエラーが製品に使用するメレダイヤモンドで、ハイクオリティラインの製作が容易になるかもしれません。メーカーにとっては自社の製品の品質の管理、よりこだわった商品の開発を可能にするかもしれませんし、そうであれば小売店にとっても製品のアピールポイントの増加につながる可能性があります。

最近ではどの業界でも、AIや機械化による職業の消失が懸念されています。しかし、テクノロジーの開発や導入は本質的には業界を発展させるためにあります。精度や運用コストなど新しい技術に関して検討することは多いかもしれませんが、いずれはプロポーション測定システム同様に標準化するでしょう。その技術の流れを見極め、自社にとってどんなメリットを見出すのか、またどのように新たな価値を創造できるか、25年振りの変革期に思いを向けてみてはいかがでしょうか。

この情報に関しては、随時アップデートさせていただきます。
■連載 No24

スクリーニングのみならず、知識及びソースにも関心を

前回は、9月に開催された香港ジュエリーフェアのトピックとしてクラウドを使用した新たなサービスについて説明しました。この香港ジュエリーフェアでは、もう一つ注目を集めていたトピックがありました。それは、メレ石を含む合成ダイヤモンドへの対応についてです。

先月、10月25日にJJAが一般消費者向けWebサイトで『高温高圧法合成ダイヤモンドについて』というニュースを掲載しましたが、特にメレサイズの合成ダイヤモンド問題は、ダイヤモンドを取り扱う全ての人にとって無視できない状況となりました。実際、大手だけではなくどこの鑑別機関でも毎週のように合成ダイヤモンド、もしくは合成ダイヤモンドと思われるダイヤモンドが発見されているのが現状です。

香港フェアではベルギーのH R DAntwerpのブースでメレ石のスクリーニングシステム「M-Screen」を展示していましたが、日本を含む多くの国から訪れた人々が導入の検討や注文をしているのが目立ちました。
また今回新たに会場でお披露目され、注目されていたのは、デビアスグループの鑑別機関であるIIDGRから発表された“PhosView”です。これは少し前に中国で開発されたGLIS-3000と似たシステムで、どちらも燐光によって疑いのあるダイヤモンドを特定するというものです。HPHT合成された無色のダイヤモンドは蓄光素材のような燐光を持つものがほとんどで、その特徴を用いて判別するシステムとなっています。CVD合成ダイヤモンド及び模造石を見分けることはできませんが、現在市場に出回っているメレサイズの合成ダイヤモンドはそのほとんどがHPHT合成と言われており、その判別にフォーカスしたシステムとなっているようです。どちらのシステムも資料室にダイヤモンドが入りさえすれば検査可能なので、製品のスクリーニングとしても活用できる点が大きなメリットです。

現在様々な合成ダイヤモンドのスクリーニングマシンが存在しておりますが、日本国内でのシステム導入状況はどうなっているのでしょうか。
これらのシステムより前に、同じくIIDGRからメレ石のスクリーニングシステム(AMS)が発売されていたので、同システムはサイトホルダーと、大手企業の一部には既に導入されています。またHRDAntwerpのM-Screenに関しても、今年1月の発売以来順調に日本国内の企業への導入が進められているので、大手企業は何かしらの対応が既にできているところが多いように見えます。

しかし冒頭の説明通り、現在日本国内では相当数の合成ダイヤモンドが既に混入されていると考えられますので、その状況に照らし合わせるとまだ業界として対応できていると言えるレベルではありません。

またシステムの導入はもちろん重要ですが、より重要なことはダイヤモンドに携わる全ての人間が合成ダイヤモンドを含むダイヤモンドの特性について、プロとしてしっかり理解することだと思います。よく「機械に入れさえすれば何でも判断できるシステム」が欲しいと問い合わせを頂くことがあります。実際、ボタン1つで全て判別できるようなシステムは存在しません。どのシステムにもメリットがある反面、測定の限界というものが存在しますし、使い方を間違えれば合成ダイヤモンドを見逃すこともあり得ます。燐光を利用したシステムに関して言えばCVD合成ダイヤモンドと模造石の判別は不可能ですし、HPHT合成ダイヤモンドでもカラーダイヤモンドには燐光が見られません。M-Screenに関して言えば、CVDを含む全ての合成ダイヤモンドと模造石にも対応する現在世界最速のスクリーニングシステムですが、対象がラウンドブリリアントカットに限定されています。

それぞれの特性を見極めた上で、システムの導入はもちろんですが、扱う人間の知識が、流通の全てのステージの人間に求められる時代になっていると思います。

また、検査と同時にソース(仕入先)にも関心を持つことにより合成ダイヤモンド問題への対応と、消費者への安心の提供となると思います。現在の消費者は、特に近年「産地」というものに非常にシビアです。
食品でもアパレルでも家電製品でも生産地をチェクして購入するというのは普通のことです。一方でより高額な商品であるダイヤモンドの産地(輸出地)に関しては、今までほとんど説明されてきませんでした。今後情報開示がより求められる時代に、我々はどのような対応が可能でしょうか。

次回は、そのヒントとなる新しいプログラムを含め、今後のダイヤモンドビジネスの方向性について説明します。
■連載 No23
れからの消費者目線は、リアル在庫 or バーチャル在庫??

先月(9月)、香港ジュエリーフェア(HongKong Jewellery & Gem Fair)が13日より開催されました。
今回の個人的な印象としては、以前に比べて商材そのもの以外、つまり商材に関連したサービスや製品が増えていると感じました。ダイヤモンドを含む宝飾業は歴史的にも最も古く、古典的なビジネスと言われていますが、その宝飾業にとってもサービスや技術による差別化、信頼性の確立は時代の流れとして避けて通れないということでしょう。

ご存知の通り、香港ジュエリーフェアは2つの会場で開催されています。主にルース等の素材を扱うアジアワールドエキスポ、そして主に製品を扱う香港コンベンションセンターです。前者は製造業者やメーカー等を対象としており、後者はどちらかというと小売業者が対象となっています。

ダイヤモンドプロポーション測定器を主な製品とするSarine社は基本的には製造業社を対象とするアジアワールドエキスポへ毎回出展していますが、今回は9月の展示会としては初めて、香港コンベンションセンター側へも出展しました。ブースへはマシン関係を一切設置せず、iPad等のタブレットを使用してのプレゼンテーションでした。

ダイヤモンドの製造過程でテクノロジーがいかに大きな重要性を持っているかは以前お話ししましたが、今後小売サイドへも最先端のテクノロジーによって大きな変化が起こることを象徴する一つの光景であったように思います。

Sarine社は今後小売業向けに様々なサービスを展開していきます。ダイヤモンドの輝きを科学的に分析、評価するSarine Light™は既にアメリカ、中国などの市場で大きな広がりを見せており、大手チェーンが採用することで売り上げを大きく伸ばすなど、ダイヤモンドの評価方法として認知されてきています。日本国内においては今年2016年後半で輝きの評価を持つダイヤモンドの取扱いディーラーが飛躍的に増えており、全国各地に広がっているなど順調に認知されてきました。

新たなサービスとして、Sarine社は今回の香港ジュエリーフェアで、Sarine Connect™というサービスをリリースしました。これはクラウドを活用したPOSシステムを含む、最先端の流通ソリューションです。

元々ダイヤモンド小売はプロダクト・アウトの発想が基本でした。ダイヤモンドを含む宝飾品はほとんど経年劣化せず、仕入れ後何年経っても新品として販売できます。置いておけばいずれは定価で販売できる可能性があるので鮮度管理はあまり必要ではなく、また、回転率が悪くなれば利益を大きく乗せて売ろうとするという不思議な業界です。

バブル期、またそれ以降婚約指輪が売れていた時期であればそれでも、ある程度の回転は維持できたでしょうし、商品もいずれは売れたので問題はなかったかもしれません。
しかしこの体質が、現在の宝飾業の歪な商売形態を生み出していることは間違いありません。

現在では、市場の成熟と飽和、そして婚約指輪取得率の低下に伴い、消費者ニーズを正確に理解し効率的に販売することが重要になってきました。ダイヤモンドの適正在庫に関して言えば、石目とグレードの組み合わせで100以上のコンビネーションが存在しますし、デザインを加味すると適正在庫を把握することは容易ではないでしょう。

また、在庫効率化の問題もあります。顧客のニーズは多様化するのに在庫はそれに合わせて闇雲に増やすわけにもいきません。ここに小売業のジレンマが存在すると思います。Sarine Connect™はこの問題に対する一つの回答を提供していきます。在庫管理システムと連動し、リアルタイムでの在庫分析、売上と傾向分析などのPOS機能は全てクラウドで管理されますが、加えて在庫管理と連動する販売ツールも提供されることが特徴です。
 iPad等のタブレットでの在庫サーチ、各商品の詳細な情報がクラウド上で一括管理されており、その商品情報にはダイヤモンドの詳細なインフォメーションはもちろん、ジュエリーデザインの360°イメージを追加することも可能です。そのイメージは特殊な機器がなくとも、簡単に撮影しアップロードすることができます。店頭では現物がなくても、ダイヤモンドそのものの詳細な画像と3Dデータ、輝きの評価はもちろん、デザインの詳細までもお客様に説明し、販売することができるようになります。

これにより、最適な在庫の分析、回転率のアップ、在庫の圧倒的な効率化と店頭での機会損失の減少を可能にします。在庫の効率化が実現すれば、前述したような長期在庫に起因する問題も軽減するでしょう。

将来的には、AR(仮想現実)を組み合わせることで、より商品紹介の精度が高まり店頭在庫ゼロを実現できるかもしれません。また、もしかしたらネット販売を超えたバーチャル店舗の実現も可能になるかもしれません。

このようなシステムは他業界では珍しいものではありません。タブレットを使用した在庫サーチ、3D写真等を活用した商品説明は今や当たり前になりつつあります。消費者目線から考えれば、店頭の限られた在庫から選ぶことを強要される店舗、奥行きのあるバーチャル在庫から選べる店舗、どちらで購入したいでしょうか。
■連載 No22

価格競争を超えたパフォーマンスは、誰が生み出すのか?

IoT(アイ・オー・ティー)という言葉が注目され始めてしばらく経ちます。簡単に説明すると、「ありとあらゆるモノがインターネットに繋がる」ということです。ありとあらゆるモノですから、今まで以上にインタ-ネットの活用が想像以上に広がることになります。古典的な装飾品であるダイヤモンドジュエリーに関してもそれは当てはまるのでしょうか?

ここ最近で私が最も惹かれたIoTの事例は、米Amazon.comが展開している『ダッシュボタン』です。日本ではまだ発売されていませんが、どこにでも貼れる小さなボタンで、Wi-Fi経由でインターネットに接続します。ボタンには洗剤など日常消耗品のブランドロゴが印刷されており、そのボタンがどの商品に対応しているのか一目でわかるようになっています。例えば洗濯機の横に洗剤のダッシュボタンを貼っておきます。洗剤の残りが少なくなったらそのボタンをプッシュ。すると翌日には新しい洗剤が配達されてきます。冷蔵庫にミネラルウォーターのダッシュボタンを貼っておけば、ミネラルウォーターがなくなりそうなタミングで補充が簡単にできるというわけです。

しかしよく考えると、購買のプロセスを短縮化しただけでそこまで画期的なシステムではない気もします。日常消耗品に関してAmazonには元々Amazon定期便と言う、指定した数量、頻度で、しかもディスカウントして商品を自動的に配達してくれるサービスが存在します。また、そうではなくてもスマホでもPCでも簡単にその場で商品を注文できます。ネットで探せばその時点で最安値の商品も探せるかもしれません。

ダッシュボタンを使用する場合、ボタンを押すだけで注文が完了しますが、その時点で消費者は価格を正確に認識できません。インターネット販売の普及により価格競争が激化してきたと言われておりますが、この場合ネット販売であるにもかかわらず安さ以外の理由で商品が選ばれているということです。ブランド力、サービス、そして利便性です。

ダイヤモンドジュエリーの販売において価格は当然重要なファクターです。しかし、消費者が価格を大きく意識する日常消耗品ですら、IoTによるマーケティングは価格競争を超えたパフォーマンスを発揮します。ここにはIoTの大きなヒントがあると考えます。

また、流通でIoTがもたらす大きなメリットの一つは、顧客のコントロールです。
ダッシュボタンに関して言えば、一度そのブランドのボタンを購入し貼ってしまえば、基本的にはずっとその製品を買い続けることになります。そしてそのボタンが押されるタイミング、頻度は実際にその商品が使用されるタイミングに非常に近いと推測されるため、Amazonまたはメーカーは、消費者の使用環境や行動をデータとして把握することが可能になります。このシステムが普及することでメーカーは適切な生産ラインの管理、新商品開発やブランド力の強化に役立てることができます。

家庭用洗剤、ミネラルウォーターなどのメーカーは今まで自分たちの商品がIoTによって画期的な変化を遂げるなど、おそらく想像もしていなかったでしょう。それを実現したのはAmazonですが、「あらゆるモノ」がIoTによって変化する可能性を示唆しています。あらゆるモノですから、ダイヤモンドジュエリーももちろん例外ではありません。

この事例を見てピンときた方もいらっしゃると思いますが、ネット技術の普及はメーカーサイドに消費者の情報をもたらすとともに、メーカーサイドから直接的な価値の提供が可能になることを意味しています。今までは消費者に最も近い小売店などの販売チャネルが接点として重要視されており、小売店は自分たちが一番消費者を理解していると思っていました。今後は、IoTを始めとする技術の進歩により、直接的な販売コントロール及びお客様からのフィードバックの取得にメーカーが介入できるようになります。

宝飾業界では、近年様々なメーカーや鑑別機関でデジタルレポートを検討、導入しています。ダイヤモンドの鑑定書をオンライン上で提供するという試みです。イスラエルのSarine社ではより進んだ技術として、ダイヤモンドの全情報をクラウド上にアップするSarineProfile™の提供を試験的にスタートしました。このシステムはダイヤモンドの業者間流通から消費者まで全てに機能し、また消費者が商品を購入した後でもインフォメーションを更新できるという特徴があります。そのブランドを販売するメーカーは、商品が消費者の手に渡った後でも行動データを把握でき、また新しい情報を追加してお客様の関心を惹くことができます。

今後技術が進むにつれ、今まで想像もしなかったものがインターネットとコミュニケーションするようになるでしょう。その発展は流通の仕組みを一転させるポテンシャルを持っています。

今月は香港ジュエリーショーが開催されます。次回は新しい情報を是非お伝えできればと思います。
■連載 No21

スマホユーザー目線を持って見る!

