| IJTなどとの明確な差別化は必須
マイナス要因の改善策が求められる
国際宝飾展IJTを主催するR X Japanが今後の為にチャレンジした一 般消費者向けの初の宝飾展「TOKYO JEWELRY FES」(TJFES)が、7月7日〜9日の3日間、東京ビッグサイト西棟2 階で開催された。 出展者は200社、来場者数は1万人を見込んだTJFESには、ざっとマップを見ながら数えると100社強程度に見えたが、主催者は約160社の出展があり、来場者数は10,508名(初日3,673 名、2日目3,858名、3日目2,977名)と発表した。事前登録に間に合わなかった人達の姿が見られるなど3日間とも賑わい、忙しいブースもあった。 初日は 業者が多いとの声が多く聞かれたが、2日目以降の土日も人で溢れた。特にハンドメイドは人気が高く常に人が集まっていた。また、低価格商品に集まる傾向が見られたものの、各種イベントも評判で、楽しい雰囲気が出ていた。さらにTV報道も入り話題性もつくられた。忙しさだけを見れば充実した時間だったかもしれないが、消費者に対する即売会としての1万人は絶対数として少ないはずだ。しかも昨年9000人強が来場したという資産運用EXPOと同時開催されたので、純粋にTJFESを楽しみに来場者した数はどのくらいであろうか。 IJTよりは安く、似たような他のフェスよりも出展料金が高いTJFESは、事前登録で無料( 当日券は 1500円⦅18歳以下は無料⦆) となるのに対し、同時期に開催される「ハンドメイドインジャパンフェス(HMJ)」(主催:クリーマ)は開催2日間で、3000人のクリエイターが出展し、5万人が来場する。入場料は1300円(小学生以下は無料)を払う仕組みで、売りたい人と買いたい人をマッチングさせる上、その時代に適して社会課題を訴えるなど、 ビジネスに必要な要素を必ず備え、一般消費者向けの演出が 施される(ジャンルは様々)。 また例年12月に開催される東京ミネラルショー(主催: 潟vラニー商会)には150社弱が出展し、4日間で4万人が来場する。入場料は1000 円(中学生以下は無料)。こちらはミネラルに絞られているので、より専門性の特長が見られ、来場者も知識の高い老若男女のファンが集まる。 宝飾業界の発展と拡大は、どの業種からも望まれているのは確かだが、多くの小売店から反対のあった今回のTJFESだけに、当初の目的とルールに沿って運営されていたのか出展社は確認するべきで、今一度考えてもらいたい点が多かったように見えた。 最終的な出展社に対する条件は弊社には届かなかったが、TJFES開催発表の直後に主催者から直接説明を受けた内容と比較すると、イメージとはかけ離れた会場設営に見え、期待外れとしか言いようがなかった。良い点も見られたが、一言でいえば、BtoBのIJTと同じ雰囲気で、即売会というか安売り会場という印象が強い。初日から赤札も出ていた。主催者も理想とは違うと話すが、チェックは不完全だ。二重価格に抵触するであろう値付けも見受けられた。これは開催するにあたり一番気をつけるべき点だったはずだが、“宝飾の魅力が伝わるフェス”の根本的な主催者の考えは、どこで表現したかったのか。ただし、出展社の多くも、そのような点は気にしていないようで、自社が売れれば良いという意識の方が強いようだ。売上がなければ来年は出なければいいという安易な考えにちがいない。何 か気になる点があったとしても、これまでのIJTでの対応からRX Japanに期待する人も少なく、主催者と出展社の間で議論も生まれず、次回急激に良くなることも考え難い。今回のままでは、産業の発展においてはマイナス要因となりそうだ。出展者はいったい何に賛同して出展を決めたのだろうか。 このようになることは予想もできた。 そのためIJTに出展する多くが出展していない。モラルのない業界だけに、目的意識も低い。こうなるのを恐れたので主催者には出展者委員会ないし、出展者が自助努力できる仕組みをつくるよう訴えたが、叶わなかった。 恰も小売店が中心となるTJFESに期待もあったが、実際出展していた多くはメーカーがほとんどで、小売感覚のない人たちばかりで厳しい。日頃のIJTや催事と比べれば、若者の熱気があったものの、それ以上はない。