本コラムのタイトルにもなっておりますスマートフォンですが、過去数年で最も技術発達が早く、そして最も人々のライフスタイルに影響を及ぼしてきたデバイスであるということに異論を唱える人は恐らくいないでしょう。

本コラムがスタートしたのが2015年1月でした。当時はスマホを持っていない方もいましたが、今は持っていない方は少ないのではないでしょうか。博報堂系のリサーチ会社でも2016年6月現在の東京地区でのスマホ所有率は70%を超えているというデータが出ています。若者はテレビの視聴時間よりもスマホに触れている時間の方が長いとも言われていますが、消費者の使用メディアが変化しているのであれば、基本的には売る側もそれに対応する必要があります。いかにスマートフォンコンテンツの影響力が大きいかですが、先月末にPokémonGOがリリースされ、今まで誰もいなかったような公園が人で埋め尽くされた映像をご覧になった方もいらっしゃると思います。消費者に対するスマートフォンコンテンツの影響力は他媒体の比ではなくなっています。

とはいえスマホに対応した戦略と言っても、ネット広告をすればいいとか、またはアプリを作ればいいと言った単純なものではありません。ネット広告一つとっても、リスティング広告から行動ターゲティング広告、リターゲティング広告など様々な種類があり、それぞれ効果も異なってきます。また前述のPokémon GOのような人気のある他社のサービスも、それをマーケティングに活用しようと様々な企業が戦略を練っています。余談ですが、アメリカ、ミシガン州のあるバーでは「青チームの人は10%引き」という広告を出した途端人で溢れかえったというエピソードもあります。いかにしてベストな手段をターゲットに対して使えるかが明暗を分けると言えます。

広告戦略の仕組みが複雑化しており企業には非常に分かりづらくなっていると感じるかもしれませんが、実はその逆だと私は考えています。スマートフォンは極めてパーソナルなデバイス(基本的に他人と共有することはない)ですので、それぞれのスマートフォンには使用者の特性が蓄積されていきます。性別と年齢、趣味趣向や興味関心から住んでいる地域、家族構成、ライフイベント、GPSによる位置情報までもが様々な方法で記録されています。企業としては適切なツールを選択することによって、最短距離で最もポテンシャルの高いカスタマーへ直接リーチすることが可能になっているのです。

そしてその延長線上で、自社メディアによる顧客囲い込み、そして消費者自身による情報拡散という理想的なフローがスマートフォン上だけで実現できるのです。

しかし大切なのは中身です。スマートフォンによるマーケティングは手段であって目的ではないからです。多くの場合、サイトを作ることやアプリを作ること自体が目的化してしまう傾向にあります。サイトもアプリも手段ですので、アプリを作らないといけないわけではありませんし、既存のアプリを活用する方法もあります。

そこがブレていると、アクセス数が増えても結果的に効果が出ないということになってしまいます。最近ではテクノロジーによるダイヤモンドの個別情報をクラウドによって活用している企業も増えてきています。宝飾という伝統的なビジネスにもスマホ・マーケティングが活用され始めているのです。自分自身が消費者としてスマホユーザー目線を持って見れば、これが特別なことではなく「標準」であると感じると思います。スマホ世代目線は今後確実に必要不可欠になります。

現在ダイヤモンド業界にも大きなテクノロジーによる大きな変化が起こっています。そして実際にそれを導入している国内外の企業では成果を上げ始めています。そのテクノロジーと、その具体的なPR方法について次回ご説明させていただきます。
■連載コラム No20

「このダイヤモンドは天然ですか?」と聞かれた時の準備はしてますか?

先月初旬、ベルギー・アントワープのHRD AntwerpとAWDC(AntwerpWorld Diamond Centre)に訪れ、最先端のダイヤモンド鑑別機器や合成ダイヤモンドの世界的な状況についての情報を得る機会を得ました。
以前の記事でもご説明しましたが、HRD Antwerpはダイヤモンドに特化した研究・鑑定鑑別・教育機関で、ヨーロッパにおいては絶大な信頼を誇っております。

現在、世界的に合成ダイヤモンドが大きな話題となっておりますが、それはもちろんベルギーにおいても例外ではありません。ヨーロッパでは大手をはじめ合成ダイヤモンドの対応に各社取り組み始めております。近年最も問題視されているのはメレサイズの合成ダイヤモンドです。天然ダイヤモンドに混入されるプロセスの実態は正確に把握されてはいないものの、流通のかなり早い段階で混入、もしくはすり替えられるのがほとんどのケースと言われております。中には、海外生産されたジュエリーに使用されているメレダイヤモンドの2割は合成ダイヤモンドが混入されていると考えている人間もいるくらい、切迫した状況です。

一方で、幾つかの大手のブランドは別の意味で合成ダイヤモンド対応に乗り出しています。クリスタルのジュエリーで知られるオーストリアのスワロフスキー社は合成ダイヤモンド市場に参入することを決定しました。DIAMAJewelry - made with SWAROVSKIcreated diamondという名称で既に海外で展開を開始しています。アメリカをはじめ合成ダイヤモンドを専門に展開する企業は既に何社も存在しますが、スワロフスキーの参入は一般消費者に大きなインパクトを与えることが予想されます。まだ日本での展開は発表されていませんが、それも時間の問題と言えるでしょう。合成ダイヤモンドを取り扱う企業、ブランドが訴求する価値は「天然ダイヤモンドと全て同じ特徴、美しさ、輝き、鉱物特性を持ち、環境を破壊しないエコロジカルで完全にコンフリクトフリーなダイヤモンド」という倫理的な価値です。まだ正式にリリースはされていませんが、大手海外ジュエラーが合成ダイヤモンドの取り扱いを開始するという話もあります。

この一連の流れは、消費者に新たな選択肢を提示すると共に、新たなマーケットの創出という可能性を持っています。しかし、消費者に合成ダイヤモンドの価値を啓蒙するということは、市場に天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンドの二種類が存在することを開示することに他なりません。
現在、ほとんどの一般消費者はダイヤモンド=天然ダイヤモンドだと認識しています。合成ダイヤモンドが存在していることを知らないのです。ですから、通常店頭で「このダイヤモンドは天然ですか?」と質問されることはまずありません。しかし、消費者が合成ダイヤモンドの存在を認識した場合、必ずそのことを店頭で問われることになります。

一方で市場に二種類のダイヤモンドが存在するということは、天然ダイヤモンドは天然ダイヤモンドとしての価値を打ち出せることになります。また、天然ダイヤモンドであることを証明して販売できるダイヤモンドは市場の需要が増えてくることも予想されるでしょう。
現在、HRD Antwerpが製造しているメレダイヤモンドのスクリーニングシステム、M-Screenは生産数を大幅に上回る注文が殺到しており、製造ラインがフル稼働している状況です。M-Screenを使用してメレをスクリーニングしているメレダイヤモンド取り扱い業者においては、メレダイヤモンドの注文が急増しているとの報告も入ってきております。日本でも既に先月からM-Screenの導入、稼働がスタートしました。

日本でも大手ブランドで合成ダイヤモンドの展開がスタートするXデーはそう遠くないと思います。それまでに、各社が合成ダイヤモンドに対するスタンスと対応を早急に検討する必要があるのではないでしょうか。
Sarine Profileは以下より詳細ご確認いただけます。また、お問い合わせは日本代理店、株式会社AP(03-5818-0361)で承っております。
http://sarine.com/products/sarine-profile/
■連載コラム No19

ダイヤモンド販売は、大きく変革

アメリカで取り組みがスタート

スマホの急速な普及と共に普及したものの一つに、QRコードがあります。二次元コードとも言われる、スマホのカメラで読み取る模様のことです。特に最近は、注意して見てみると実に様々なものにQRコードが付いていることに気付かれると思います。
カナダのバンクーバーを拠点とする「エシカルビーンコーヒー」というコーヒー豆を販売する会社があります。エシカル(倫理的)との名前の通り、同社はフェアトレードとオーガニックにこだわったコーヒー豆を展開しています。そして、フェアトレードとオーガニックの透明性を確実にするために、同社のひとつひとつの製品にはQRコードが付いています。これをスキャンすると、原産地だけでなく、生産者の情報、ローストした日、オーガニック認証プロセス、そしてコーヒー豆が製品になるまでの過程を全て見ることができます。コーヒー豆が収穫されてからカップに注がれるまでの過程を全て開示しているのは、同社の製品への自信、そして生産に関わった人々への信頼の表れです。

フェアトレード、オーガニックと謳っていても、消費者にとってはその内容がイメージできなければ「ただのコーヒー」でしかありません。しかし、QRコードからそのコーヒーのバックにある色鮮やかなストーリーに触れた瞬間、それは「特別なコーヒー」へと突如変化します。おそらくそれは、隣に置いてあったその他多くのコーヒーではなく、エシカルビーンコーヒーを購入する十分な動機付けとなることでしょう。
これはほんの一例ですが、スマホが普及するにつれ消費者は手にする商品に関して実に多くの情報を得るようになりました。しかし消費者が大きく変化する一方で、ダイヤモンドジュエリー販売は過去何十年も基本的には変化していません。

しかし、皆さんもご存知のように全てのダイヤモンドは個性的で、実に興味深いストーリーを持っています。店頭ではデザインとプライス、そしてブランドの説明をしていますが、ダイヤモンドに関しては4Cを簡単に説明する程度ではないでしょうか。言うまでもなく、ダイヤモンドジュエリーの価値はダイヤモンド自体にあります。しかしダイヤモンドについての説明が4Cに留まっているため、そのダイヤモンドの個性と価値を明確に伝えられていないのではないでしょうか。

今年、アメリカのある大手ジュエリーチェーンはSarine-Profile™(サリネ・プロファイル)の導入をスタートしました。全てのダイヤモンド製品のタグにはQRコードが付けられています。お客様が商品をご覧になる際、QRコードを読み込むことでSarine-Profile™のクラウドへとアクセスします。すると、そのダイヤモンドの4C情報はもちろん、輝きの評価、そしてルーペで自由にダイヤモンドを見ているような3D画像、H&Cの画像や、動画のブランドストーリーが展開されます。その瞬間、その商品は「数多くあるダイヤモンド製品」から「特別なダイヤモンドを使用したジュエリー」へと変化します。その結果、お客様は心から納得してダイヤモンドを購入されるようになり、同社では満足度の向上、そして購買体験の圧倒的な差別化(しかも現代の顧客に対応した差別化)によって好調なセールスを続けています。

Sarine-Profile™とは、Sarine Technologies社が提供するダイヤモンドの情報プラットフォームです。輝きの評価やSarine-Loupe™というダイヤモンドの3D画像をはじめ、あらゆるダイヤモンドの情報を統合し、一つのクラウド上のデータとして利用することが可能です。プラットフォームなので、情報は自由にカスタマイズしてデザインすることができます。

ダイヤモンドの購買体験をデジタルツールによって劇的にエキサイティングなものにデザインできるのです。そしてそのダイヤモンドの詳しい情報を知ることによって納得して購入を決定することができるようになります。
しかし実際、今の若い世代のお客様にとってこれはそれほど驚くべきテクノロジーではありません。冒頭のコーヒー豆の例のように、他業種では既に同様の体験が提供されています。
そして、ダイヤモンド販売においてはアメリカで取り組みがスタートしています。日本でも近い将来導入がスタートするでしょう。
Sarine-Profile™はあくまで現代の消費者に対応するソリューションの一例ですが、消費者の価値観は急速に大きく変化しております。特にスマホの普及によって消費者自身が商品の情報を能動的に調べることは当たり前になっています。ダイヤモンドも決して例外ではなく、いかに販売側がイニシアチブを持ちながら、消費者のリサーチをコントロールしていくかが今後のキーになってくるでしょう。それが現在の、そして今後の『標準』になる中、ダイヤモンド販売も大きな変革を迫られているのです。
6月頭、ベルギー・アントワープへ行きAWDC(アントワープ・ワールドダイヤモンドセンター)とHRDアントワープを訪れます。次回は現地から最新情報をお届けする予定です。
■連載コラム No18

自分自身の問題と考えるべきこと 
当たり前の「天然」を、どう活用するかで明暗

先月、山梨県水晶宝飾協同組合青年部の勉強会にお招きいただき、合成ダイヤモンドについてお話しさせて頂きました(関連記事1面)。1月のHRDアントワープとの共同セミナーにおいても、130名定員の会場が完全満員。今年に入ってから合成ダイヤモンドへの関心が高まっていると感じました。