IJTと比べて多い人だかりに、満足する出展者もいたようだが、前出のHMJやミネラルショーなどとの活気や熱気とは比べ物にならない。出展者の多くがいかに普段から他の状況を見て回っていなかがわかる。また、勉強不足なのも明らかだ。 そして、必ず今回のTJFESに来場した人が、来年1月のIJTにやってくる。すでにIJTも一般ユーザーの受け入れを認めるべきとの声が多くのIJT出展者から聞かれるほど、秩序のない見本市・フェスになっている。だが主催者は 「TJFESの来場者をIJTには誘致しない。そんなことをしたらTJFESを開催した意味がない」と回答した。 今回は、IJTにいくという人がTJFES にも来ていたと聞いた。その人たちの反応は「IJTよりも割高」との意見が共通して聞かれたとのことだ。出展者も改めて考えた方が良い。 初開催だっただけに、理想を追い求めモラルのある運営を主催者には徹底してもらいたかった。このようなことが 今後も続くのならば主催者と宝飾業界との溝は深まるばかりで、業界の明日は厳しくなるばかりだ。 出展者のほとんどは赤字になった模様だ。初めから宣伝や調査を目的に出展したところ以外は厳しい結果になった。ミネラルやハンドメイド系からの来場者が多く、ジュエリーファンも確かに多かったように思う。高額品を吟味する姿も見られたが、1万円〜3万円の低 単価のものがよく売れる程度で、売れても30万円止まりという感じとの意見が多かった。 そもそも今回のTJFESはなんのために開催されたのか。小売店も出展でき、ジュエリーの魅力を伝える場所ではなかったのか。 日本宝石協会によって出品された推定2億円のカシミールサファイアやジュエリーピコによるアーガイル産のレッドダイヤモンドなど普段見られない宝石には連日長蛇の列ができ、宝石の魅力を伝えることができ、興味を持つ人が多いことが判明したのは評価されるが、 これも開催2週間前に決まった企画で、 相当出展社募集に苦労し、企画に手がまわらなかったことが推測される。 主催者も設営においては至らない点 が多かったことは認めているが、本来の目的にそぐわない状態であれば、思いを共有できる出展者だけにすべきであったと思う。言うのは簡単という人もいるかもしれないが、安売りしているイメージを付けてどうするのか。一番大 切なことができないのなら、想いだけでも正確に伝えなければ次は大抵ない。1回目の開催は慎重になるべきだったと言わざるを得ないし、戦略的な計画が必要だった。 それでも次回も出展する人は多いかもしれない。それは小売店が仕入れないのなら直販するしかなく、消費者に宣伝し、ネットショップへ誘導し、年間を通して利益に繋げるしかないという課題を多くの業者が抱えているからだ。 だが、今一度考えてもらいたい。ミネラル系の人を集めジュエリーを販売する会を主催しているのはRX Japanだけではない。さらに様々な場所で、色んな季節に、思いを込めたジュエリーを販売する会を主催する人や企業は増えている。そしてどこも同じように高額 品を売るチャンスを模索しているのだ。 高額品のジュエリーを売りたいという人が集まる場所を模索することや、思いを同じくする人を集めた新しい場所をつくることも今後の選択肢の一つに違いないのだ。一から自分たちが理想とする場所をつくることだって可能なこと。最初は来場者が少数でも本当の意味でのジュエリーファンを集め、広めていくことが一番大切なことではないだろうか。人に頼り人のせいにしているばかりではジュエリーの魅力は一向に伝わらない。目的意識やビジョンが同じグループを集めるべきだ。 業界の課題を解決するためにも開催されたTJFESを今後も活かしていくのなら再度目的を明確にし、主催者とともに成長していけるように、自分だけではなくTJFES全体を出展者も考えていく必要があるだろう。これはTJFESに限ったことではなく、IJTやJJFでも同じことだ。現在は変革期にあるのだから、従来のままではダメなことはわかっている。今回のRX Japanがチャレンジしたように、出展する側もチャレンジしていかなければならないだろう。 https://www.japanjewelleryfair.com/ |
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