しかし相変わらず、どこか他人事のように感じている方も少なく無いと思います。どこか遠くの国で起こっている内戦のように、自分のビジネスには無関係だと思っているかのようです。しかし、合成ダイヤモンドの問題は確実に日本のジュエリー業界に入り込んできています。2012年当時は「皆様の在庫にも混ざっている可能性もあります」とお話ししていましたが、今年に入ってからは「皆様お持ちの合成ダイヤモンド」と、あえて多少オーバーと思いながらもお話ししています。これは、日本でジュエリーに携わる方一人一人が、これを自分自身の問題だと考えていただきたいと思っているからです。

この機会に今一度、合成ダイヤモンド問題について振り返ってみたいと思います。
なぜ、「皆様お持ち」なのかもご理解いただけると思います。

既に記憶にない方も多いと思いますが、実はこの合成ダイヤモンド問題が最初に話題になったのは、10年以上前のことです。2005年3月の「ニューズウィーク」誌で、“あなたのダイヤ「本物」ですか?”という刺激的なタイトルで合成ダイヤモンド問題が取り上げられました。ニューズウィークと言えばアメリカを中心に世界中で発行されている週刊誌です。この記事では米国Apollo Diamond社のCVD合成ダイヤモンドに関して鑑別が非常に困難であること、そして近く市場に供給を開始するといった内容が掲載されました。当時一瞬話題になったものの、海外の記事であったことと、今後市場に流通するという段階だったため、文字どおり面白い『話題』として流れ去りました。これが、その後続く合成ダイヤモンド問題の「プロローグ」だったと言えるでしょう。

問題が急展開を見せたのは、2012年5月。アントワープのIGIに持ち込まれたダイヤモンドから大量にCVD合成されたダイヤモンドが発見され、宝飾用ダイヤモンドとして合成ダイヤモンドが市場に混入されているという事実が、白日のもとに晒されました。その後世界中で同様の発見事例が相次ぎ、問題視されたのです。これが、合成ダイヤモンド問題の「第1ステージ」です。日本国内では2013年以降、いたるところで様々な団体や人による合成ダイヤモンドセミナーが開催され、合成ダイヤモンドは看破不可能といった間違った噂も流れ、情報が錯綜する事態となりました。今でも、合成ダイヤモンドは看破不可能と思っている方や、ルーペやダイヤモンドチェッカーで判断可能と思ってらっしゃる方が少なくないのは、この時代の悪影響でしょう。

しかし、あれだけ騒がれた合成ダイヤモンドも、2014年後半頃から急に話題が出なくなりました。国内で合成ダイヤモンドに対しての警戒心が薄れたこの時期にも、海外での合成ダイヤモンド技術はずっと発達し続け、静かに、しかし確実に日本を含む世界のダイヤモンド業界を侵食してきたのです。

日本でやっと再び合成ダイヤモンドが問題視されたのは、2015年末になってからでした。しかし、それまでとは異なり2015年末以降大きく問題視されているのは、メレサイズの合成ダイヤモンドです。それ以前は主に大粒の合成ダイヤモンドに注目が集まっていました。実際、サイズと品質は年々向上しており、現在ではHPHT合成ダイヤモンドでは10.02ct、CVD合成ダイヤモンドでは3ct以上のものが報告されています。しかし、大粒のダイヤモンドであれば、ほとんどのダイヤモンドは鑑定鑑別機関でチェックされるので、合成ダイヤモンドが混入されていたとしてもラボで発見されます。(必要な機材と知識、経験を持った鑑定鑑別機関に持ち込まれた場合)

しかし、今問題になっているのはメレサイズのダイヤモンドです。多くの場合メレサイズのダイヤモンドは鑑別などのチェックを経ずに製品化され販売されます。そして、そのメレダイヤモンドのロットに混入されているという事例が相次いでいるのです。関連記事とも重複しますが、国内の鑑定機関においても、製品化されたメレサイズのダイヤモンドでの発見事例が昨年9月以降相次いでおり、今でも毎週のように発見されているのです。

「発見事例といっても、海外生産ジュエリーでしょう?」「うちは国内工場で生産しているから大丈夫!」と言う方もいらっしゃいますが、海外生産品が危険で国内生産品が安全という根拠は何でしょうか?そもそも日本ではダイヤモンドは産出されませんし、メレダイヤモンドのカット工場もありません。ということは、製品、ルースに限らず、全てのメレサイズダイヤモンドは海外から輸入されていることになります。メレサイズのダイヤモンドをカットする工場がある国は限られていますが、合成ダイヤモンドはその生産地でMIXされているのです。川上で混ぜられているのであれば、それがどこへ流通しようと混入リスクは変わらないというのは想像に難くないと思います。

特に中国は、HPHT合成ダイヤモンドの技術が大きく発達、大容量のキュービック型マルチアンビル装置により合成ダイヤモンドの大量生産が可能になりました。合成ダイヤモンドの大量生産と低コスト化の実現です。中国では世界中の工業用合成ダイヤモンドの9割を生産し、同市場は飽和状態にあり、いくつもの製造業者が宝飾用合成ダイヤモンドの製造へと方向転換しているようです。そのような理由から、メレサイズの混入リスクは、今後増加はしても減少することはないと考えられています。

海外でも国内でも、メレサイズの全量検査など行われていませんから、上記のような状況を考えれば、国内でも混入リスクが高いということは理解していただけると思います。

この状況で、今またニューズウィークや、最近話題の週刊文春のような週刊誌でこの問題が取り上げられたら、今度は単なる面白い『話題』では済まないでしょう。全ての企業、個人経営の小売店までもが対策に追われることになるのは目に見えています。

しかし、発想の転換をすれば今まで天然で当然であったダイヤモンドに、合成ダイヤモンドという新たな商品が発生することによって新たな価値が生じる可能性があるということです。海外の鑑定機関、HRDアントワープやIGIなど幾つかの機関では合成ダイヤモンド用のグレーディングレポートが発行されております。合成ダイヤモンドであることをはっきりと明記した上で、4Cのグレードが記載されているのです。これは今後、合成ダイヤモンドが新たなカテゴリーの商品として市場に出てくることを意味しています。

今までは天然で当たり前であったダイヤモンドですが、今後は天然であることをしっかり保証、証明することによって、天然ダイヤモンドであるということが新たな価値になる可能性もあります。メレも同様ですが、例えば全量スクリーニングや検査を行い天然ダイヤモンドであるということがしっかり言える、そしてそのための商品管理体制を整えているということが、価値の向上につながると言えるのではないでしょうか。何れにしても、ダイヤモンドを扱う全ての人は、この問題に目をつぶることはできないで
しょう。この問題が世間に露呈した時に初めて対応を考えるか、今から取り組むか、今後の明暗を分けるといえます。

幸い鑑別機関では合成ダイヤモンドの検出は可能ですし、自社で担保する方法としてはスクリーニングシステムの利用によって天然ダイヤモンドの粗選別を行うことが可能です。年明け以降、何社かの企業はすでに真剣に対応を検討開始しており、スクリーニングシステムの導入を既に決定、社内で天然ダイヤモンドの確認を可能にしているメーカーもあります。天然ダイヤモンドの担保と価値を打ち出すことにより、消費者信頼を守り、むしろブランド価値をより高める。そのような意識の企業、団体が今後さらに増えることを心から期待したいと思います。

今回書く予定だったSarine-Profile™の詳しいコンテンツについては次回説明したいと思います。
■連載コラム No17

「新たな街の創造」と「既存の価値の啓蒙」がアツい

近年、「所有」を前提としたビジネスは終わりつつあると言われています。所有しないビジネスとはどのようなものでしょうか。重要なキーワードは「サブスクリプションサービス」です。サブスクリプションサービスとは、簡単に言うと「定額制」のビジネスです。年額や月額の支払いでサービスを提供するもので、新聞や雑誌の定期購読、ケーブルテレビなどと同じと言えばイメージしやすいでしょうか。昔からある販売方法ですが、今一番アツいのはこのビジネスです。
なぜ昔からある形態のビジネスが今アツいのでしょうか。個人的な意見ですが、サブスクリプションのポイントは『新たな価値の創造』と『既存の価値の啓蒙』だと思います。

最近話題のairClose(t エアークローゼット)というサービスがあります。定額制ファッションレンタルサービスで、服の好みとサイズを登録すればプロのスタイリストが選んだ洋服を月額6,800円で借り放題というもの。しかもクリーニング代も送料も不要です。20代30代の女性に圧倒的な人気で、サービス開始後わずか1年で会員数は65,000人に達しました。
airClosetが提供するのは洋服ではなく、プロのスタイリストによる新しいファッションとワクワク感の出会いです。まさに新たな価値の創造です。ユーザーは服を所有することなく、クローゼットが着ない服でいっぱいになることもなく、新鮮な洋服を毎月無限に着続けることができます。

別のサブスクリプションで成功を収めているのはAdobe(アドビ)です。AdobeはDTPやWebデザイン、映像デザインに欠かせないPhotoshopやIllustratorなどのプロ向けの高額ソフトウェアを開発、販売している会社です。先のソフトはそれぞれ単体で10万円以上という高額で販売されていた高級ソフトです。
Adobeは2012年の夏から、ソフトの販売をサブスクリプションベースに変更しました。月間、年間での支払いが選択でき、月額980円から使用できるパッケージもあります。この改革で20%を超える新規顧客の獲得と230万件以上の契約顧客数を獲得しています。
この成功の理由は、もともと存在する高い品質の商品の導入のハードルを下げたことによる顧客拡大です。つまり、既存の価値の啓蒙です。Adobeのソフトウェアはもともと圧倒的な品質を誇っており、高いけど使った誰もが納得するバリューを持つものでした。サブスクリプションにより価値を体験したユーザーは強固なファンになり、より上位のサービス契約を結ぶようになり、Adobeは継続的な売上を得ることになります。

サブスクリプションから見えてくる今後のポイントは、既存の方法や固定概念にとらわれずに視点を広く持つことによって新しいサービスが生まれてくるということです。おそらく今後、すべての業態は限りなくサービス業に近くなっていくでしょう。製品が良ければ売れる、安ければ売れるという時代はもう終わっています。イメージが良ければ売れるという時代もまもなく終わるでしょう。今後は「差別化されたサービスを価値として提供できる商品」だけが残っていく時代へと突入します。

前回ご紹介したSarine-Profile™も、既存のジュエリーショップとは明らかに異なる差別化されたサービスの提供を実現しています。それを可能にしている技術のひとつが、クラウドベースのシステムです。ダイヤモンドの個々のデータには個別のURLが割り振られており、世界中どこからでも瞬時にアクセスできます。店頭のPCやタブレットからでも、そしてお客様がお持ちのスマホからでも、です。
Webサイトに載せることもできますし、メールで送ることもできます。QRコード化してしまえば、店頭タグ、ルースケース、DMどこからでも読み取ってアクセスできます。アクセスできるデータは次回以降で詳しく解説しますが、リアルなダイヤモンドそのもの、それ以上のダイヤモンドの全てを見ることができます。

現在、20代のスマホ普及率は95%以上と言われています。(50代では50%未満)
スマホは「物」であって「物」ではありません。スマホは、インターネットサービスにアクセスするための「手段」です。つまり、ほぼ全ての20代はインターネットを携帯しているのです。スマホの形は変わるかもしれませんが、インターネットを携帯するという状態が変わることはないでしょう。他業種のほとんどのイノベーションはその前提の上に発生しています。つまり今後のサービスは、多少極端に言うとスマホをベースに考える必要があると言えるでしょう。その意味でもSarine-Profile™は強力なツールになり得ます。
次回は、Sarine-Profile™のコンテンツについてさらに説明したいと思います。

Sarine Profileは以下より詳細ご確認いただけます。また、お問い合わせは日本代理店、株式会社AP(03-5818-0361)で承っております。
http://sarine.com/products/sarine-profile/
■連載コラム No16

新しい消費行動の対応は、シームレスな購買体験が鍵

「オムニチャネル」という言葉をご存知でしょうか。アメリカでは既に始まっているマーケティング戦略で、日本では昨年11月にセブン&アイ・ホールディングスが「オムニ7(セブン)」というサービスを開始しています。今後Web戦略が避けて通れない状況の中で、オムニチャネル戦略は重要な意味を持つと考えられます。なぜなら、スマホ時代のユーザーのマインドは既に変わっており、企業側がまだ対応できていないのが現状だからです。

「オムニチャネル」とは何でしょうか。販売チャネルを増やすことをマルチチャネルと言いますが、オムニチャネルは、それぞれのチャネルを連携させ顧客にアプローチすることを言います。リアル店舗はリアル店舗、ネットはネットと切り分けずに連携させていくことです。重要なのは売り手の論理ではなく、顧客側の論理に従ってチャネルを構築する。お客様が買いやすい状況を整えるということです。

現代のお客様は、店舗とネットを別々に切り離して考えてはいません。PCだけでネットをしていた時代は、店舗とネットの購買体験が異なることが当たり前でしたが、現在の消費者は店舗で商品を見ながらその場でネット検索し、店舗で商品を見てから後でネット購入するケースが非常に増えています。消費者の購買活動がとっくにシームレスになっているのに、企業側は未だに店舗とネットを切り離して考えている。例えば店舗とネットで価格が違う、受けられるサービスが異なる、店舗にあるのにネットで買えない、またはその逆など消費者にとって親切とは言えないサービスが多いのです。

一部の家電量販店は早くからこの問題に取り組み、配達時間の大幅な短縮化、ポイントの共有化、在庫の共有、店頭からWebへの誘導などで大きな成果を上げています。店舗とネットのサービス水準を可能な限り近づけることに注力し、結果を出しているのです。

しかし、通常の商品とは販売方法が異なるジュエリーでこのような取り組みは難しいように思えます。Web戦略とは大手チェーン店や量販店だけの課題なのでしょうか?

答えはNOです。スマホやSNSの普及により今後消費の中心となる新しい世代の新しい消費行動に、すべての業種が対応に迫られるはずです。店舗や広告で商品検討せずに口コミ情報を調べたり、発信したりすることが当たり前の時代になっています。最近の若いユーザーは知りたい情報がある場合は検索せずにTwitterなどでつぶやき、知っている人に教えてもらう方が早いという。そのような時代に既に突入していることを考えると、必要なことは顧客の購買活動に合わせて各情報を連携させていくということではないでしょうか。

前回の記事で少し触れたSarine Profile™は、イスラエル、Sarine Technologies社の提供するセールスプラットフォームです。個々のダイヤモンドのすべての情報がクラウド上に保管され、場所を選ばずアクセスすることが可能になっています。では、その一例を見てみましょう。

会社員Aさんは、半年後に結婚を控えた婚約者がいる。そろそろ婚約指輪をと思っていた時、Facebookのフィードに職場近くのジュエリーショップの広告が表示された。Webサイトでは他のジュエリーショップと異なる輝きのグレードが表示されたダイヤモンドがあった。仕事を終え、そのショップに下見へ。今まで訪れた他のショップでは販売員がオススメのデザインを勧めるばかりで、ダイヤモンド自体の説明を聞けず、心配があった。販売員が「本日は婚約指輪の下見ですか?」と接客ブースに案内。販売員はタブレットを使用し、ビジュアルでわかりやすく4Cを説明。そしてダイヤモンドの魅力である輝きについて丁寧に説明し、現物のダイヤモンドを見せながら、そのダイヤモンドの3D画像をタブレットで見せた。自分で自由に回転させたり拡大させたりして納得いくまで品質を確認できた。VS2というグレードで、内包物が目立つ場所ではなかったので安心して購入できると安心した。また店頭にはない他店舗の在庫も同じようにタブレットから見ることができ、まるで手元にあるようにすべてのダイヤモンドを自由に見ることができた。帰宅後Aさんはソファでスマホからメールをチェック、先ほどのショップからメールが届いていた。店頭で自分が見たダイヤモンドと、価格帯が近い他のダイヤモンドのデータが幾つか送付されていた。リングデザインも接客中に話した婚約者の好みに合いそうな幾つかのデータが添付されており、ダイヤモンドの3D画像や4Cデータ、輝きの評価を自宅でゆっくり見比べられ、緊張する店頭より安心して納得いくまで比較できた。翌日、ショップから新しいダイヤモンドが入荷したとデータが送られてきた。価格は昨夜見たものとほとんど変わらないが、見た目が綺麗だったので非常に気に入った。このダイヤモンドの3D画像などのデータをLINEで婚約者に送り、意見を聞いた。彼女はすっかりそのダイヤモンドを気に入ったようだ。自分の親にもデータを見せ、家族で盛り上がったと教えてくれた。早速ショップに連絡を入れ、次の週末に彼女と一緒に伺いこのダイヤモンドを購入する予定だと告げた。彼女はF a c e b o o kや
Twitterにダイヤモンドのデータをアップして友達に自慢しているようだ。__

いかがでしょうか、これがSarine Profile™が提供するシームレスな購買体験の一例です。幾つかのポイントがあったことにお気づきでしょうか。ターゲットへのダイレクトな広告、店舗への誘導、タブレットを使ったわかりやすい商品説明、小さくて見辛いダイヤモンドをしっかりと説明するツール、店頭にない在庫も提案できる在庫効率化の実現、自宅での詳細な商品検討、来店されなくても追加提案が可能な顧客コントロール、SNSによる情報拡散など、正にシームレスな購買体験を実現しています。

ジュエリー販売例としてイメージすると、どこか近未来的でSFのような気がしますが、他業種では既に当たり前のように実現していることの一つです。そして何より、新しい世代の消費者は既にこの体験に慣れているのです。今後様々な業種でこのようなシームレスな購買体験が当たり前となっていく中で、ジュエリー販売にも同様の体験が必ず求められてくるのではないでしょうか。

次回はSarine-Profile™の一つ一つの機能について掘り下げてご説明いたします。
■連載 No15

2016年に明暗を分けるのは、責任ある取引先、保証できる販売

先月は東京ビッグサイトにて国際宝飾展「IJT2016」が開催されました。弊社は例年通りAPとSarine Technologiesという2つのブースにて出展させていただきましたが、今回はAPブース内にHRDアントワープのブースを併設し、メレサイズのダイヤモンドスクリーニングシステムのご紹介をさせていただきました。実はこの機器は昨年9月の香港ジュエリーショーでHRDアントワープが初めて発表した最新のもので、当時の香港ジュエリーショーでは機器のデモンストレーションの予約が毎日フルに埋まっており、アポイントなしでは見ることができなかったほどの注目を集めていたものです。IJTにおいても数々の企業様がブースに訪れ、お問合せやご質問をいただくなど、国内においても合成ダイヤモンド問題への高い意識を持っている会社が確実に増えてきたのではないかと感じました。

昨年も何度かこのコラムにて書かせていただいておりましたが、海外では合成ダイヤモンド問題への意識が非常に高く、このようなデモンストレーションがあると必ず高い注目を集めております。そして各企業が合成ダイヤモンドに対する自社のスタンスをしっかりと決めているように見受けられます。その証拠の一つが、合成ダイヤモンドの鑑定書の存在です。現在、HRDアントワープ、GIA、IGI等の鑑定機関では合成ダイヤモンド用の鑑定書を発行しております。合成ダイヤモンドを明示した上で取り扱うことは問題ではないので、企業によっては合成ダイヤモンドをビジネスとして活用し始めているということです。
各企業が合成ダイヤモンドに対してどのようなスタンスを取るにせよ、前提としてダイヤモンドの正しい知識を持っているということがまず必要になると思います。天然ダイヤモンドだけを取り扱うとしても、知識は必要になります。

その意味合いも含めて、今回IJT会期中に日本初となるHRDアントワープ「合成ダイヤモンドセミナー」を開催させていただきました。鑑定機関はもちろん、特に大手小売りチェーンや百貨店、メーカーの方のご出席が非常に多く、130の座席が完全満席となりました。そのため、当日ご参加希望をいただいた方々についてはお断りさせていただく結果となり、申し訳なく思っております。

近年は特にメレサイズの合成ダイヤモンドの混入が問題視されており、今回のセミナーも特にメレサイズダイヤモンドへフォーカスを当てた内容となりました。
今まで合成ダイヤモンド問題というと、比較的大きい石にばかり目が行きがちでした。しかも海外の鑑定機関で発見されたという話題が多く、日本のダイヤモンド業界関係者としては、どちらかというと対岸の火事のような気分で見ていた方も多かったのではないでしょうか。しかし、現在問題になっているのはメレサイズです。鑑定機関でソーティングすることが一般的なポインターサイズとは異なり、メレサイズはそのまま製品化するので多くの場合は合成ダイヤモンドが混入されていたとしても表面化しません。そのためメレサイズの天然ダイヤモンドへの合成ダイヤモンドの混入の実態がなかなかつかめないという問題がありました。しかし昨年末以降急激に、製品化されたメレダイヤモンドからHPHT合成ダイヤモンドが発見されるという事例が相次いでおります。既に合成ダイヤモンドは対岸の火事ではなく、我々の火種となっているのです。

背景には、合成ダイヤモンドの技術革新と、それに伴う生産コストの低下があります。また、工業用合成ダイヤモンドの供給過多による市場飽和によって、工業合成ダイヤモンド工場がどんどん宝飾用合成ダイヤモンドの生産へシフトしているという状況があります。今後この、供給量増加とコスト低下という状況はますます加速していくでしょう。

そのような中、ダイヤモンド業界では当然ですが過去とは異なる対応が必要となってくるでしょう。テクノロジーによるメレダイヤモンドのスクリーニングもその答えの一つかもしれません。また、本当に信頼出来るサプライヤーからのみ仕入れるという選択肢も当然ながらあるでしょう。何れにしても各社がこの状況にそれぞれ対応し、責任を持って取引先や消費者に説明できる知識を得ること、そしてどのようにダイヤモンドを保証するのか、その方法が各社の信頼において今後は不可欠であると思いますし、また2016年の明暗を分ける結果になるのかもしれません。

また今後はダイヤモンドの購買体験も今までとは変わっていくべきかもしれません。
ご存知の通り、ダイヤモンドは店頭では全て鍵のかかったショーケースに収められており、お客様は自由に手にとって商品を見ることができません。販売員にお願いして初めて手に取れますが、それでもプレッシャーなく商品を見るのは困難です。その意味で、ダイヤモンドジュエリーというのは特殊な購買スタイルを持っています。

しかし一方で、いわゆるスマホ世代、つまり今後のターゲットとなる世代のお客様は根本的に買い物における商品選定の基準が異なります。一定以上の世代の人々が(ジュエリーに関わらず)、店頭に出向き、販売員のアドバイスを受けて、そこにある商品を購入するのに対し、スマホ世代のお客様の多くは販売員のアドバイスより、自分自身で納得いくまで商品を調べることを好みます。また可能な限り多くの選択肢から最適なものを吟味したいという欲求を持つ方が非常に多いのです。私の知り合いの10代後半の息子さんは、ヘッドホン1つを買うのに毎晩ひたすらネットで調べ、スペックを比較し、最終的に店頭で現物を確認して購入したそうです。その期間は実に1週間かかったといいます。これは若干笑い話で極端な例かもしれませんが、スマホ世代の購買行動を端的に表している例と言えます。

今後はダイヤモンドも、自由にお客様が十分に調べ、比べ、そして納得して購入されるように工夫する必要があるかもしれません。上記の例のように、お客様は事前に自分でかなり下調べをしてからご来店される場合が非常に多いのです。実際私も業界外の友人からダイヤモンドを買いたいと相談されることがありますが、ほとんどの友人は事前に自分でかなり調べており、ダイヤモンドのグレードはもとより、セッティング方法まで希望として言ってきたりするのです。

小さい、そして高価なダイヤモンドを、お客様に納得いくまで調べて購入していただくのは困難だと思われるかもしれません。しかし、バーチャルだったらいかがでしょうか。セキュリティの問題も紛失の危険性もありません。お客様は店頭のタブレットで自由にそれぞれのダイヤモンドを心ゆくまで隅々まで調べ、比べ、そして遊ぶことができます。また、幾つか気になったダイヤモンドがあったらお客様のメールアドレスに、クラウドのデータへアクセスするリンクを送ることもできます。お客様は家に帰ってシャワーを浴びて、ソファでゆっくりコーヒーを飲みながまた自分が気になったダイヤモンドを吟味することもできますし、恋人や友達に見せながら意見を聞いて選ぶこともできるでしょう。お店側も、また新しいダイヤモンドが入荷したらお客様に追加の選択肢としてメールで送ることもできます。

これは全く新しいダイヤモンドの購買体験ですが、他業種ではそんなに珍しいことではないのかもしれません。しかし、スマホ世代のお客様にとっては「購入しやすい」宝石店になるのは間違いないでしょう。

そのツールは、Sarine Technologiesが提供するSarine-Profile™です。次回、このツールの詳しい説明をさせていただきたいと思います。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。また、お問い合わせは日本代理店、晦P(03-5818-0361)で承っております。
http://www.hrdantwerp.com/en/product/m-screen
■連載コラム No14

中途半端なプロが淘汰される

新年明けましておめでとうございます。

昨年末、10年ぶりの新作となる「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」が公開となり、年を跨いで大ブームとなっています。皆さんご存知の通りスター・ウォーズシリーズの舞台は未来ではなく大昔という設定ですが、非常に高度な文明を持っており、医療や操縦、通訳、修理といった作業をドロイドと呼ばれるロボットが人間に代わって行っています。
以前、近い将来なくなる職業(人工知能やロボットに取って代わられる)ランキングというショッキングなニュースが発表され、記憶にある方もいらっしゃると思いますが、まさにそのような世界です。

しかし、人工知能やロボットがまともに仕事できるようになる時代なんてまだまだ先の話だと思っている方もきっと多いことでしょう。我々の業界で言えば、ダイヤモンドの買い付けをするロボット、ジュエリーの接客販売をするロボット、まるでSF映画のようでリアリティがありませんね。しかし、テクノロジーによって中途半端なプロが淘汰される時代と考えたらどうでしょうか。

数年前まで、DTPデザインなど画像処理技術を必要とする仕事は専門性が高く、その類のソフトウェアを扱えるだけでプロとして仕事ができた時代がありました。しかしPCスペックの向上やソフトウェアの発達により、少し勉強すれば誰でもある程度ソフトウェアを扱える時代となった為、本当に高度な技術や感性を持つプロフェッショナル以外は現在では淘汰されてしまっています。

Wix.com(ウィックスドットコム)というサービスをご存知でしょうか。イスラエルのテルアビブで設立された会社で、クラウドベースのホームページ作成ツールを世界190カ国以上で提供しています。少し前まで、いや今でもほとんどの人がホームページ作成は専門的な知識と技術がないとできないものだと思っているのではないでしょうか。確かに高度なシステムや徹底的にカスタマイズされたウェブサイトは高度なプログラミング技術が必要ですし、ウェブ制作会社に莫大な費用を払って作ってもらう必要があります。

しかし、このWix.comのサービスを使えば誰でも、主婦でも学生でも簡単に、しかも無料でホームページを作成することができるのです。もちろん、ある程度のセンスは必要ですが。無数に用意されたテンプレートから気に入ったものを選び、テキストを入れ替え、写真を差し替え、カスタマイズすれば出来上がり。すぐにプロが作ったようなホームページが公開できます。オリジナリティを出したければ、デザインも自由に変更して全くオリジナルのページも作成できますし、様々なアプリを追加できるので、問い合わせフォームや予約画面、スライドショーなども自由に設置できます。またクラウド上で制作しているので、アップロードなども必要ありません。「公開」ボタンを押せば即時に公開されますし、データはすべてクラウド上に保存されているのでIDとパスワードさえあれば、オフィスでもネットカフェでもどこからでも編集が可能です。

実は、APのウェブサイトや各ブランドサイトは全てこのWix.comで制作されています。私が仕事の傍ら片手間で制作したものですが、一つのサイトを作るのに要した時間は約2日ほどだったと思います。以前同じボリュームのサイト制作をweb制作会社で見積もりを取ったことがありますが、納期は3ヶ月、提示費用は200万円以上でした。

テクノロジーが普及して専門領域が侵されていくということは、必ずしもロボットが仕事を行うことだけを意味しているのではなく、「プロでなくてはできなかった仕事」が「誰にでもできる仕事」に変化していくということを表しています。そうなると、今後は素人が数クリックでできるような仕事を、お金を払ってまで中途半端なプロに任せようとは誰も思わないでしょう。

つまり、中途半端なプロは今後どんどん淘汰されていくということです。テクノロジーの進歩は素人のできることを飛躍的に増やしますし、大抵の情報はすぐ簡単に入手することができます。今後、全ての職業には圧倒的な専門性が求められてくるでしょう。
ダイヤモンド販売に関してはどうでしょうか、4Cを説明してブランドストーリーをただ語るのがプロフェッショナルでしょうか。ほとんどのお客様は事前にインターネットで4Cもブランドストーリーもある程度調べて来店されています。既にお客様が知っている情報を、もしかしたらお客様の方が詳しいかもしれない情報を説明するのがプロフェッショナルとは言えないでしょう。マニュアルに書かれたストーリーを復唱するだけなら、POPでも設置しておけば十分です。

また、今年からはSarine社が提供するクラウドサービスSarine Profile™も国内運用がスタートする予定です。お客様はタブレットなどで販売員よりも詳しくダイヤモンドについて吟味することができるかもしれません。

プロフェッショナルとして、販売員がダイヤモンドの知識を顧客よりも深く身につけ、プロとして商品の価値をしっかりと伝えることで、販売員は意味のある仕事といえるのではないでしょうか。そして、そのようなプロフェッショナルがしっかりと商品の価値をお客様に説明し提案出来る店、会社、そして業界は無くなることはないでしょう。

今、ダイヤモンドの鑑定業界ではどのようなことが起こっているかご存知でしょうか。ダイヤモンドのカットグレードは近い将来ポリッシュ以外は完全に自動化されるかもしれません。また、それがどのような基準で行われるのでしょうか。合成ダイヤモンドが問題となっていますが、合成ダイヤモンドとは具体的なものでどのような特性があるのでしょうか。天然ダイヤモンドとの違いは何でしょうか。どのように判別できるのでしょうか。テクノロジーが普及することによってプロフェッショナルへの要求度は上がってきますが、テクノロジーをより深く熟知し、その技術を取り入れることによってプロフェッショナルはより高いレベルの接客を手に入れることも可能です。

合成ダイヤモンドの判別も技術は進化し続けています。今月のIJTで日本では初めてHRDアントワープの合成ダイヤモンドセミナーが開催されます。このセミナーはダイヤモンドセミナーとしては異例ですが、「ベルギー王国大使館」が後援しております。これはベルギー王国の産業の大きな部分であるダイヤモンドに対し、関係者がいかにプロフェッショナルとして正しい知識を得、消費者への信頼を築くことが重要な時代になっているかを表しています。

2016年は、テクノロジーを取り入れる知識を深め、一人一人がプロフェッショナルとなることでダイヤモンド業界がより活性化することを願っております。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。また、お問い合わせは日本代理店、晦P(03-5818-0361)で承っております。
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■連載コラム No13

フイットしたツールの使用が、今後の大きなポイント

「スマホ時代のダイヤモンドビジネス」というタイトルでコラムを書かせていただき、既に1年ほど経過しました。このタイトルは、今後のメインターゲットである世代の象徴である「スマホ」というキーワードを軸に、装飾品という古典的なアイテムへどう活用するか書かせていただきたいと思ってつけたものでした。

実際に書き始めた一年前に比べてテクノロジーは大きく進化しており、その中心にあるものは常にスマホでした。後述しますが、Sarine社の最新ツールもスマホ利用をメインにデザインされており、今後世の中のサービスのほとんどはスマホに集約されていくでしょう。

多くの人がスマホで利用しているものはSNSだと思います。つまり、FacebookやTwitterなどのコミュニケーションサービスです。私も大手のSNSは殆ど試していますが、それぞれのSNSで楽しみ方が異なり、それぞれに異なるユーザー、または異なる使い方をしているユーザーが存在しています。例えばFacebookでは面識のある実際の人間関係を中心として自分自身の情報発信、Twitterでは共通の趣味を持つオンライン上の繋がりを中心に思ったことを発信、Instagramではアカウントを自分のギャラリーとして興味を持つ人と交流、Pinterestでは同じくギャラリーですがネットで集めた情報の共有、といった感じです。

SNSで注目すべき点は、それぞれのユーザーがそれぞれのサービスに膨大な個人情報を提供しているという点です。ここで言う個人情報とは、個人を特定する情報だけでなく、趣味趣向、行動履歴、仕事、消費傾向などを含む情報です。

行動ターゲティング広告というものをご存知でしょうか?インターネットを見ている時に広告が表示されて、それがちょうど自分が欲しかったもので「なんでわかったの?」とドキッとされたことがあると思いますが、それが行動ターゲティング広告です。ユーザーが今まで訪れたウェブサイト、クリックしたコンテンツ、ネットショップの購入履歴などをもとに興味のあるジャンルを絞り、広告が表示されるというものです。

SNSの場合は前述の通り情報精度が非常に高いですので、さらにターゲットを絞り込んで広告を見込み客にリーチさせることができます。自分が広告したい商品のターゲット、職業、居住地域、年代、性別、結婚歴、子供の有無、所得、引越履歴、出身地、出身校、生活スタイル、興味のある商品ジャンル、スポーツ、映画、音楽まで絞り込んで、そのユーザーのSNSにダイレクトに表示させることができるのです。
加えて、スマホ世代は新聞も読まなければテレビCMもあまり見ない人が多いですので、SNSサービスは今後の広告を考える上で必ず外せない媒体となるはずです。

事実、この一年間のFacebookの広告収入は162億9000万ドルという数字を記録しました。Facebook傘下のInstagramも今年10月からフィード広告を開始しました。Facebook自体もFB内で繋がりのある友人の購入履歴からリコメンドをするような機能を追加するなど、SNSでの広告は今後一層発展していくでしょう。
一方で、TVCMや雑誌掲載などは消費者信頼(企業イメージ)には非常に有効なツールと言えます。しかし実際私もよくあることですが、TVCMをSNSで初めて見るということも珍しくありません。
個人的に使うかどうかは別としても、今後ますますSNSというある種の世界でのマーケティングというものは避けて通れない時代に突入していきます。その中でそれぞれのSNSへの理解を深めることはもちろんですが、それぞれのSNSにフィットしたツールを使うということは大きなポイントになるでしょう。すでに異業種では様々なアプリやスマホ用の動画広告を配信するなどSNSに注力しています。

冒頭に名前を出したSarine Profileは特にスマホ世代に特化したダイヤモンド販売ツールです。もしくは、ダイヤモンド広告、集客ツールとも言えるものです。スマホで使用するのに最適なデザインが施されており、ダイヤモンドのすべての情報が魅力的に集約されています。もちろんカスタマイズも可能なので目的に合わせて最適な情報を組み合わせることができます。データはクラウド管理されていますので、お客様はリンク先にアクセスするだけで、簡単にスマホでダイヤモンドの情報を見ることができます。

例えばこれをSNS広告と組み合わせて最適な見込み客に情報を届けることができ、そして魅力的なコンテンツを表示させることができたらどうでしょうか。
今まで莫大な広告料をかけ、不特定多数に情報発信していたものが、ピンポイントで最も効果的に情報発信できる、しかも瞬時に、そして安価でできるようになる時代がもう到来しています。
次回は2016年のテクノロジーの展望について書かせていただきます。

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■連載コラム No12

天然ダイヤモンドの価値を下げるかは、取り扱い企業次第

今回はSarine Technologiesの最新販促ツールについて書かせていただくつもりでしたが、前回のM-Screenの記事に多くの反響とお問い合わせをいただきましたので、今回も引き続き合成ダイヤモンドについて書かせていただこうと思います。
前回のコラムをご覧になった方には重複しての説明になりますが、『M-Screen』はHRD Antwerpが開発した合成ダイヤモンド、及びHPHT処理ダイヤモンドに対する自動スクリーニングシステムです。メレサイズ(0.01ct ‒ 0.20ct)のダイヤモンドを自動的にかつ大量に判別するためのシステムです。(毎時7,200-18,000pcs.)

前回記事を書かせていただいた直後より、多くの企業から当システムに関するお問い合わせをいただいております。背景にあるのは、天然メレサイズダイヤモンドへの人工ダイヤモンド混入リスクです。この現象は日本だけに限られているわけではありません。事実この『M-Screen』は2016年1月の発売予定にもかかわらず、初回生産ロットは既に予約で完売しております。世界中でメレサイズの合成ダイヤモンドに対する懸念がどれだけ大きいか想像に難くないと思います。

しかし、皆さんが懸念しているのはあくまで「天然への混入」です。前回も少し書かせていただきましたが、CVDをCVDとして販売するかどうかは各企業に選択の余地があります。
そもそも消費者は「天然」ダイヤモンドにどれだけの価値を見出しているのでしょうか。現在皆様のお店で主に買い物をしておられるお客様は40代50代の女性が中心で、もちろんダイヤモンドに特別な憧れを持たれている方も多いと思います。
しかし一方で、将来メインターゲットになる現在20代30代の女性についてはどうでしょうか。

エンゲージリングの取得率の低下を見ても明らかなように、20代30代女性のダイヤモンドに対する欲求は急速に失われています。これは天然ダイヤモンドの価値について我々がしっかり啓蒙してこなかったことの結果とも言えますが、別の要因もあります。
現在若い世代の女性はそもそもダイヤモンドを「キレイ」だと思っていないことが多いのです。ダイヤモンドを欲しいと思わない理由として「汚いから」という理由を、アンケートで挙げる女性も少なくないようです。恐らく、彼女たちがダイヤモンドに抱いているイメージが、主に親世代が持っている大きくてクオリティが低いダイヤモンドだからでしょう。そのような状況を作り出したのは、過去に大きさと値段だけでダイヤモンドを大量に売ってきた、このダイヤモンド業界そのものです。
そして彼女たちが現在欲しいと思っているのは、「キレイ」なスワロフスキーやキュービックジルコニアです。そのような価値観の女性に対して、「キレイ」で「クリーン」なCVDダイヤモンドを天然ダイヤモンドの半額で売るショップが登場したらどうなるかは容易に想像できると思います。

しかし、それが天然ダイヤモンドの価値を下げるかどうかは、天然ダイヤモンドを取り扱う企業次第ではないでしょうか。むしろ天然ダイヤモンドの価値を再認識させ、天然ダイヤモンドへの憧れを創り出す戦略も十分に可能だと思います。天然、人工という概念がなかった消費者に対して選択肢を提示し、それぞれの戦略を組み立てることによって新たな市場が開ける可能性があるのです。

現在、東京モーターショーが開催中ですが、若者の車離れが加速する中で各メーカーが消費者への新たな価値提案として力を入れているのが「自動運転技術」です。価値観が変動する中、新たな価値を提案することで消費者の関心を獲得し、同時に別の魅力を持つ既存の自動車への関心や価値も同時に高めることができるのではないでしょうか。しかし、VWのように消費者を欺くことだけは避けなくてはなりません。

人工ダイヤモンドの技術革新が進む中、その流れを完全にせき止めることは不可能です。であれば、まずは各社の取り組みとして天然ダイヤモンドとの混入を避けること。そして、人工ダイヤモンドが市場に出る前提で、自社の将来の戦略を組み立てていくことが重要になるのではないでしょうか。
次回は、Sarine Technologiesの最新販促ツールサービスについて書かせていただきます。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。また、お問い合わせは日本代理店、晦P(03-5818-0361)で承っております。
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■連載コラム No11

海外でCVDの勢い増すダイヤモンドを取り巻く環境は変化している

先月、9月16日から香港ジュエリーフェアが開催され、訪れた方も多かったと思いますが、例
年に比べると若干盛り上がりに欠ける感があり、中国経済の影響を感じさせるものでした。そのような中で、今回は特徴的だった二つの傾向があります。

 ひとつは、CVD(合成)ダイヤモンド取扱業者の増加です。日本国内ではここ最近は話題としてだいぶ下火になっている感のあるCVDですが、香港等海外ではむしろ勢いを増している感があります。昨年までは比較的少数だったCVD取扱業者が今年は非常に目立つ形で出展しており、会場内外にポスターや大きなバナーなどを出している光景は、今後のダイヤモンド業界を象徴して
いるような気にもさせました。価格的にも1/4サイズのアスキングプライスは、ラパポートの6割ダウン程と以前に比べコストダウンしているように見えます。
 また、幾つかの鑑定機関では合成ダイヤモンドに対して「LABORATORYGROWN DIAMOND(研究室で造られたダイヤモンド)」として4C鑑定書を付与しているなど、合成ダイヤモンドを取り巻く環境は確実に変化していると言えるでしょう。

そしてもう一つの傾向は、会場で特に注目を集めていた一つのブースの存在です。そのブースは予約制になっており、会期中毎日数十分間隔でセッションが組まれていましたが、事前の予約でほとんど全てが埋まってしまっており、当日デモンストレーションを希望する業者が全て門前払いをされるほどの人気でした。

そのブースの名前は『HRD Antwerp』、そして人々が目当てにしていたのはHRD Antwerpが発表した『M-Screen』というマシンでした。

HRD Antwerpはベルギー・アントワープに位置する鑑定機関で、AWDC(アントワープワールドダイヤモンドセンター)によって運営されている世界最大のダイヤモンド研究機関です。世界的にも最も高い信頼性を持つ鑑定機関の一つで、ダイヤモンド鑑別・鑑定機材の開発にも注力しています。
今回H R D A n t w e r pが発表した『M-Screen』というマシンは、大量のメレサイズのダイヤモンドを自動的に天然ダイヤモンドと、そうではない可能性のあるもの(合成ダイヤ又は処理ダイヤの可能性があるもの)に振り分けることが可能です。超高速処理を可能としており、毎秒2
ピース、最大で毎秒5ピースのスピードでダイヤモンドが振り分けられていきます。
実際私も会場で実機のデモンストレーションを見ましたが、150ピースほどのダイヤモンドが1分に満たないほどの時間で完全に区別されていきました。

元々、HRD Antwerpは天然ダイヤモンドの判別デバイスとして『D-Screen』という機器を開発、販売していました。これは0.20ct以上のダイヤモンドを一点一点検査するデバイスで、高い精度と検査スピード、そして小型で携帯性に優れているものです。
私自身『D-Screen』についてお問い合わせをいただくことも非常に多いのですが、お問い合わせいただく方が決まって最初に質問されることは「メレサイズ測定の可否」です。どれだけ小さいダイヤモンドの判別が可能か、ということですが、これは市場においてメレサイズ合成ダイ
ヤモンド混入の懸念が大きいということを表しているのではないでしょうか。
実際私がお話ししたある会社では、市場のメレサイズダイヤモンドは信用できないので、10年以上前の製品を買取りしたものからメレを外して使っているという方もいらしたほどです。
■連載コラム No10

最高のお客様へのサービスは、自信をもって「本物」を説明できること

前回、お客様は自由にネットとリアルを行き来しており、魅力的で上質なものをケースバイケースで選択していると書かせていただきました。
これは逆の言い方をすれば、実はお客様はネットとリアルを区別していない、ということになります。一昔前は、ネットを使うためには固定されたPCの前に座ってマウスを握る必要がありました。「ネットサーフィン」という言葉は現在ほぼ死語となっていますが、これもかつては「ネットをする」こと自体が特別であったことを象徴しています。今では常にネットに繋がっていることがもはや「普通のこと」なのです。

この、ネットに繋がることが「普通のこと」である現代のキーワードが『I o T( I n t e r n e t o fThings)』というものです。日本語では「モノのインターネット」というピンとこない言葉に訳されていますが、今まではインターネットと無縁だった様々な“モノ”がネットに繋がることにより、情報をやりとりするということです。身近な例ですと、外から操作できるエアコン、私も使用していますが測定するたびに自動でデータをスマホに送って分析してくれるヘルスメーター、運動量を測定するシューズ、GPSで紛失してもすぐ見つかる財布など、今まではネットと無縁だったものが続々とネットと繋がりだしています。スーパーで買い物中に中身を確認できる冷蔵庫、なんていうものもあるのです。

これは消費者にとっては単純に「世の中が便利になった」という話しですが、我々企業サイドから見ると、顧客へのアプローチを考える際にネットとリアルを融合させなくてはならない、という話になります。消費者自身は、自分が今「ネットを使っている」ということを意識していない場合が非常に多いからです。
この議論をすると、「ダイヤモンドは現物を見ないと分からない。まして写真で魅力は伝わらない。」という話が必ず出ます。しかし、触らなければ質感のわからない洋服、座ってみなければ心地良さのわからないソファ、目で見なくては鮮度の不安な食品など、今では普通にネットで購入されているのではないでしょうか。

これはもちろん消費者意識の変化も大きいと思います。しかし一方で、アパレル業界が上質で丁寧な情報発信をしてきたことの結果とも言えます。アパレルとジュエリーでは価格帯も異なるので、同じ形態での販売が即可能かどうかはわかりませんが、他業種と同じ上質なコンテンツの発信をしていくことで、お客様にダイヤモンドへの魅力をコンテンツ上で感じていただけることは間違いないでしょう。
逆説的に言うと、他業種で様々な情報発信をしている現代、魅力的なアプローチがない商品への興味を消費者が急速に失う可能性があるということです。

消費者への魅力的なアプローチは様々なものが考えられますが、そのひとつの答えが、Sarine-Profile(サリネ・プロファイル)です。Sarine-Profile(サリネ・プロファイル)はダイヤモンドの個々の詳細な情報を、店内であってもオンラインであってもシームレスにお客様に提供します。お客様は最先端でインタラクティブな体験を通して正確で詳細なダイヤモンドのすべての情報を得ることができます。

そのSarine-Profile(サリネ・プロファイル)を構成する機能の一つがSarine-Light(サリネ・ライト)、つまり輝きの評価です。

消費者がダイヤモンドを購入しようとするときに最初にぶち当たる壁が、4Cではないでしょうか。4Cは希少性の目安ですから、必ずしもダイヤモンドの美しさを正確に表現したものではなく、一方で輝きが価値であるダイヤモンドを選ぼうとするときに4Cだけでは販売側もダイヤモンドの輝きという価値を十分に説明ができません。これが、定価の存在しないダイヤモンドという商品特性と組み合わさり、今まで消費者に不信感を与えてきた一因ではないでしょうか。

Sarine-Ligh(t サリネ・ライト)は今まで主観でしか判断のできなかったダイヤモンドの輝きに、再現性のある一定の評価を客観的に与えるという意味で消費者信頼に大きな意義を持ちます。

現在主流となっているダイヤモンド(特にブライダルジュエリー)販売方法は、『ストーリー型販売』です。商品そのものではなく、イメージや雰囲気、付加されたストーリーで販売をするというものです。
確かに、商品の価値は実態のある“モノ”だけではなく、それに対するサービス(ストーリー)によって生み出されますが、それはその“モノ”(素材)がしっかりとした価値があるという大前提の上に成り立ちます。神話や幸運やモチーフの意味を説明しても、素材そのものが自信を持ってお勧めできるもの、そしてその根拠を説明できるものでなければ、それは価値のある商品とは言えません。本来、『本物』でなければストーリー自体が成り立たないのです。

そうであれば、我々はダイヤモンドのプロフェッショナルとして、自信を持ってお客様にご提案できる『本物』のダイヤモンドを持ち、そしてその価値をしっかりとお客様に説明することこそが、最高のお客様へのサービスと言えるのではないでしょうか。
自店には、自信を持ってお客様に説明できるダイヤモンドはありますか?そのダイヤモンドは、どこでどのように生産され、研磨されたかご存知ですか?そのダイヤモンドがどのくらい輝くのかご存知ですか?そして、それをお客様にしっかりと説明できるでしょうか。

我々は誇りあるプロフェッショナルとして、自信を持って提案できる『本物』のダイヤモンドをしっかりと取り扱う必要があると思います。そして、それが『本物』のダイヤモンドであれば、輝きをお客様にしっかりと説明することは、差別化されたサービスの部分に該当します。

『本物』の価値を持つダイヤモンド、そしてダイヤモンドの輝きについて明確で説得力のあるプレゼンテーションが可能な唯一のツールであるSarine-Ligh(t サリネ・ライト)を含んだSarine-Profile(サリネ・プロファイル)は、お客様にとって本当に魅力を感じていただける商品となるはずです。
次回は、Sarine-Profile(サリネ・プロファイル)のその他の機能と活用法についてご説明します。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。
http://sarine.com/products/sarine-profile/
■連載コラム No9

Online to Offlineの考え方から複合的に判断する購買客の獲得へ

オンラインから消費者を自店に誘導するという話を前回も書かせていただきましたが、これはマーケティングとしてはOtoO(Online to Offlineオートゥーオー)と言われている考え方です。2011年ごろからよく言われるようになっており、オンラインからオフライン、オフラインからオンラインに送信する事を意味しています。
私は普段ヨドバシカメラでよく電気製品を購入しますが、他の家電量販店と比べてWeb戦略と顧客囲い込み戦略が抜きん出ていると感じることが多々あります。ヨドバシカメラはもちろん実店舗も好条件で集客を見込める場所にあり、web戦略に力を入れる必要もなさそうですが、実際にはwebでの売り上げが1,000億円を超える勢いです。しっかりとユーザー視点でシステムが作られているので私もよく利用しますが、豊富な品揃えはもちろん、都内であれば基本は翌日、商品によっては当日配送可能と、Amazon.co.jp以上とも思えるサービスを展開しています。
また、実店舗を構えるからこその戦略として、web上で購入、店頭で受け取り可能なサービスも提供しており、店舗によっては24時間対応、つまり夜中であっても商品が受け取れる仕組みを作っています。店頭はショールームとして活用されており、店頭で実商品を十分吟味したお客様が帰宅してからゆっくりwebで買い物、というケースもかなり多いとのことです。店頭購入の場合は送料がかかるのに対して、web購入の場合送料が無料ですし、店頭の商品バーコードをスマホアプリで読み込むと(店舗にいるのに!)web上で購入可能になるなど、しっかりした戦略が組み立てられています。

ヨドバシカメラの事例は、いかにweb上で商品を販売するか、という単純な話ではありません。実店舗を持つ小売業がweb戦略によっていかにお客様に魅力を感じていただけるか、そしてそのポテンシャルがあるかどうかが問われているということです。

実際はユーザーはネットとリアルを明確に区別して行動しているわけではありません。これには急速に発展してきたスマホに代表されるデバイスの進歩が関係しています。常に自分に有益な情報を得られるユーザーは、その場その場でネットとリアルを自由に行き来して購買活動を行っています。まさに、ヨドバシカメラで実店舗とwebをケースバイケースで使い分ける現代のユーザーによって象徴される通りです。企業側やコンサル会社がネットユーザー、それ以外と単純化している客層はほとんど存在していないということになります。ユーザーは企業やブランド、店舗や販売員に価値を見出して買い物をしているのです。ユーザーはオンラインからオフラインにというような単純一方通行のアクションではなく、オンラインとオフラインを行ったり来たりしながら、複合的に判断して買い物をる時代になってきているのです。
今後は、顧客とどれだけ上質な接点を持てるかにポイントを置いて、テクノロジーを活用することが大切になってきています。つまり、オンラインであってもオフラインであっても、どれだけ『魅力的』で『上質』なコンテンツや情報を提供できるかということが顧客獲得のキーになっているのです。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。
http://sarine.com/products/sarine-profile/
■連載コラム No8

オンラインから、いかに店舗に誘導するかがキーポイント

アメリカはオンライン販売先進国としても知られています。実際、アメリカ市場では結婚する男性の9%がインターネットでダイヤモンドを購入しています。
中でも最も成功しているのがご存知のBlue Nile(ブルーナイル)で、アメリカのダイヤモンド市場でティファニーに続く第2位のシェアを占めています。ここにも「スマホ世代」に対応するための大きなヒントが存在します。Blue Nileが掲げるキーワードは「Education(教育)」と「Guidance(ガイダンス)」というジュエリーとは一見かけ離れたものです。実際にBlue NileのECサイトを訪れた経験のある方であれば、サイト内でダイヤモンドの説明(教育と案内)に割かれている分量が突出して多い事に気づかれたと思います。実はこれはBlue Nileの創業者の経験がきっかけになっています。

Blue Nile創業者のマーク・バードン氏は、もともとダイヤモンド業界とは無縁の経営コンサルタントでした。当時28歳のバードン氏はエンゲージメントリングを購入するため、ある有名宝石店を訪れました。購入候補として考えていた17,000ドルと12,000ドルの指輪の価格差の根拠を販売員に尋ねた彼は、信じられない返答を耳にしました。「どちらのダイヤモンドがお客様に語りかけてきますか?」これだけ高額の買い物をしようとしている顧客に対して、何の役にも立たない馬鹿にした返事だと感じたバードン氏は手ぶらで店を去り、そして自分でインターネットで調べることによって、この問題を解決しました。そして後に自分が感じたニーズを満たすためにBlue Nileを設立、ECサイト内で消費者に正しい宝石の知識と情報を与えることで大きな成功を納めました。

男性は女性と異なり、本質的にテクニカル的なことを気にするので、男性がリングを用意してプロポーズする文化のあるアメリカでは、この手法が効果的だったのかもしれません。しかし、男性であっても女性であっても品質の根拠をしっかりと納得したい、客観的な根拠が欲しいという事は共通しています。特に近年の「スマホ時代」において
は、特にその傾向が強いと感じます。実際、似たようなサイトがある場合、商品だけではなく消費者に有益な教育的情報が多く掲載されたサイトの方がユーザーの滞在時間が長く、リピート率も高いというデータがあります。

日本ではまだオンライン販売がそこまで一般的ではありませんし、裏を返せばアメリカでも9割以上の人が実店舗でダイヤモンドを購入している事になります。しかし間違いなく言える事は、そのほぼ全ての消費者がオンラインでリサーチをしてから来店しているという事実です。ですから今後数年間の「スマホ時代のダイヤモンドビジネス」でキーになる戦略は、いかにしてオンラインから実店舗に消費者を誘導できるかにかかっています。サイト上で消費者に有益な情報、知りたいと思う事を説明し、その上で自社の優位性を示すという事です。また、自社のダイヤモンドを消費者の「選択肢」のトップに入れてもらうよう、ネット上で自社のダイヤモンドの特徴と品質の根拠をしっかりと示す必要があります。

前回ご紹介したSarine Profile(サリネ・プロファイル)は、この分野に特化したシステムです。教育、品質の客観的な根拠、ダイヤモンドの外観、そして信頼性を消費者に提案することが可能です。それも、お客様の手に収まるデバイスの中で。今後「スマホ時代」の傾向がますます強まる中、オンラインから消費者を自店に誘導するこれ以上ない強力なツールとなるでしょう。
次回、皆様のビジネスに具体的にどう組み込めるのか詳しくご説明します。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。
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■連載コラム No7

もしかしたら経験の浅い販売員よりユーザーの方が詳しい

今までのコラムでは、テクノロジーのポテンシャルを中心に書いてきましたので、おそらく皆様の中にはテクノロジーが既存のビジネスを単に破壊すると考えておられる方も多いかと思います。実際に、長いスパンで考えれば、その可能性は大きくあるでしょう。しかし現実的には年初にも書かせていただいた通り、数年タームでのマーケット変化に現状のビジネスを対応させていく必要があると思います。

5月号のRAPAPORT誌を読まれた方もいらっしゃると思いますが、アメリカのジュエリー、特にブライダル市場は変化しています。各市場に特異性があるので、今の日本に完全に当てはまる訳ではありませんが、今後のマーケットを予測する指標として非常に重要です。特筆すべき点としては、(日本市場でも同じ現象が起こっていますが)消費者自身が完全な素人ではなくなっているという事です。以前はエンゲージメントリングを購入する消費者は「ダイヤモンドファーストユーザー」で、ダイヤモンドに対する知識を持たず、小売店がコンサルティング的なセールスをする事によって、お客様の意思決定をある程度左右できると考えられていました。その意味でかつて宝石店は、消費者の意思決定に大きな役割を果たしていましたが、もはや今はそうではありません。

消費者は、実際に店に足を運ぶ前に多くの時間をインターネットでのリサーチに費やしています。インターネットでブライダルジュエリーを探すと言うと「ゼクシーネットでしょ。」と言う方もいらっしゃいますが、実際のネットリサーチは想像以上に複雑化しています。もちろんブライダル情報サイトも重要な情報源の一つですが、現在のブライダル層はもっとフレキシブルです。FacebookやPinterest等のSNSを活用して情報を共有し合い、気になる商品はさらに掘り下げて、様々なサイトから情報収集をしています。彼らは常にスマホを携帯しており、いつでもオンラインで情報を入手できるのです。出勤中、昼休み、そして就寝前にベッドの中でと、時と場所を選ばず幅広くリサーチします。結果として、ショップに足を運ぶお客様は、私たちの想像以上に多くの知識と情報を得ており、お客様自身が自分をある程度スペシャリストだと感じるほどまでに達しているのです。もしかしたら、お客様は経験の浅い販売員よりダイヤモンドに詳しく、マンネリ販売を続けている中堅販売員よりも他店の商品や流行のブランドに詳しいかもしれません。まさに今世の中で起こっているのが、「スマホ時代」の世代による市場の変革と言えるでしょう。
お客様自身が確かな知識を得ている現在、近年のスタイルであるイメージ先行型のストーリー販売も厳しい時代に直面していると言えるでしょう。

この時代の変化に対応するためには同じツールを使い、お客様が何をどうやってリサーチしているのか販売店側も知る必要があります。もし、個人用・ビジネス用含めてまだガラケーしか持っていない方がいらっしゃいましたら、読み終えたらすぐ携帯ショップに行ってスマホを購入される事をお勧めします。何れにしても、近年のムーブメントは彼らの手のひらに収まる画面の中で起きているのです。

この続きは長くなるので、今回特別に7月15日号に続きを掲載しますのでご覧ください。次回はオンラインの成功事例から見る戦略に続きます。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。
http://sarine.com/products/sarine-profile/

■連載コラム No6

既存のビジネスがテクノロジーに取って代わる可能性

少し前になりますが、英オックスフォード大学准教授が発表した論文『雇用の未来』が世界で話題になりました。記憶に新しい方もいらっしゃると思います。内容は「テクノロジーによって今後10年間に消滅する仕事」を702業種徹底的に調査し、それぞれの業種ごとにパーセントで分類したものでした。例えば「Google Car」などの無人、自動運転技術によりドライバーという職種は消滅するでしょう。また単純作業の機械化ばかりに目が向きがちですが、ビッグデータの活用によって非ルーチン作業をルーチン化することが可能になります。

私たちの業界ではどうでしょう。前述の通り、すでにダイヤモンドのカット技術は高度に機械化が発達しています。流通は正確なデータ管理によって効率化され、以前のように買付けをする必要は急激に減少してきました。肝心の販売に至ってはオンラインの脅威をまさに感じておられると思います。
先日、イスラエルのSarine本社へ出向き、今後の方向性や戦略についての会合を行ってきました。既存の技術はより深く、精度を高めていくことで企業優位性をますます確立していきます。例えば、ダイヤモンド原石の内包物をスキャンする機械では、VVS1としても認識されないレベルの微細なクラウド状の特徴をスキャンすることが可能になりました。

一方で、Sarineは、エンドユーザーへの販売ツールへと舵を大きく切り始めています。Sarine Profile(サリネ・プロファイル)という新しいサービスを今後進めて行く計画ですが、これは研磨済ダイヤモンドのほぼすべての情報をクラウド上で管理することになります。『通常光での見た目・4C情報・輝きのグレード・3Dルーペ・H&C画像・プロポーションデータ・鑑定書PDF・各項目の解説』が一つのデータにまとめられ、世界中どこでも瞬時に閲覧可能になります。
まさに、「流通・販売」までがオートメーション化され、既存の仕事は取って代わられる可能性があると、目の当たりにして感じた瞬間でした。
テクノロジーは止まることを知らず、この瞬間にもより高い技術が誕生していることでしょう。さて、本当に私たちの仕事は機械に取って代わられてしまうのでしょうか。私の個人的な見解では『NO』です。しかし、既存のビジネスは近い将来終焉を迎えるでしょう。では生き残るビジネスとは何か、それは「テクノロジーを最大限に活用し、クリエイティブな人間の感性を用いたジュエリー販売」です。お客様の潜在ニーズを探り出し、スタイルに合わせた商品提案とコーディネートを行い、価値観に合わせた品質の説明、場合によってはワンランク上の商品提案を行い成約する。これは機械化されることはないでしょう。その上で、テクノロジーを取り入れアドバンテージとしてフル活用するショップが今後の勝ち組になると考えられます。

オックスフォード大学准教授の弁を借りれば、「人類にとってこれは歓迎すべきこと」です。テクノロジーが可能なことはすべて任せ、我々はより高次元でクリエイティブなことに集中できるようになります。これはお客様にとって、より良い商品と、質の高い接客・サービスを提供できるようになることを意味しています。先ほどのSarineProfileでは、お客様により詳細な情報と多くの選択肢を提供することになりますし、その技術を武器に販売店はワンランク上のサービスを実現できます。
次回はより具体的なビジネス導入方法についてご説明します。

Sarine Profileの詳細は以下URLをご参照下さい。
http://sarine.com/products/sarine-profile/
■連載コラム No5

当たり前のテクノロジーの活用で、商品価値を正しく、わかりやすく伝達

現代のテクノロジーを当たり前のように日常的に使用している「スマホ世代」の感覚は、百年以上も昔から変わらないビジネスを続けてきている私たちの業界にとってはかなりのギャップがあると感じます。しかし私たちの多くの人々も一度仕事を離れてプライベートになれば途端に「スマホ世代」です。LINEで家族や友人と連絡を取り、Facebookで近況を共有したり、A m a z o n で買い物をしたり、YouTubeで動画を見たりしているのではないでしょうか。

タイトルにもなっている「スマホ時代のダイヤモンドビジネス」ですが、私たちが日常的に体験しているテクノロジーを、どのように私たちのビジネスに活用することができるのかということを、このダイヤモンド業界でも真剣に考えなくてはいけないのではないかという思いでつけさせていただきました。

現在他業種では店頭でのタブレット導入が進んできており、商品説明、見積もりなどをすべてタブレット上で完結する業種も少なくありません。お客様はそのような環境に慣れており、また普段からパワーポイントなどを使用したプレゼンテーションに慣れています。ダイヤモンドはとても小さい商品ですので、その価値を、また違いを肉眼と言葉だけで理解していただくのには限界があります。

過去の記事でお伝えさせていただいた通り、現在ダイヤモンドのテクノロジーは大きな進化を遂げています。S a r i n e 社に関して言っても、DiaMension によるダイヤモンドの極めて正確なプロポーション測定、Sarine Light による輝きの評価、Sarine Loupeによるダイヤモンドの3D化と様々な革新的技術を作り出してきました。私たちはこの技術、そしてインフォメーションを営業現場で、そして店頭で活用することでアドバンテージを持てるのではないでしょうか。

Sarine社ではiPadを活用した統合ツールの開発を進めています。今後このツールによって上記すべてのテクノロジーを活用した個々のダイヤモンドのインフォメーションをタブレット上でプレゼンテーションすることが可能になります。また、ダイヤモンドそのものの説明、4Cからプロポーション、輝きの仕組みや評価、そのダイヤモンドの見た目までわかりやすく説明することができます。

どのような業種でもこのような接客は今後当たり前になっていくでしょう。どの店でもこのような購買体験を提供している中で、我々の業界だけが旧態然とした販売方法を続けています。
世の中では宝飾業界を不透明な業界と感じている人々が多くいますが、これも我々が商品の価値をしっかり店頭で説明してこなかったことが理由かもしれません。

今後このようなテクノロジーを積極的に活用することによって、スマホ世代がまたダイヤモンドをはじめとした宝飾品に関心を持ち、価値を見出すことになるのではないでしょうか。また、逆に言うと世の中がこのような方向性で動いている以上、消費者目線での販売方法を取り入れないことは大きなデメリットになっていくと考えられます。

次回はいま最も新しいダイヤモンドテクノロジーの情報について説明させていただきます。

Sarine社のテクノロジーは下記URLからご覧いただくことができます。
http://sarin.listedcompany.com/video.html
■連載コラム No4

全てのカット工程がオートメーション化 職人技術はどうなる?

前回までの記事で、ダイヤモンドの流通と販売に関わる技術革新について説明させていただきました。しかし、製造現場(ダイヤモンドのカット工場)では何年も前から技術によるパラダイムシフトが起こっていたことをご存知でしょうか。

『この素晴らしいダイヤモンドは、熟練した職人の手によって丁寧にカットされています。』ダイヤモンドの接客をされた方なら、皆さんこのセリフを何度か言ったことがあるでしょう。しかし、それが本当かどうか疑問に思われたことはありませんか?巷にはトリプルエクセレント・H&Cが溢れているのに、熟練した職人も巷に溢れているのでしょうか。

数年前までであれば、その説明は真実でした。ダイヤモンドを研磨するためには長年の経験とそれによって培われた勘が必要で、職人の熟練度によってダイヤモンドの研磨精度には大きな違いが存在したのです。
現在では、ほとんどの工程がオートメーション化されつつあります。大きな転換点となったのは、原石の内包物を完璧にスキャン可能な「Galaxy」というシステムの登場です。以前であれば原石の内包物を確認するためには『窓』と呼ばれる小さな研磨面を原石につくり、ルーペでそこから覗き込む必要がありました。そして内包物の位置を推定するには長年の経験が必要な職人技術だったのです。
「Galaxy」という革命的なマシンは『窓』を開ける必要もなく、VVSクラスの内包物を完璧に3Dプロットすることを可能にしました。どんなに熟練した職人よりも早く、そして圧倒的に正確です。そのデータを「Advisor」という原石プランニングソフトと組み合わせることで、研磨後の重量、プロポーションはもちろん、クラリティまでも極めて正確にシミュレーションすることができます。内包物の位置により、研磨後にどう反射して見えるかまでも事前に知ることができます。そのデータをレーザーカッター、自動研磨機に転送すればある程度の工程まで機械がダイヤモンドをカットします。あとはシミュレーションに沿って職人が研磨をすればトリプルエクセレントが出来上がります。現在ではこのシステムは世界中の研磨工場に普及しています。近い将来、全ての工程が機械化され、職人技術の入り込む余地はなくなるでしょう。独自性と芸術性により差別化されたカッター以外は、生き残ることができなくなるのではないでしょうか。

実はこの話は製造現場だけに影響を与えるものではありません。

「コンフィギュレーター」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。自動車やパソコンなど、仕様の組み合わせが多い製品で活用されており、PCやタブレット上で顧客の要求に応じて仕様や価格などを瞬時に表示するシステムのことです。自動車であれば、モデルや色、ホイールやオプションパーツまでもが画面上で自由に組み合わせでき、それを3Dで見ることができます。最適な商品をレコメンドしたり顧客からの受注生産に対応したりするなど、顧客との関係性強化に効果的なシステムです。

この「コンフィギュレーター」が上記の「Galaxy」や「Advisor」のようなシステムと連動するとしたらどうでしょう。お客様は画面上で原石を選び、研磨オプションを選択し、出来上がりまで3Dで確認してからオーダーすることが可能になるかもしれません。

現在ではコンフィギュレーターのようなシステムは異業種では当たり前になりつつあります。「スマホ世代」のお客様はスマホやタブレットで当たり前のようにそのようなシステムを使っています。店頭で活用するにしても、ネットでサービス提供するにしても、消費者目線で見ればこれ以上説得力のあるものはないでしょう。今後技術が進むにつれ、導入するかしないかは別としても、このような可能性を視野に入れてビジネスを考えられるかが明暗を分ける時代になるでしょう。それが当たり前の「スマホ世代」がメインターゲットの時代だからです。
次回は具体的なテクノロジーの活用方法について説明させていただきたいと思います。

Sarine社のテクノロジーは下記URLからご覧いただくことができます。
http://sarin.listedcompany.com/video.html
■連載コラム No3

ネット上で消費者がダイヤモンドを見比べる時代

今までのコラムの中で、技術革新に対応していく必要があることを説明してきました。テクノロジーの進化により、世の中のビジネスや流通は大きく変わってきています。これは極めてアナログなダイヤモンド業界も決して例外ではありません。かつて世の中に溢れていた製品やサービスの多くは今ではスマホ「アイコン化」してしまっています。ミュージックプレーヤーやデジカメはスマホに統合され、レンタルビデオは動画配信サービスに取って代わりました。今年の春には米アップル社がApple Watchを発売しますが、人々のデジタルデバイスへの依存は今後ますます高まっていきます。ダイヤモンド業界においても、いかにデジタルデバイスを事業に活用するかが今後の明暗を分けると言えるでしょう。何故なら、消費者はそれが当たり前の『スマホ時代』に生きているからです。

今後、テクノロジーによってダイヤモンド流通はどう変化するでしょうか。ダイヤモンドは実物を見なければ美しさがわからない、写真や画面では詳細がわからない。ダイヤモンドやジュエリーがネットで売れないのはこのような理由からだと思われていました。しかし、それが実現可能だとしたらどうでしょうか?
Sarine Loupe(サリネ・ルーペ)は、コンピュータ上で完全にダイヤモンドそのものを3D化することを可能にしました。ルーペという名前の通り、実物のダイヤモンドをまるでルーペで覗いているかのようにモニター上で自由に検査することができます。ガードルの形状、刻印、内包物の形状や位置までもがはっきりと判別できるのです。実際のルーペに不慣れな方にはモニターの方が見易いはずです。
このシステムの利用により、例えば東京にいながらアントワープをはじめ世界中の業者からダイヤモンドを買付することが可能になります。データはクラウド上に保存されているので、自社の在庫を同時に世界中の人々に見せることも可能です。

また、このシステムをチェーン店の在庫管理に利用するとどうなるでしょうか。店頭では本部や他店のダイヤモンドをお客様に詳細に見せて販売することが可能になり、在庫リスクと販売効率に圧倒的に貢献するでしょう。そして、ダイヤモンドのネット販売に活用することにより、消費者がネット上でダイヤモンドをひとつひとつ見比べることも可能になるのです。

『スマホ世代』の消費者にとってネットで商品の詳細を見られるということはもはや当たり前です。アパレルでも家具でも車でも、ネットで詳細な情報を入手し、興味を持った商品に対して購入アクションを行うというのが現代の一般的な購買行動プロセスです。ダイヤモンドは肉眼での印象が大事だという意見もありますし、それは正しいです。しかし、全ての消費者が肉眼でダイヤモンドを評価することは難しいでしょう。また、感覚的な説明で高価なダイヤモンドを販売している事自体が、消費者からの業界不信を招いている一因でもあります。一方で、テクノロジーによる正確な客観的評価や説明は『スマホ世代』の消費者にとって信頼を得るツールとなります。消費者目線での信頼性の提供は今後必ず求められるでしょう。

前回と今回はダイヤモンドの流通と販売に関わる技術と可能性について説明しましたが、次回は熟練した職人の聖域であった製造現場をテクノロジーがどう変えたのか、それによって今度何が予想されるのかについて書かせていただきます。
■連載コラム No2

ダイヤモンドの価値基準と流通を大きく変える可能性

先月、東京ビッグサイトで開催された「国際宝飾展2015」では、私が代理店を務めるイスラエルの“サリネ社”がブースを構え、今後のダイヤモンドビジネスに関わる最先端技術の一端を紹介させていただきました。その中で大きな関心を集めたのが、ダイヤモンドの輝きを計測する“Sarine-Light”(サリネ・ライト)と、ダイヤモンドそのものをコンピュータ上で3D再現する“Sarine-Loupe”(サリネ・ルーペ)でした。
この新しい二つのシスムは、ダイヤモンドの価値基準と流通を大きく変化させる可能性を持っています。

サリネ・ライトは、ダイヤモンドの美しさ(輝き)をテクノロジーによって評価するというものです。ダイヤモンドの評価基準としては4Cが一般的ですが、4Cは希少性の目安ですから、必ずしも美しさを表しているとは限りません。実際、EXより輝くVGも存在しますし、同じSI1であっても美しさには差があります。サリネ・ライトではダイヤモンドそのものを直接的に計測することで、実際の輝きを評価しています。

ダイヤモンドが好きな方の中には「ダイヤモンドは肉眼で見て美しいものに価値がある」と、テクノロジーでの輝きの評価に懐疑的な方もいるでしょう。理論としては正しいと思いますが、すべてのお客様が正しくダイヤモンドを肉眼で評価できるわけではありません。現実的に難しいのであれば、テクノロジーによって評価を均一化することはダイヤモンド業界の信頼性のために必要ではないでしょうか。

また、この評価によってダイヤモンドの流通と販売方法が変わってくる可能性が大いにあります。D・VS というだけでダイヤモンドが売れる時代は終わり、お客様が輝きを求めてダイヤモンドを選択される時代になるかもしれません。また、輝くダイヤモンドであれば4Cグレードの良し悪しに関わらずお客様に受け入れられ、販売の幅が広がることも想定されます。何れにしても、販売においてユーザー目線での「確かなダイヤモンドの美しさを示す」ということは、今後求められてきます。売り手の目線だけで販売を続けるショップは、情報に敏感なお客様から見放されてしまうかもしれません。

我々ダイヤモンド業界の人間が見て驚くような最先端技術であっても、実は一般消費者から見ると当たり前のことも少なくありません。ダイヤモンド業界という枠を外れた観点から見て、消費者からどう映るかということを考えることも、『スマホ時代』には必要であると考えます。

サリネ・ルーペは更に進んだ技術とクラウドを組み合わせ、ダイヤモンド流通の概念を根底から覆すものになります。次回はテクノロジーによってダイヤモンド流通がどう変化するのかについて書かせていただきます。
■連載コラム No1

『スマホ時代のダイヤモンドビジネス』

新年あけましておめでとうございます。本年が皆様にとって幸せと希望に満ち溢れたものになりますことを、心より祈念しております。

今回より月1回のペースで本紙にコラムを執筆させていただくことになりました。私は10年以上にわたり、イスラエルのダイヤモンド専門ハイテク機材メーカー、サリネ・テクノロジー社日本総代理店マネージャーを務めてまいりました。その間、日本のみならず海外を含めたダイヤモンド業界の変動を、テクノロジーを通して見てまいりました。ダイヤモンドに特化したハイテクノロジーという、ある種特殊な視点からダイヤモンド業界を見てきた、私なりの見解や感じたことなどを『スマホ時代のダイヤモンドビジネス』と位置づけ書かせていただき、多少なりとも皆様の今後の参考になればと願っております。

皆様もご存知の通り、世の中のテクノロジーはこの数年で劇的に変化してきました。今や普通に地球の裏側とノンストレスでテレビ電話ができる時代です。このテクノロジーの波は、古典的でテクノロジーの入り込む隙がないと言われているダイヤモンドビジネスにとっても例外ではありません。情報テクノロジーの発達は必ず我々の業界にも、近い将来大きな波となって押し寄せるでしょう。私は当コラムで、ダイヤモンド業界の未来について書かせていただこうと思っております。業界の展望について2年以内の期間しか考えない方は、この先を読む必要はないかもしれません。しかし、今後3年、5年、10年と継続的にダイヤモンドビジネスに携わろうと思われている方々には、この劇的に変化するビジネスの現場にどのように対応するかのヒントを得ていただける事と確信しております。

さて突然ですが、ダイヤモンド鑑定士はルーペだけでダイヤモンドの鑑定ができると思っておられる方も多いのではないでしょうか。現代の鑑定、特にカットグレードは高度に機械化されており、鑑定士といえどもテクノロジーなしに鑑定をすることは不可能です。逆に言えば、テクノロジーを導入すればカットグレードの鑑定はほぼ可能だということです。
そのハイテク機器の世界トップメーカーが、イスラエルに本社を置くダイヤモンド関連テクノロジーのリーディング企業、サリネ社です。サリネ社はGIA、IGIを始め世界中の主要鑑定機関で正式採用されております。現在ダイヤモンドのカットグレードはプロポーション測定器と呼ばれるマシンを使用しないと鑑定することができず、鑑定士の資格を取得していても、マシンなしにはグレーディングすることはできません。同様に、ダイヤモンドのカット工場も完全なオートメーション化が進んでおり、原石の状態で内包物の大きさ、形状、位置の完全な特定、それを反映させた完全なカットシミュレーション、そしてレーザーカットまで一連の技術を使用して連携させることが可能です。つまり、原石を入手した段階で、研磨後の4Cが極めて正確に予測することができるのです。現在のカット工場ではすでにテクノロジーが必要不可欠となっております。

実はイスラエルはテクノロジー大国として世界トップクラスの技術を誇っています。皆様が日常的に使用しているUSBメモリやファイル圧縮技術などもイスラエルで開発されたものです。テクノロジーの発達はユーザーにとって莫大な恩恵をもたらしますが、同時に既存のビジネスを根底から覆すパワーになることがあります。
数年前、イスラエルではある画期的なスマートフォン用アプリがリリースされ、これによって最も安泰な既得権益産業といわれていたタクシー業界が一瞬にして危機に陥りました。そのアプリとは、スマートフォンのGPS(位置情報)システムを利用し、お客様とドライバーをダイレクトに結びつけるというものです。お客様はアプリを立ち上げ、現在地にタクシーを呼ぶだけで、周囲にいるドライバーがその情報を受信、すぐにタクシーが正確な位置にお客様を迎えに行きます。このシンプルなアプリは、イスラエルのタクシー業界の構図を一変させました。長い間、全ての配車業務はタクシー会社が行っており、利用者はタクシーの必要が生じるとタクシー会社に配車を要請していました。ドライバーはお客様を獲得する為にタクシー会社に有料で登録する必要があり、これが一般的なビジネスモデルとなっていました。タクシー会社は、この世にタクシーとそれを必要とするお客様がいる限り、自分たちのビジネスは未来永劫安泰だと思っていたことでしょう。しかし、この一つのアプリの出現によって、一瞬にしてタクシー会社は最大の危機を迎えたのです。
現在、同様のサービスは世界150都市以上に拡大し、世界中のタクシー業界の脅威となっています。幾つかの国では導入を阻止しようとするタクシー業界の動きもあるようですが、テクノロジーの波をせき止めることは不可能です。であれば、このテクノロジーを自社のビジネスにどのように活用するかを考える事でしかタクシー会社の生き残る道はないでしょう。

昨年9月、香港で開催されたジュエリーフェアで、サリネ社は自社ブースにて最新テクノロジーの発表を行いました。クラウドベースでダイヤモンドの情報を共有し、世界中どこでも売買が可能になるテクノロジーを紹介するブースの横で、インド系の業者が声をあげて口頭でダイヤモンドルースの価格交渉をしている。この、最先端のテクノロジーを活用したビジネスと、極めて対照的な古典的ビジネスの混在を目の当たりにしました。今後この古典的なビジネスがテクノロジーによって大変革を迎える日は遠くないでしょう。

20年前にダイヤモンドがインターネットで売れる時代が来ると信じていた人はほとんどいなかったでしょう。しかし、ダイヤモンドのネット販売は現在では世界中で当たり前になっており、米国大手のB社は年商が500億円に迫ろうとしています。
今後テクノロジーの発達は、よりダイレクトにサプライヤーとユーザーを結びつけることを意味するでしょう。BtoCの既存のビジネス、つまり小売店においても未来永劫同じスタイルが続く保証はどこにもありません。永きに渡って最も古典的なビジネスとして、テクノロジーとは無縁と思われていたダイヤモンド業界にも、いま変革の大きな波が迫ろうとしているのです。
次回は具体的な事例を挙げ、その変貌について書かせていただきます。

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